
麗澤大学でデータサイエンスと出会い、2022年6月現在、民間シンクタンクのデータサイエンティストとして、不動産投資市場調査研究の第一線で活躍する卒業生の川村康人さん。後編では、川村さんのお仕事についてお話を伺います。

【国際経済学部 国際経済学科(現在の経済学部 経済学科)2009年3月卒業】
「不動産価格指数」 客観的なデータの提供によって、経済安定を目指す
2013年には、国土交通省からの委託事業を担当し「不動産価格指数」の運用システムを構築しました。不動産価格指数というのは、不動産がどのような価格水準で取引されているか、たとえば5年前と現在ではどちらが何パーセント高いのかを、リアルタイムで正確に把握するための統計データです。これがなぜ必要かというと、一番は、金融・経済危機を回避するためです。日本のバブルや、世界的な金融危機となったリーマンショックの例からもわかるように、不動産価格の変動は経済全体に大きな影響を与えることがあります。そこで、リーマンショック後、これからは主要国が統一された手法で不動産価格指数を作成・公開し、不動産価格の動きをモニタリングしていこうという機運が世界的に高まり、日本でも作成・公開されることになったのです。ちなみに、不動産価格指数の国際基準作成には、麗澤大学の清水千弘先生が関わっていますよ!
2016年からは独自に、投資用不動産の価格動向がわかる「J-REIT不動産価格指数」を作成し、弊社HPで毎月レポートを公開しています。なぜなら、不動産投資家や融資を行う金融機関が、客観的なデータに基づいて冷静な判断ができるようになれば、不動産への過剰な投融資が抑えられ、バブルのような事態を回避できるかもしれないからです。「データサイエンティストとして、健全な不動産市場をつくることに貢献したい。」このような思いから取り組んでいるものです。
レポートに対する反響をいただいた時や、メディアから専門家として解説を求められる時などは、自分が人の役に立っていると実感できて素直にとても嬉しく、大きなやりがいを感じます
データサイエンティストとは? 時代の変化に応じて、常にアップデートすることが重要
データサイエンティストの仕事は、皆が知らなかったことをデータから明らかにし、ビジネスや社会で活用できるようにすることです。そのためには、ただ、分析ができれば良いのではなく、お客さまの課題を整理することや説得力のあるプレゼンテーションをする能力も必要ですし、プログラミングや統計学の専門知識にとどまらず、経営や法律、社会制度、歴史に対する理解も求められます。
私が麗澤大学で学んでいた頃は、「データサイエンス」と名がつく授業や学科、職業はありませんでしたが、当時学んだことは今も現役で役立っていますし、当時と比べれば扱うデータの質や分析手法は飛躍的に進化しているものの、やっていることに大きな違いはありません。今後新しい分析手法やプログラミング言語が登場し、10年後にはまた「データサイエンス」とは違う呼び方になっているかもしれませんが、データサイエンスそのものの本質と重要性は、これからも変わらないでしょう。基本となる知識があり、常に最新にアップデートしていくことができれば、時代がどう変化しても対応していけると考えています。
自分の「好き」を信じて、目の前のことに一生懸命チャレンジしてみましょう!
私自身、20年前の高校時代からは想像もつかない人生を歩んでいますが、良い人生を歩んでいるなと思えます。それは、いつも自分の好きなことや興味のあることを追求し、挑戦してきたからです。やってみて違ったら、いくらでも路線変更すれば良いのです。皆さんも将来のことで悩んだ時は、自分の「好き」という気持ちを信じて、目の前のことに一生懸命にチャレンジしてみてください。