編集部
2022.09.22

ブロックチェーンとは仮想通貨だけじゃない!身近に役立つブロックチェーンをわかりやすく解説

ブロックチェーンとは仮想通貨だけじゃない!身近に役立つブロックチェーンをわかりやすく解説

【麗澤大学経済学部経済学科 中島真志 教授 監修】最近「ブロックチェーン」という言葉をよく聞くけれど、実際はなんなのかわからない人は多いと思います。 ビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨で使われているイメージが強いと思いますが、実はそれだけではありません。 今回は、ブロックチェーンとはなんなのか、ブロックチェーンができることや実際に私たちの生活にどう活用されているのか、ブロックチェーンに関わる仕事につくにはどうしたらいいのかなど、麗澤大学経済学部の中島先生に、徹底的に解説していただきます。

目次

    ブロックチェーンは、「インターネット以来の最大の発明だ」とも言われている新たな技術で、将来は私たちの生活に大きな影響を与えることになるものと予想されています。
    今回は、そんな「ブロックチェーン」について、麗澤大学経済学部の中島先生に徹底的に解説していただきます。

    仮想通貨に興味がある人も、今までよく分からないままにしていた人も、ブロックチェーンの仕組みをきちんと理解して、これからの将来にどう役立つのかを知り、使いこなせる人材を目指しましょう!

    【麗澤大学 中島真志 教授のプロフィール】

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    1981年から20年以上にわたり日本銀行(国際局、金融機構局など)に勤務。その後、金融情報システムセンター(FISC)、国際決済銀行(BIS)などを経て、2006年4月より現職である麗澤大学経済学部教授を務める。専門分野は「決済システム」であり、この分野ではわが国の第一人者とされる。主な著書に、『決済システムのすべて』『証券決済システムのすべて』『外為決済とCLS銀行』などがある。また、日本の大学で一番多く利用されている金融論のテキストである『金融読本』の改訂も手掛ける。さらに、ビットコインやブロックチェーンを扱った『アフター・ビットコイン』は、5万部を超えるベストセラーとなっている。

    職名:教授
    学部/学科:経済学部/経済学科
    専門分野:金融システム、決済システム
    現在の研究テーマ:資金決済システム、証券決済システム、仮想通貨、ブロックチェーン、デジタル通貨
    主な著書:
    ・『アフター・ビットコイン2:仮想通貨 vs. 中央銀行』 単著 新潮社 (2020.06.30)
    ・『アフター・ビットコイン』 単著 新潮社 (2017.10.30)
    ・『外為決済とCLS銀行』 単著 東洋経済新報社 (2016.02)
    ・『入門 企業金融論』 単著 東洋経済新報社 (2015.02)
    ・『金融読本(第31版)』 共著 東洋経済新報社 (2020.03.25)
    ・『決済システムのすべて(第3版)』 共著 東洋経済新報社 (2013.03)
    ・"Payment System Technologies and Functions" 単著 IGI Global (2011.07)
    ・『SWIFTのすべて』 単著 東洋経済新報社 (2009.07)
    ・『証券決済システムのすべて(第2版)』 共著 東洋経済新報社 (2008.05)

    麗澤大学公式サイト:中島 真志 教授

    ブロックチェーンとは

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    ブロックチェーンは、ビットコインを支える「中核技術」として誕生したもので、ブロックと呼ばれる単位で取引したデータ(トランザクション)を管理し、それらをチェーンのように繋げて保管することからブロックチェーンと呼ばれています。

    また、取引の履歴が特定の1つのサーバーに記録されるのではなく、ネットワーク上に分散された複数のコンピュータで記録されるため「分散型台帳技術(DLT)」とも呼ばれています。ネットワークを利用するすべてのユーザー同士で同じデータを分散しながら共有・管理するため、1箇所にアクセスが集中することがなく、サーバーに負担をかけにくいことから、ハッキングや不正アクセスのリスクも軽減されます。

    取引履歴データの管理の他に、各ブロックの取引データの圧縮値(ハッシュ値)も格納されているため、データを改ざんするためにはすべてのブロックのハッシュ値を変えないといけないという特徴もあり、データの改ざんが大変難しい仕組みになっているのも大きな特徴です。

    ブロックチェーンは、皆さんも最近耳にしたことがある「ビットコイン」や「イーサリアム」などの暗号資産と呼ばれる仮想通貨の基盤となる技術であり、その高いセキュリティから金融・経済の業界から支持され活用されている技術です。

    ブロックチェーンと分散型台帳技術(DLT)は何が違うの?

    ブロックチェーンと分散型台帳技術(DLT)とはほぼ同じもので、「同じ技術を別の側面から呼んだもの」と言えます。
    厳密には、分散型台帳技術(DLT)という技術の中にブロックチェーンの技術があるということになります。
    金融の世界では、特にセキュリティの面からもこれまでのように1つのサーバーに集中してデータを管理するのではなく、分散して管理することが重要視されています。
    そのため、最近ではブロックチェーンよりも分散型台帳技術(DLT)と呼ばれることが増えています。
    また、取引の参加者が同じ帳簿を持つことから「共通帳簿」と呼ばれることもあります。

    オープンブロックチェーンとクローズドブロックチェーン

    ブロックチェーンの種類はいくつかありますが、中でも重要なのが「オープンブロックチェーン」と「クローズドブロックチェーン」の区別です。

    オープンブロックチェーンが誰でも自由に匿名で取引できるブロックチェーンであるのに対し、クローズドブロックチェーンは取引に参加するために身元を明らかにする必要があり、許可された信頼度の高い特定の参加者のみが参加できる仕組みになっています。

    オープンブロックチェーンでは、自由度が高く知らない者同士が安全に取引できるメリットがありますが、取引の承認には複雑な計算が必要となるため時間がかかってしまう、というデメリットがあります。

    皆さんがよく聞くビットコインでは、このオープンブロックチェーンの仕組みがとられていますが、今後、金融の世界ではセキュリティを強化するためにもクローズドブロックチェーンの方が利用されるようになると言われています。

    ブロックチェーンの特性

    ブロックチェーンがこれまでの技術とどんな違いがあって、革新的な技術と言われているかは、大きく3つの特徴が挙げられます。

    1. 改ざん耐性(データの改ざんが難しいこと)
    2. 高可用性(システム障害が発生しにくいこと)
    3. 低コスト(コストの削減になること)

    それでは具体的にどのような特徴なのかをそれぞれ説明していきます。

    改ざん耐性

    ブロックチェーンでは、取引の記録を「ブロック」として記録して行きますが、新しいブロックを作る時に、ひとつ前のブロックのデータを圧縮した「ハッシュ値」と呼ばれる情報を入れていく仕組みになっています。

    このため、過去に作られたある1つのブロックを改ざんしようとした場合には、そのブロックから後に続くすべてのブロック内のハッシュ値を変更する必要があり、そうした計算をするのは事実上不可能であることから、ブロックチェーンは優れた改ざん耐性を持っていると言われています。

    可用性が高い

    ブロックチェーンは分散型台帳技術(DLT)という別名がある通り、複数のコンピュータが同じデータを共有・管理しているため、停電や災害、ハッキングなどにより、特定のサーバーがダウンしたとしても他のコンピュータが正常に動く限りはシステムを機能し続けることができます。

    そのため可用性が高い、つまり、システム障害やシステムダウンが発生しにくく、サービスを継続しやすいということになります。

    低コスト

    1つの大きなサーバーで集中して管理するためには、そこがダウンすると致命的な被害を受けるので、セキュリティ対策やバックアップに対して厳重に、莫大な費用をかけて管理しなければなりません。

    ブロックチェーンの技術は、複数のコンピュータがそれぞれ管理、処理を行うため大幅なコスト削減が望めます。
    これは銀行などの金融機関にとって最大のメリットとも言われています。

    ブロックチェーンでできること

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    ブロックチェーンの技術は、取引履歴のデータ改ざんが非常に難しいことから、「取引履歴を、改ざんされない正確な形で長期間保存していく業務」に相性がいいと言われています。

    銀行などの金融機関だけでなく、様々な業界で必要とされる証明・契約などの作業で利用することができます。
    具体的な例をこれから紹介していきます。

    暗号資産(仮想通貨)の発行

    ブロックチェーンは前に説明した通り、データの改ざんや偽装が困難であることから暗号資産(仮想通貨)の発行に使用しやすいです。

    また、地域限定のデジタル通貨や企業の独自通貨を作ることもできるようになります。
    また、ブロックチェーンを活用した通貨で行う決済システムも実際に開発されています。

    食品の流通経路の管理(トレーサビリティ)

    製品の製造元や生産者などを管理するトラッキング管理に使用することができ、豚肉や有機野菜などの流通経路などを、ブロックチェーンを使って行っています。

    もし、どこかの店で販売した商品に問題があった場合には、その商品がどこでいつパッケージングされたものか、どこの農場で生産されたものか、などを立ちどころに把握して、対策を講じることができます。
    情報の改ざんが難しいため、消費者が安心して食品や製品を買うことが可能になります。

    アメリカ最大手のウォルマートをはじめ、ドール、ネスレなどの食品大手でも、バナナ、コーヒーなどをフード・ブロックチェーンに追加し、トレーサビリティの強化を図っています。大手コーヒーチェーンの「スターバックス」でも、コーヒー豆の追跡(どこの農場でできた豆か、どこで焙煎したのかなど)に利用を始めています。

    権利、資産の管理

    音楽や美術作品などの権利や資産の管理を行うことができます。
    先に説明した製品のトラッキング管理と似ていますが、ブロックチェーンを活用すれば、資産としての製品そのものだけでなく、著作権・デジタル著作権などの権利の管理を正確に行うことができます。

    美術品については、「プロブナンス」と呼ばれる作品の歴代所有者の記録が重要で、例えば、「英国王室が持っていた」とか、「有名人や映画俳優などが持っていた」という事実が、美術品の価値を大きく左右します。

    サプライチェーン・マネジメント

    サプライチェーンとは「原材料・部品調達 → 生産 → 物流・流通 → 販売」という一連のプロセスの連鎖のことです。サプライチェーンのマネジメントとは、モノやお金の流れ、情報を結びつけて情報を共有、連携し、成果を高めることをいいます。

    そのサプライチェーンにブロックチェーン技術を製造業に活用すると、部品の供給元の情報を記録し、部品の出所をトレース(追跡)することができ、「サプライチェーン・マネージメント」に使うことができるようになります。

    製造から販売までのサプライチェーンは、2次下請け→1次下請け→完成品メーカー→卸売り→小売りといった階層的な構造となっています。
    こうした中で、小売り段階で、ある「ネジ」が原因となって不良品が発生した場合には、それがどの下請けのどの工場で作ったネジかを直ちに調べることができ、問題の早期解決に役立てることができます。

    ブロックチェーンは実際にビジネスにどう活用されているの?

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    改ざん耐性、高可用性、低コストというブロックチェーンの特性から、様々な産業・業界で注目が集まっています。今後もますます活用されていくでしょう。
    ここからは実際にビジネスでの具体的な活用例を紹介します。

    「ビットコイン」や「イーサリアム」など暗号資産(仮想通貨)

    元々、ブロックチェーンはビットコインを支える技術として開発されたものであり、現在はビットコインの他にもイーサリアムなどのさまざまな暗号資産(仮想通貨)の取引に利用されています。

    暗号資産は、仲介する組織が存在しないので直接送金が可能になり手数料が無料になったり、オンラインのショッピングモールではクレジットカードだけでなくビットコインで買い物ができる店舗も出てきています。

    アメリカ大手スーパーマーケット「ウォルマート」配送システム

    アメリカ最大手スーパーマーケットの「ウォルマート」ではIBMと組んで「フード・トラスト・ネットワーク」というブロックチェーンを使った食品の流通経路管理を始めました。

    農場(中国)で収穫し、工場でパッケージ(米国)され、店舗(米国店舗)の棚に並ぶまでをブロックチェーンで記録することで、もしどこかの店舗で問題が起きた時にその商品がどこでいつパッケージングされたものか、どこの農場で生産されたものか、などを立ちどころに把握して、対策を講じることもでき、不必要な食品の破棄も減り、消費者も安心して購入することができます。

    2021年にはウォルマートでは暗号資産の専門家の雇用を募集していて、この取り組みはますます発展していきそうです。

    「エバーレッジャー社」ダイヤモンド取引履歴の管理

    エバーレッジャー社 (ロンドン)では、ダイヤモンドの犯罪をなくすためにもブロックチェーンを使って、ダイヤモンドの取引履歴の管理を行っています。
    宝石に特殊な技術で番号を彫り込み、それをブロックチェーン上で管理します。

    管理する情報は、原石(どの鉱山でとれたのか) → 研磨(どの工場で研磨したのか) → 販売(どこの宝石店で販売したのか)→ 所有履歴(有名人が持っていた?)などを管理しています。
    2015年から、160万個のダイヤモンドの情報をブロックチェーンに登録済みです。
    ダイヤモンド最大手のデビアス社も、2018年1月から実証実験を開始し、同じことを始めています。

    ワイン・ブロックチェーン

    ブロックチェーンは、ワインの偽造品の防止にも使われています。

    1本数十万円から数百万円もする高級ワインの中には、ラベルだけを偽造した偽物のワインが出回っているという詐欺問題が深刻です。

    これを防ぐために、ブドウ農家、醸造所、倉庫などの業者などが参加したブロックチェーンを作り、1本のワインごとに、ブドウ畑(どこの畑でできた)、ワイナリー(どこのワイナリーで作った)、醸造方法(どういう方法で醸造した)などの情報を管理しています。

    またこれらの情報は、ワインについたQRコードを読み込むことで消費者も安心して情報を入手できるようになっています。

    オンライン選挙

    わざわざ投票所に行くよりも、自宅でスマホから選挙の投票ができたら便利だなと思いませんか?

    エストニアではすでに2005年からオンラインでの投票が行われており、アメリカのいくつかの州でも実験的に行われています。投票率の向上や事務手続きのミスの削減、選挙投票や開票作業などの効率化が期待されています。

    日本で実現するには、セキュリティ面などでまだ課題が残りますが、マイナンバーカードの取得率を上げて本人確認をより正確に行うことができれば、不正を防ぐことができ、実現しやすくなるでしょう。

    実際に2021年に「インターネット投票の導入の推進に関する法律案」が衆議院に提出されており、法律が整備され、オンライン選挙が実現する日もそう遠くはないかもしれません。

    ブロックチェーンエンジニアの需要は高い!

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    実際にブロックチェーンを活用できる職業として、ブロックチェーン・エンジニアがあげられます。
    ブロックチェーンの技術を用いてサービスやアプリケーションを開発していくエンジニアのことです。
    ブロックチェーン自体が、2008年に「サトシ・ナカモト」という人が発表した論文の中に初めて登場した新しい技術であり、現在も精通した技術者はそう多くはいません。

    これから発展が見込まれるブロックチェーン市場においてブロックチェーン専門のエンジニアの需要は高まっています。
    また、ブロックチェーンエンジニアの平均年収は950万円ともいわれており、日本の30歳の平均年収である約460万円と比べても高い報酬を得ることができ、やりがいのある職業です。

    ブロックチェーン技術を麗澤大学で学ぶ

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    麗澤大学では、ブロックチェーン技術や、その利用について「金融論」という授業で学ぶことができます。
    また、経済学部で「金融のゼミ」を選べば、こうした金融の最先端のテーマについて学び、論文を書くことができます。

    実際に、ブロックチェーン、ビットコイン、中銀デジタル通貨(CBDC)、デジタル地域通貨、NFTなどについて、これまで先輩たちが卒業論文を書いてきました。
    また、こうした先輩たちは卒業後、それぞれ金融機関やIT企業などで活躍しています。

    中島先生の「金融論ゼミナール」を詳しく知りたい人はこちら!
    よく学びよく遊ぶ。そして一生付き合える仲間ができるゼミナール

    ブロックチェーンは世界を変える素晴らしい技術

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    ブロックチェーンは「インターネット以来の最大の発明」であると言われている通り、世界を変える可能性を秘めた素晴らしい技術です。

    また、研究段階だからこそ将来のチャンスが見込まれる分野です。
    その反面、その仕組みの理解に誤解や混乱があるのも事実としてあります。
    ブロックチェーンや金融論について正しい知識を得られる環境で学び、人との繋がりを大事にできるマネジメント力を身につけ、新しい分野で活躍できる人材を目指しましょう!

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