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2021.10.06|最終更新日:2022.06.09|

【前編】語学スキルにプラスアルファ!「IT・AIスキル」を身につけるメリット

【前編】語学スキルにプラスアルファ!「IT・AIスキル」を身につけるメリット

企業がIT化やAI化をしていく上で外せないデータサイエンス。「ネット上で集めた大量のデータから必要な情報を抜き出して扱う技術」のことですが、まだまだ需要に対して技術者が不足しています。 そこで2020年より麗澤大学では、全学部でプログラムと相性の良い英語を同時に学ぶことでより効率的に学修できるようデータサイエンス科目群を設置しました。 前編では外国語学部長の千葉先生にデータサイエンスの概要や、学修例などをお伺いします。

千葉 庄寿
外国語学部 学部長
岩手県平泉町出身。東北大学文学部日本語学科言語学専攻卒業。2020年より現職および麗澤大学 大学ITソリューションセンター長。専門分野は言語学、フィンランド語学、自然言語処理、コーパス言語学。「語学オタク」で、これまでに挑戦した言語はフィンランド語のほかに、ドイツ語、中国語、ロシア語、グルジア語、エストニア語、韓国語、サンスクリット語、古典ギリシャ語、ラテン語、スペイン語、イタリア語、フランス語など数知れず。「前世はパンダだったかもしれない」と思うほどパンダが好き。
目次

    社会で大活躍の「自然言語処理」技術は、言語と密接な関わりがあります

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    • ITやAIの発達によって、膨大かつ多種多様なデータを瞬時に処理できる時代が到来しました。データを処理・分析し、活用することをデータサイエンスと言い、麗澤大学では今年度より外国語学部を含め、全学部・全専攻でデータサイエンス科目群を履修できるようになりました。と言われても「私には関係ない」と思うかもしれませんね。でも実は、IT・AIやデータサイエンスは、外国語を学ぶ皆さんにも大いに関係がある学問なのですよ。たとえば、人間の話し言葉をテキストに変換したり、日本語のテキストを解析して単語に切ったりするコンピュータで処理するためにとても重要な「自然言語処理」という技術は、言語と密接な関わりがあります。

    • 身近なところでは「Google検索」などのWeb検索、自動翻訳、「Siri」や「Alexa」のようなAIスピーカーなどに使われており、皆さんも普段から接する機会があるのではないでしょうか。他にも、インターネット上のテキストや文書を分析し、流行や顧客ニーズなどの有用な情報を得る「テキストマイニング」という手法も、そのツールの裏では自然言語処理が大活躍しています。テキストマイニングは言語研究にも活かされています。たとえば、過去から現在に至るまでの書籍や新聞と言った多様なメディアを電子化した膨大なテキストデータを使って、時代による言葉の変化を研究する例などもあります。

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    トランプ大統領とオバマ大統領の演説の違いを可視化する

    データサイエンスのもつ可能性は広く、語学を学ぶ皆さんも面白く役立てることができます。実際、外国語学部の学生がどのように活用しているか、一部をご紹介しましょう。

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    • ある学生は政治と英語への関心が高く、アメリカ合衆国・トランプ前大統領とオバマ元大統領の演説を「ワードクラウド」という手法を使って比較しました。ワードクラウドとは、テキストデータから出現頻度の高いキーワードを複数抽出し、頻度に応じて文字の大きさや色を変えて表示するという、データの可視化ツールです。トランプ・オバマ両氏の様々な違いがひと目で明らかになり、比較して見ることができます。また、あるコーヒー好きな学生は、明治時代から現代までの日本の新聞記事のデータを検索して分析し、コーヒーブームの変遷を調査した卒業論文を書いてくれました。

    • 今のコーヒーブームが感覚的なものだけではなく、データからも裏づけられることがわかりました。このように、データを観察することで、様々なことが見えてくるというのがデータサイエンスです。彼ら自身、とても楽しんで取り組んでいました。これらは一例であり、またほんの入り口ですが、面白そうだと思いませんか?語学スキルや興味のある分野と組み合わせることができれば、皆さんの可能性は大きく広がるはず。学習や仕事に役立つツールとして、ぜひ使い方を学び、活用してほしいと思います。

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    データサイエンスの素養を身につけ「モノを見る目」を養う

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    • 入学後はまず、キーボードのタッチタイピングからITの基礎を学ぶ「情報リテラシー」を全学生が履修します。スマートフォンでの検索やフリック入力ができるだけでは、社会では通用しません。パソコンやネットワークを活用するために必要最低限のルールやスキルを、ここでしっかり身につけましょう。1年次後期からは「統計学の基礎」「プログラミング」「データ解析の基礎」「機械学習」「AIビジネス」「コンピューターと人文科学」など、皆さんの興味に応じて学ぶことができます。多様な科目が用意されていますから、皆さんの興味のあるものが、きっと見つかるでしょう。

    一定の科目を履修すると「データサイエンスプログラム」の履修証明書が発行されるので、就職活動にも活かせます。大学生活の4年間で、AIやデータサイエンスが世の中にどう役立っているかを概観し、理解することは、それだけでも大きな意味がありますし、むしろ文系分野にこそ、データサイエンスの知識が生きてくると言えます。

    • データを見て判断しなければならない場面は、どの分野でもあることです。また、真実かフェイクかわからない情報が溢れる時代、SNSやメディアの情報をそのまま受け取るのではなく、情報をどう解釈し、判断するか。つまり、「見る目」を養うことはとても大切です。そこには、データと向き合い、データを判断し、そこから本当に有益な情報を掴み取るというデータサイエンス的な素養が、大きく役立つはずです。

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    AIやIT機器がないと生きていけない!ではなく、それらをツールとして使いこなす能力を身につけて

    ITやAIを活用するためのツールには様々なものがあり、エンターテイメントだけでなく、学習に活用できるものもたくさんあります。たとえば「自動翻訳」も、上手く使いこなせば、皆さんの語学スキルを大きく伸ばしてくれるでしょう。

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    • 今や、外国語学部の先生方も「これはすごい!」と驚愕するレベルの自動翻訳が登場しています。私は学生の頃、辞書の早引きの達人と呼ばれ「すごい!辞書を引く君の手が見えない!」と称賛されたものですが(笑)、自動翻訳のおかげで、もうそのように辞書を引く必要はないかもしれません。その分の時間を節約し、私たちは自動翻訳の翻訳をもとに、英文をさらにブラッシュアップすることができます。より正しく、よりニュアンスの行き届いた、パーフェクトな英文を追求することに全力を注ぐことができるのです。素晴らしいことだと思いますよ。

    外国語を専門に学ぶ学生にとっても、英文のクオリティを上げるために当然活用できるツールですし、効率よく利用すると良いと思います。ただし「使いっぱなし」はいけません。自動翻訳はあくまでも「予測」であり、精度が上がったと言っても、正解率が上がっただけ。決して完璧ではないのです。

    • 翻訳機のアウトプットを見て、間違いはないか、ニュアンスにズレはないか、足りないものはないか。使う人が責任をもって確認する必要があり、その作業はなくなりません。そもそも、出てきたものをそのまま、テストやレポートに記入して提出していては、意味がありません。外国語学部の学生であれば、自動翻訳を鵜呑みにすることなく、中身を見て理解し、不自然なところがないかを「嗅ぎ取り」、修正する力をつけるべきでしょう。ITやAIに「使われる」のではなく、自らの能力を育てるために、ITやAIを積極的に「使いたおす」ことのできる人になってほしいと思います。

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    前編では外国語学部長の千葉先生にデータサイエンスを使った授業の内容や、これからの時代に必要なスキルをお話しいただきました。これからの時代を牽引していくITやAI。プログラムは海外サイトから情報を収集できると飛躍的に伸びますし、海外企業と仕事をする時にも語学スキルは非常に役に立ちます。 後編では、IT・AI社会に求められる語学力とは? 今、外国語を学ぶ意味についてお伺いしていきましょう。

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