前編ではデータサイエンスの概要や、学修例などをお伺いしてきました。 後編では、これからのIT社会に求められる人材や、今後、社会において外国語を学ぶ重要性についてお話いただきましょう。
求められるのは、実務をこなしながら、組織と海外の橋渡しができる人材
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コロナ禍によって社会は大きく変わりました。ニューノーマルと言われる今、ネットワークが確立し、海外と往き来しなくても、パソコンの画面を立ち上げれば世界中とつながることができるようになりました――むしろ「つながらざるを得なくなった」とも言えます。つまり、外国語を使うコミュニケーションが日常となり、仕事をする人は「私は話せません」では通用しなくなったのです。たとえば、海外からあることを打診されたら、その意図を即座に理解し、責任をもって回答をしなければならない――そのような場面が、今後は頻繁に出てくるわけです。
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使わないに越したことはないかもしれませんが、もし担当者の語学力が充分でなければ、どうしても自動翻訳を介さなければならない。しかし、それだけでは不十分なので、せめて自動翻訳ツールを下訳とし、それが正しいかを確認し、さらに精度を高めることのできる人材が必ず必要になってきます。多くの会社は専門の語学力をもつスタッフをもてないので、具体的な実務をこなしながら、自社と海外の橋渡しとして活躍できる充分な語学力を備えた人材を、どの企業も求めていくことになるのではないでしょうか。外国語学部で専門的な語学教育を受けた人材の活躍する場は、どんどん広がると思います。
言葉で手を結び、交渉を成立させること
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これからの外国語人材に求められるのは、自動翻訳機にプラスアルファできる語学力です。それは何かと言えば、ひとつは「磨かれた語感」です。書き言葉もさることながら、会話においては、言葉の背景にある文脈や行間を読み取ることが、とても重要です。しかし、そのように言葉のニュアンスを推し量ることは容易ではありません。外国語による会話となれば、さらに難易度が高く、自動翻訳機もまだ充分な代替とはなりません。外国語によるコミュニケーションで、相手の真意を汲み取り、自分の意図を伝えるためには、その言語を使う経験を積み、語感を磨く必要があります。
外国語学部の学生が、語学の実践的なトレーニングに多くの時間を費やすのはそのためです。留学をし、その国の人たちの中に混ざって、その場の空気や文化を体感しながらコミュニケーションをとることもまた、トレーニングの一環です。豊富な語学経験を通して磨かれた語感は、自動翻訳にプラスアルファできる専門スキルとして、社会に出ても大いに生かせるでしょう。
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そして、語学のプロフェッショナルとして何よりも大切なのが「言葉で手を結ぶ」ことができることです。これは、私たち日本人が何より苦手とするものかもしれない。私たち日本人は、日本語を公用語として利用し、日本に暮らしている限りは、共通の生活習慣によって暗黙のうちに理解し合うことができ、言葉に頼らなくてもコミュニケーションが成立します。そのため、言葉による交渉力が鍛えられていないのです。では「言葉で手を結ぶ」ということは、どういうことでしょうか。たとえば、お互いに英語を母語としない者同士が、英語で交渉しなければならない状況に置かれたと考えてみてください。
英語が下手だろうと、人と話すのが苦手だろうと、とにかく英語を使って話さないことには始まりません。どういう表現を使えば伝わるか?どの表現がより適切か?必死に考え、持てる英語力を総動員して意思疎通を図るうちに、ふいに、相手と通じ合い「伝わった!」と思える瞬間が訪れる。そのような、言葉で手を結び、ネゴシエーションを成立させた体験が、皆さんの中に経験として蓄積されていきます。これがとても大切です。
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また逆に、英語のネイティブの相手と、話し合いをする状況も想像してみましょう。そのような状況で、皆さんが自分の言いたいこと、考えていることを説明し、分かってもらうには、ネイティブと全く同じように話すということは必ずしも重要ではありません。むしろ、言語や文化の違いなどあらゆる壁を取払って、自分から手を伸ばし、相手と手をつなぐことができること。それが外国語をツールとして使いこなすことの第一歩であり、言葉で手を結ぶ経験の蓄積が大いにものを言うのです。
教材や授業で学んだ構文を覚えるだけでは不充分です。そもそも何のためにあなたは人とコミュニケーションをとるのか?そこでのコミュニケーションとはどのように行うのが効果的なのか?自分の力を総動員して「言葉で手を結ぶ」体験を積み重ねることで、自分が信頼できる確固たる柱ができていくはずです。語学は積み重ねである、ということは、このようなコミュニケーションの本質を理解することに直結しているからなのだ、ということがわかります。
社会に対するクエスチョンマークをたくさん持って卒業してほしい
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麗澤大学の外国語学部の学び方は、どの専攻も共通していて、私のイメージでは"竜巻"みたいなんですよ(笑)。どういうことかというと「発見する・調査分析する・発表する・ディスカッションする・結論を導き出す」といった一連のサイクルを、4年間を通して途切れることなく、ぐるぐると繰り返していくんです。そして繰り返しながら、最初は小さいその渦巻きがどんどん大きくなっていく。入学したばかりの頃は拙い発表をしていた学生が、卒業する頃には見違えるように立派な発表をするようになり、ディスカッションの内容も深く、濃いものになっていく――。
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この竜巻式サイクルを通して、学生は、社会を生き抜いていく上で必要なバランス感覚、モノを見る目を少しずつ身につけていきます。そして問題点を見抜く目を持った学生は、世の中に対するクエスチョンマーク(疑問)をたくさん持って、卒業することになるのです。そこにこそ、大学で学ぶ意味があるのではないでしょうか。本学部で学んだ学生には「今の日本、世界ってこれでいいの?もっと良くすることができるのでは?」そんな思いを胸に、理想の未来を実現していってほしいと思います。
今こそ、外国語学部で学ぶことに大きな意味がある
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高校生の皆さんにとっては、オンライン授業もまだ身近ではないかもしれませんし、英語やIT・AIのスキルが当たり前になると言われても、まだ、ピンとこない人もいるでしょう。しかし現に、コロナ禍によって、わずか数ヵ月の間に大学の学びが様変わりしたように、社会はここからさらに、大きく変わります。決して、今までと同じ社会には戻りません。これからの社会は、知識だけではない本当の語学スキル、そしてIT・AIスキルを身につけた人に、活躍できる場が大きく開かれることは明らかです。今、語学を専門に学ぶということに、大きな意味があるのです。
外国語学部を目指す高校生の皆さん、未来に自信と希望を持ち、そして大いに学んで、羽ばたいていってください。
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日本にネット社会が広がり、IT化、AI化が進んでいく中、語学スキルプラスアルファでプログラムスキルを持っている人の重要性が高まってきています。 EC販売などで大量のデータを扱う企業が増えていますが、集めたデータを正しく理解するのは、語学だけでも駄目ですし、プログラム知識だけでも駄目です。 千葉先生もおっしゃられていたように、この両方を兼ね備えていることこそが今後の社会で必要とされるスキルだといえるでしょう。この記事を読んだ方におすすめの記事はこちらです。