卒業生の活躍
2022.09.28

【前編】データサイエンティストとして、健全な不動産市場をつくることに貢献したい

【前編】データサイエンティストとして、健全な不動産市場をつくることに貢献したい

民間シンクタンクのデータサイエンティストとして、不動産投資市場調査研究の第一線で活躍する卒業生の川村康人さん。前編では、どのようにデータサイエンスと出会い、その道を究めていったのか、お話を伺います。

川村 康人
三井住友トラスト基礎研究所 投資調査第2部 主任研究員
【国際経済学部 国際経済学科(現在の経済学部 経済学科)2009年3月卒業】
埼玉県出身。2010年3月に政策研究大学院大学修士号を取得。その後、株式会社住信基礎研究所(現・株式会社三井住友トラスト基礎研究所)に入社。2021年7月より現職。ラオス人の妻、娘の3人家族。家族が暮らす海外と日本とを往き来する生活を送る。「現役引退後は、一日の終わりにメコン川に沈む夕日を眺めながら、ビールを飲む暮らしをするのが夢。」
目次

    高校卒業後、大学受験をせず単身オーストラリアへ

    高校時代は、勉強が苦手で成績もあまり良くありませんでしたが、唯一、英語だけは好きでした。『ロード・オブ・ザ・リング』や『ホビット』など好きな映画の原著を読んだり、オンラインゲームで凝った遊び方をするためにプログラミングを独学で学んだりと、学校の勉強以外の趣味に没頭していました。

    高校3年生になっても大学に進学する意味を当時の私は見出せず、高校卒業後すぐには大学進学をせず、ワーキング・ホリデー制度を利用し単身オーストラリアへ向かいました。知人の紹介で、現地の中学校で生徒に日本語とコンピュータを教える教員助手の仕事に就くことができましたが、ワーキング・ホリデー制度のビザの期限は最長でも1年間。オーストラリアで仕事をしながら「帰国後はどうしよう。やっぱり大学で英語を勉強しようかな...」とぼんやり考えていました。そんな時に、オーストラリアの大学で教育学の講師をしている日本人と知り合い、「何か専門性を身につけてはどうかな。経済学でも法学でもいい。自分の専門分野について、それを日本語と英語の両方で語れるようになるといいよ」と助言をいただきました。その助言をもとに、帰国してから何を学びたいのか、もう一度しっかり考え直すことにしたのです。

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    • そして帰国後に選んだ道は、日本の大学で経済学を学ぶことでした。もともと「バブル景気って何だろう、好景気・不景気はなぜ起きるのだろう?」と、経済の仕組みに興味があったことに気づき、世の中に大きな影響を与える経済についてきちんと学んでみたいと思ったからです。大学を調べる中で、麗澤大学の当時の国際経済学部は、経済学を日本語だけでなく英語でも学べるコースがあると知り、「まさにうってつけだ!」と受験を決めました。

    学問の楽しさに目覚めた大学時代。一生の仲間と出会ったゼミナールが一番の思い出

    • 高校の授業では、試験勉強に向けてとにかく暗記することが多く、勉強が苦手になってしまいました。しかし、大学では自分が知りたいことや、物事の本質をとことん追究できたので、そこから学問の楽しさに目覚め、高校時代とは打って変わって学問に打ちこみました。1年次の夏休みには、授業のテキストとは別にハーバード大学で使われている経済学の教科書をAmazonで入手し英語で読破したり、2年次の後半からはゼミナールの研究活動に没頭し、学内の懸賞論文で優秀賞を受賞したりしました。授業だけでなく独学での勉強にも励んで、その結果、成績が認められて特別奨学生に選ばれるなど、今振り返っても我ながらよく頑張って勉強したなと思います。

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    そして大学時代の一番の思い出といえば、何といってもゼミナールです。私は清水千弘ゼミに入ったのですが、そこで過ごした仲間たちとの日々が本当に楽しかったです。私たちの代から、学生だけで研究報告やプレゼンテーションの練習をする「サブゼミ」を始めたのですが、毎週、サブゼミの後に皆で食事に行ったりたくさん話をしたりするうちに、最初は固い雰囲気だったのが少しずつ打ち解け、卒業する頃には皆すっかり仲良しになりました。そのうち4、5人とは今もつながっていて、私がタイの地方部で結婚式を挙げた時も、皆駆けつけてくれました。私にとって彼らは一生の仲間であり、財産です。

    データ分析の面白さに夢中に! 今の私の原点です

    1年次の時、入門ゼミナール担当の清水先生に「これから経済学を研究するなら、理論的な分析だけでなく、データ分析による実証的な研究もできるように、計量経済学や統計学も勉強すると良い」と助言をいただき、2年次からそれらの授業を履修することにしました。それらの授業では、計量経済学や統計学が主観を排して物事を客観的に評価する強力な分析ツールであることを学び、その面白さに夢中になっていきました。今思えば、これがデータサイエンティストになる最初のきっかけでした。

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    • 麗澤大学は当時から、個人ではとても買えない高価な統計分析ソフトが大学内で誰でも使えるという素晴らしい環境でしたが、私はそれでも足りなくて、統計解析向けのプログラミング言語「R」を独学で習得しました。「R」は誰でも自由にダウンロードして使えるオープンソースのソフトウェアなので、自宅のパソコンでもいつでもデータ分析ができるようになり、大学の授業で習う分析手法以外にも、学術論文などで使われている分析手法を独学でどんどん学んでいきました。プログラミングや分析手法などの最新情報は英語で発信されることが多いので、ここで元々好きだった英語に随分助けられました。こうして麗澤大学で学んだ統計学、計量経済学、経済数学、金融工学などは、今の仕事に存分に活かされています。

    先生方との濃い思い出がたくさん。今も心に残る清水先生の言葉

    麗澤大学で良かったことは、少人数制で学生と先生の距離が近く、いろいろな先生方と親しくなれたことです。皆さんとても教育熱心で、学生が頑張っていると「こんな論文もあるよ」「こんな良い本もあるよ」と、いろんなことを教えてくれます。先生方の経歴も多彩で、たとえば日本銀行で日本の金融政策に携わられていた中島真志先生に金融論を教わるという貴重な体験もすることができました。勉強だけでなく、籠義樹先生や高辻秀興先生(2021年度退職)、上村昌司先生とはよく一緒に食事にも行き、そのまま先生方の研究室にお邪魔していたのも良い思い出です。

    そして清水千弘先生には、卒業後もずっとお世話になっています。大学ではたくさんのことを学びましたが、今でも一番記憶に残っているのは、1年次の時、清水先生に「経済学を学ぶものは謙虚でなくてはならない。人々の幸せについて、経済学で解決できる問題はごくわずかだからだ」と教わったことです。麗澤大学では本当に素晴らしい先生方に恵まれ、良い教育を受けることができました。

    ―後編では川村さんのお仕事について詳しくお話を伺います!

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