ベネッセコーポレーションに在職中、通信教材のデジタル化に貢献した小田理代先生。麗澤大学では、最新テクノロジーを駆使して効果的な学習方法を設計する先進的な取り組みをしています。後編では、小田先生のご担当されている授業と麗澤大学の魅力、高校生へのメッセージなどについて伺います。
多くの気づきを与え、社会に出ても役立つ授業を目指して
私が担当している授業では、英語教育にテクノロジーをどのように融合させるかを探求しています。私が目指すのは、AI・VRなどの最新のテクノロジーを効果的に学習に活用したり、自身の能力を高めていくために活用しようとしたりする学習者の育成です。
たとえば、授業では、英語翻訳とAIをテーマに、生成AIや機械翻訳を外国語学習に活用する方法などを扱っています。機械翻訳や生成AIの出力結果を単純にそのままコピーして使うのではなく、AIの強み弱みを知った上で、AIと対話しながら、外国語学習の能力を高めるためにより良く活用することを学んでいきます。私は授業を通して、「AIは外国語学習において、とても役立つツールになり得るんだよ」という考え方をお伝えしています。
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また、ほかの授業では、ICTを用いた外国語の学習環境を設計するといったことも行っています。この授業では、学生達が外国語学習の課題を見出し、VRやAIなどの最新のテクノロジーを用いながら自身の課題を解決するための外国語の学習ツールを設計します。授業はPBL(課題発見解決型学習)形式で行われ、学生達はグループで議論を深めたり、お互いの考えを擦り合わせたりしながら設計を行い、ポスターとプロトタイプ(試作品)を作成して発表を行います。実際に社会に出て働く際には、自分1人で解決できることは少なく、専門分野の異なるメンバーと協働しながら業務を進めていくことが必要になります。そのため、グループ活動の体験やそこから得られた気づきも、将来仕事をする際に役立ってくれると良いと思っています。
授業を履修した学生たちからは、「AIや機械翻訳に対する考え方が変わった」「自分の頭を使わずツールに頼ることに罪悪感を持っていたけれど、使う側がリテラシーを持てば有効なツールになると気づいた」など、ポジティブな声をいただいています。
個々の才能を見つけ出し、夢への道を全力でサポート
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麗澤大学での経験は、私にとって多くの新しい発見と学びがあるものです。着任してからまだ1年弱ですが、この大学の環境、特に学生との距離の近さをとても気に入っています。ここでは、教員と学生間のコミュニケーションが非常にオープンで、それが大きな魅力のひとつだと考えています。学生たちが自由に意見を交わし、教員もそれに耳を傾ける姿勢が根付いているため、互いに刺激し合いながら成長できる環境がここにはあります。
また、学生が活躍できる場がたくさんあります。自主企画ゼミナール※やボランティア活動に勤しむ学生がいたり、英語劇グループや麗澤模擬国連団体といったサークルで活躍している学生もいたりします。様々な活動を通してリーダーシップ経験などを積むことは、学生を大きく成長させるものだと実感しています。やる気さえあれば、いくらでも活躍できる場が用意されている大学だと感じています。
※自主企画ゼミナール:学生が学びたいテーマを見つけ、自ら指導を受ける教員を選び、何をどのように学習していくかについて、当該教員の助言を受けながら決定し、学習計画を立て、その計画に従って進めていくゼミナール制度。
学びを力に、テクノロジーで未来を形づくる
今後の目標として、専門分野が学習環境デザインですので、色々なデータや学生の状況を可視化しながら、授業に反映していきたいと考えています。そして、そこで得た知見を大学での教育、ひいては社会に広く還元していきたいというのが、これからの大きな目標です。テクノロジーは進化し続けます。そのため常にその動向を見定めつつ、どのようにそれらを学習に活用できるか、学習に活用するためには学習者にどのような力が必要なのか、それをどう育成するのかといったことに取り組んでいきたいと考えています。2024年4月には麗澤大学にデジタルコミュニケーション研究センターが設立されました。これは、デジタルを活用した外国語学習の研究成果の蓄積・発信や、学生の学びの質向上に貢献することを目的として設立されたものです。このセンターを通して、麗澤大学での外国語学習において、デジタルコミュニケーション分野の研究成果の蓄積、その研究の知見に基づいたテクノロジーを用いた外国語学習の実践に取り組んでいきたいと思っています。
関心を持ったことにチャレンジしてほしい
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高校生の皆さんには、関心を持ったことに次々とチャレンジしてほしいと思います。体験することで、それが自分に向いているのか、向いていないのかがわかってくると思います。その経験を通して、ぜひ自分の軸を持ってほしいです。それは、人から言われたからとか、周りもそうだからとかではなく、自分が何を大切にしているのかといった価値観を自分の体験の中から育てていってほしいということです。なぜなら、世間的な「成功」の定義は相対的なものであるからです。何が「成功」かは、時代や場所が変われば変化します。そのため、自分の人生の中で満足を得るためには、自分の価値観をもとに「成功」を定義してそれに向かい続けることが必要です。
麗澤大学には、自分の関心のある分野を見出したり、大学卒業後も社会で活躍するための資質を養ったりすることができる環境が充実していると感じています。社会問題に関心があったり、外国語が好きであったり、様々な志を持ち、活動している学生がたくさんいます。自分と似たような志を持っていたり、お互いに刺激し合えたりする仲間と出会え、自分の価値観と向き合うことのできる素晴らしい環境ではないかと思います。