編集部
2023.05.18|最終更新日:2023.12.12|

AIとロボットに違いはある?関係性やAIやロボットに関わる職業・仕事内容もあわせて解説

AIとロボットに違いはある?関係性やAIやロボットに関わる職業・仕事内容もあわせて解説

【麗澤大学監修】AI(人工知能)やロボットの世界ってどんなものだと思いますか?「今のAI技術はどうなっているのか気になる!」そんなあなたに今回はAIやロボット業界について詳しい、麗澤大学新学部の工学部工学科ロボティクス専攻の鈴木先生にお伺いしました。将来AI・ロボットに関わる仕事がしたい人は必見です!

目次

    AI(人工知能)やロボットについて、「AIロボット」といえば、今や知らない人はいないソフトバンクの「Pepper(ペッパー)」などの人型のものをはじめ、「AIBO」などのイヌ型のペット・動物の形をしたものなど、AIにより人と会話をしたり、「癒し」を与えたりするものが普及してきています。
    また一般家庭におけるロボットには、「ルンバ」などAIで部屋の隅まで認識をして掃除を行うものなどもありますね。
    このようなAI技術は近年さまざまな分野で使用されており、私たちの気づかない意外な場所でも使われていたりします。便利な世の中になった今、AIやロボットに関わる仕事の需要が増えており、今後も注目したい職種の1つにあげられるでしょう。今回は、麗澤大学新学部の工学部工学科ロボティクス専攻の鈴木先生に、AI・ロボット業界についてお伺いしました。

    【麗澤大学 鈴木高宏先生のプロフィール】

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    職名:教授
    学部/学科:工学部 ロボティクス専攻・教授(設置許可申請中)
    専門分野: ロボティクス、非線形制御、ITS(先進交通システム)、産学・地域連携マネジメント
    研究テーマ: 柔軟ロボット、シミュレーション、自動運転、EV(電気自動車)、災害対応ロボット、建設ロボット、多次元地理情報活用、自動化システム、科学技術コミュニケーション

    東京大学で宇宙ロボットの姿勢制御の研究から始め、カオスなどの非線形力学と制御について研究を進める中で、既存の概念に縛られないロボットのより大きな可能性を考えてきました。一方で、学位を取り、当時まだ六本木にあった東京大学生産技術研究所に講師として着任した後からは、一方で「面白い」だけでなく「役に立つ」ロボットとは何か、ロボットの真の産業化に向けても考えてきました。そのため、総合工学の先例である自動車工学において、運転シミュレータを用いた研究から自動運転などITS(先進交通システム)の研究開発に取り組み、その縁から、長崎県五島列島におけるEV(電気自動車)を観光用レンタカーとして用いる次世代型エコ・アイランドの推進プロジェクトを推進する長崎県庁に3年間赴任しました。その後は、東北大学に移り、東日本大震災・原子力災害からの復興に、どのように先進技術を役立て、新たな地域を創生していくかに取り組んでいます。
    大学の一研究者ながら、県の幹部職員という行政を経験するという経験は、日本ではまだ稀ですが、世界に目を向ければ理系人材が社会のリーダーとなる例は実は多く、麗澤大学の新しい工学部でも、単に技術者・研究者に限らず、将来社会の隅々まで必要となるAI・ロボットを詳しく知り、様々な形で活躍できる人財を広く育成していきたいと思います。

    (参考プロフィール)
    1998年 東京大学 大学院工学研究科 機械情報工学専攻 博士課程 修了
        博士(工学)学位取得
    同年  東京大学 生産技術研究所 講師
    2000年 同 助教授
    2004年 東京大学 大学院情報学環 助教授(生産技術研究所 兼担)
    2007年 同 准教授に改称(文科省規程改訂による職名変更)
    2010年 長崎県 産業労働部 政策監 に転籍出向
        東京大学 生産技術研究所 先進モビリティ研究センター 客員准教授 兼務
    2013年 東京大学 生産技術研究所 准教授 に復帰
    2014年 東北大学 未来科学技術共同研究センター 教授
    2022年 同 特任教授
    この他、  長崎総合科学大学 新技術創成研究所 客員教授
          東京大学 大学院情報学環 客員教授
          麗澤大学 国際研究所 客員教授
          (一社)電気自動車普及協会 理事  など兼務

    AIとロボットの違いと関係性

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    あなたがAIとロボット、2つのキーワードを聞いて思い浮かべるものはどんなものですか?

    アニメや映画の影響もあり、人型で人間とコミュニケーションが取れるロボットを想像した人は少なくないのではないのでしょうか。それほどAIとロボットはよく一緒のものと捉えられることがあります。

    基本はソフトウェア技術であるAIと、ハードウェアを伴うロボット工学とは根本においては異なる学問です。しかし、自ら学習して情報処理するAIと、それを実行するロボットとは、ある意味とても相性が良くしばしば互いを必要とします。

    つまり、人工知能(AI)は自分で動作や情報処理を行う「脳」の部分であり、ロボットは実際にその脳が出す司令の動作を行う「身体」の部分であり、この2つを組み合わせた時に効果を発揮することができるのです。

    また、「脳」は「身体」を持つことで実世界の複雑さや曖昧さという「現実」を知り、それによって大きく進化・発展することができます。かつてサルだったヒトが、二本足で歩き、手で道具を扱うようになって、その脳が大きく進化したことと同じです。

    私たちの日常生活でもAIを有したさまざまな機械や製品、AI家電などが身の回りに増えてきていますよね。

    例えば、皆さんの家庭にある全自動洗濯機は、入れた洗濯物の大きさや、賢いものはその種類を判別して適した洗い方を行いますし、お米の種類によって炊き方を変える炊飯器や、人がいる場所によって風の向きや強さを変えるエアコンなどは、とても賢いAIを持っています。ただ、これらのAI家電はあまり「ロボット」とは思われないかも知れませんね。

    AIとロボットを組み合わせたAIロボットは今後もたくさん登場するでしょう。
    中でも、自動車におけるAIは、自動運転を一つの実現目標として期待されています。
    AI家電と同様に、自動車はあまり「ロボット」と思えないかもしれませんが、最近の自動車はAIを、しかもたくさんのAIを搭載した「AIロボット」の一つと考えることができます。何より「運転」というかなり難しい作業を人間の代わりにして人間の「役に立つ」のですから、自動運転ができる自動車は、究極のAIロボットの一つと言ってよいかも知れません。

    そもそもロボットとは

    現代でいわれているロボットとは、元々ロボットに期待されてきた人間の仕事を肩代わりする役目があります。工場で加工や組立、搬送などを行う産業用ロボットから、コンピュータ操作を人に変わって自動化するソフトウェアロボット、物理的に形をもった人間や動物のような見た目をして動きを模したペットロボットまで、どれもロボットと呼ばれ、人によってロボットの定義はさまざまな捉え方をされています。

    そもそもロボットという言葉は、1920年にカレル・チャペックという小説家がきっかけで造られた造語でした。チェコ語で「強制労働」を意味する「ロボッタ(robota)」と、スロバキア語で「労働者」を意味する「ロボトニーク(robotnik)」という言葉に由来し、彼の兄が名付けたと言われています。

    その後ロボットは多くのSF作品に登場するようになり、特にアイザック・アシモフや、手塚治虫の「鉄腕アトム」などが有名なところです。また「ガンダム」など人が搭乗する巨大ロボットが多くの少年少女の心を魅了してきました。欧米では多くが宇宙人が使う兵器であったり、人間の仕事を奪う存在として描かれることが多かった一方で、「ドラえもん」のように人間の友達となる「ロボット」は、日本独自で産まれたイメージとも言われます。

    みなさんが頭に思い浮かべるロボットと言えば、ドラえもんのような知能を持った「AIロボット」を指す場合が多いでしょう。
    一方、産業用ロボットなどのプログラムで決められた作業を淡々とこなしていくロボットは、リモコン・遠隔操作型、搭乗型など、一見知能の無いように見えるものがあります。これらにおいても、人間の操作にスムースに従って動いたり、途中にある障害物にぶつからないよう止まったり、避けたり、様々な巧みな制御が実は行われていることがありますし、さらに現在ではやはりAIという知能を持って、より賢い動きを自動で行えるものが次々と開発されています。

    ちなみに「ロボット」と「機械」の違いは、例えばミシンや飛行機、エスカレーターやブルドーザーなど、一つの動作のみ行うものや人間が常に操縦し続ける機械はロボットに含まれないことが多いと考えられます。

    多くの人は、あくまでも自動で連続的に動作する機械をロボットと見ているように思います。そして、人間、または少なくとも生物の姿かたちをしたものが期待されることが多いと思われます。

    AIってどんなもの?

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    ロボットと関係性の深い「AI」についても、もう少し詳しく掘り下げていきましょう。

    AIとは、「Artificial Intelligence(人工知能)」の略語で、しばしば人間のような知能・学習能力を持つコンピュータのことを指すと説明されがちです。本来は動物や人間など自然に産み出された知能(自然知能)に対し、人工的に作り出された、ある種の賢い判断や行動を行えるものを意味します。

    現代科学で人工知能を実現できる方法が、ほぼコンピュータ、ないしコンピュータプログラムに限られるため、上記のような説明となると思われますが、例えばアシモフのSF小説に登場するロボットの人工脳は、培養液のような中で製造される描写があり、半導体で構成される現代のコンピュータとはかなりイメージが異なるようです。

    もともと「コンピュータ」は「計算機」という意味だったのですが、今や複雑な計算と認識、分析、判断を行えるものとなり、それゆえにコンピュータという言葉そのものが人工知能を表すように変化しているとも思われます。

    また、「人間のような」という部分についても、AI、人工知能が必ずしも人間のような思考形態を行う必要も、また必然性も本来ありません。そもそも、半導体という人間の身体、脳を構成するタンパク質などから成る生物細胞とは全く異なる要素で作られたコンピュータが、人間と同様の思考を行える保証はないです。あくまで人間の思考を元に考えられたプログラムを組み込むことで「人間を真似た」思考を模倣しているだけとなります。

    現在のAIのほとんどは、プログラムしやすい特定の目的に特化して作られた「特化型人工知能」と言われるものになります。チェスや囲碁、将棋で人間の世界チャンピオンと対戦するようなAIがその代表例の一つと言えるでしょう。
    現代社会の様々な場面で活躍する、画像処理や音声認識、自然言語処理を行うAIも基本的に特化型人工知能になります。
    人間の代わりにさまざまなことを実行してくれるApple社の「Siri」やお掃除ロボット、Google社の自動翻訳などに代表されるように、私たちの生活の身近なところで「特化型人工知能」と呼ばれるAIは画期的な役割を果たし、私たちの生活をより良いものにするために日々使われています。

    対して、さまざまな問題・課題に対して、自ら柔軟に認識・判断を行えるAIは、「汎用人工知能」と呼ばれます。汎用人工知能は、様々な分野での活用が期待されていますが、現在の技術では、汎用人工知能の実現はしていません。

    人間は、これまでの経験や知識、または想像力などを様々に駆使し、未知の事態に対しても柔軟に対処することができます。AIには、このように現実の様々に複雑な問題への対応がしばしば期待されるため、「人間のような」という言葉が冠せられるのかも知れません。
    そして、人間と同等、あるいは人間以上の重要な判断を行えるAIに対し、人は何かしらの感情や意識、感性などといった「人間的な要素」を望むのでしょう。

    さらに近年では、「深層学習(ディープラーニング)」と言われる人工知能に対する機械学習の方法の一つが多く使われるようになっています。
    この技術は、生物の神経細胞とそれによる神経ネットワークを模倣したニューラルネットワークを多層にして用い、そこに大量のデータを流し込み、入力されたデータのパターンに応じた望ましい出力が得られるよう、学習をさせる方法です。
    人間が複雑なプログラムを考える必要がなく、とにかく大量のデータを用いられれば結果が得られることから、現代のデータ社会において非常に多く使われるようになりました。

    合わせて読みたい記事:「AIビジネスとは?どんな仕事に活用されている?AIテクノロジーを学んで経済社会に不可欠なAI人材を目指そう!」

    AI技術に期待されていること、懸念されていること

    AIは膨大なデータをスピーディーに処理し、自ら学習していきます。

    今まで人間が時間をかけて行なっていた単純な業務を行うだけでなく、これからはロボットなどのハードウェアとAIが組み合わさることで、より人間の代わりとして製造業、医療や介護、サービス業などさまざまな面で業務効率化、人手不足の解消、生活面での利便性が上がることが期待されています。

    一方で、人間の仕事がどんどんAIに奪われて職を失ってしまう人が出てくる可能性があることや、「AIが人間の知能を上回り、人間が予測不可能なことが起こり得る」という2045年問題などが懸念されています。

    ただ実際には、AIで代替可能な仕事は、多くが単純な繰り返し作業を要するものであり、そうした仕事は人間にとっては退屈でしばしば精神的苦痛ともなり得るところです。AIはそうした業務から人間を解放し、より創造的でやりがいを感じられる仕事に集中できるようになるとも考えられます。
    同様にロボットも、人間が行うには危険や苦痛などが伴うものにこそ活用がされていくと考えられます。AIやロボットを前提とすることで、人間が今後も行うべき仕事とは何か、を問い直す機会となるとも言えます。

    最近、AIについてはChatGPTに代表されるように、上述したような特化型AIを越えた、汎用型AIがいよいよ登場し始めてきたとも考えられます。これらは、これまで人間が行ってきた膨大なデータを学習し、あたかも本物の人間が行ったかのように模倣することができるようになりました。こうした高度かつ汎用的に使えるAIの登場により、そうしたAI技術の活用における道徳・倫理が問われる状況となってきています。

    ロボットについても、こうしたAIを搭載することで、ロボットの向こう側で人間が対応しているのか、AIなのか、を区別することはますます困難になるでしょう。
    自動運転を例に出せば、「もし自動運転AIを搭載した自動車が事故を起こした際に、AIの判断と、人間の判断とを分離して適切に責任を問うことができるのか」は現実的に差し迫った課題です。何より、ソフトウェア、情報の上だけで生じる損害だけでも大変ですが、それ以上に物理的な損害を生む可能性を持つのが、実体を持ったロボットの大きな特徴であり、課題になります。
    こうしたロボットを作ることと同等か、またはそれ以上に、どのように使うか、を適切に考えていく必要が増してきていると言えます。

    AI技術が使われている事例

    では実際に私たちの身の回りでAI技術が使われている事例を紹介します。

    ■自動運転とAI

    自動車業界はAIやIoT(あらゆるモノをインターネットに接続する技術)などの最先端技術の導入により、自動運転の技術が飛躍的に伸びています。
    ドライバーがいなくても車を安全に運転し、目的地まで届けてくれる自動運転技術の開発に自動車メーカーやIT企業が参入し、世界中から大きな期待が集まっています。

    自動運転システムではAIが「画像解析」「予測」「判断・決定」「コミュニケーション」「セキュリティ」などの運転操作に関わるさまざまな判断を、ドライバーの代わりに行います。

    例えば画像認識では、様々な視覚パターン情報に対して機械学習、ないしディープラーニングを繰り返し、AIによる認識精度を向上させていくことで、自動運転に必要となる認識精度を向上させていきます。

    こうしてトレーニングされたAIは、歩行者か車なのか、道路標識の内容、信号機や建物までも正しく認識できるようになります。たとえ今までになかった動きや初見のオブジェクト(物体)であっても、予測し適切な判断を行い、操作ができるようになることで、自動ブレーキや速度調整などの運転支援だけでなく、完全に自動運転化することができるようになり、私たちの生活で実用化される日は近いかもしれません。

    また、運転の技術だけでなく、音声案内など車と人とのコミュニケーションにもAIは大きく役立っています。

    しかし人間の判断や思考などと比較し、自動運転化は現状はまだまだ課題が多いといえます。
    例えば、トロッコ問題。突然、予測ができない動きの自転車やバイクが曲がり角から飛び出してきたり、ブレーキが壊れてしまい人と接触してしまう場合など、どんな決断をして行動しても重大な被害が出てしまう場合に、AIはどう判断し意思決定をさせるべきなのか、倫理的な観点からAIがどう判断させるのかしばしば議論されています。

    ■画像認識とAI

    画像認識とは、画面に写る人や物、文字をコンピュータや機械が特定する技術のことを言います。

    例えば、顔認証システムや、不良品の検知、画像検索システムなどに利用されています。
    Google翻訳のカメラ機能を使うと、画像内の文字を読み取り約133の言語(2023年4月現在)で翻訳が可能ですし、近年では大量のデータをAIが学習するディープラーニングによってその精度が上がってきており、あらゆる交通状況に対応しなければならない自動車の自動運転にもこの画像認識の技術が役立っています。

    最近では、Google検索などで風景や外観だけで場所や建物・店舗の名前を当てられるようにもなってきているようです。
    実は、これには膨大な写真データだけではなく、そこには、その写真を撮った位置情報などが付されているのが重要なポイントです。要は、その周辺でそのような見かけのものは、あらかじめAIによって候補が絞り込まれていると考えられます。そのためには、膨大なデータを持ったクラウドとネットワークを介して繋がっている必要があるのです。

    AIロボットとは

    AIロボットとは、先ほど説明したAI(人工知能)を搭載し、情報を集め分析し、自ら学習をし行動できる体をもったロボット(機械)のことをいいます。

    これまでのロボットは、人間があらかじめプログラミングしたことを正しく実行するだけの物でしたが、AIを搭載することで、ロボットが人とコミュニケーションをとっているかのような動作ができたり、学習を重ねることで臨機応変な対応がとれたり、完璧ではありませんが人間と同じ様な所作で効率の良い作業ができるようになります。

    すでに、AIロボットは製造業・医療・介護・サービス業、また家庭内での活用がされています。

    AIロボットにはどんなものがある?

    ■コミュニケーションロボット

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    人型のコミュニケーションロボットの代表としてSoftBank社が開発した人型ヒューマノイドロボット「Pepper(ペッパー)」は知っている人も多いのではないでしょうか。
    Pepperは、顔認識や感情認識などを搭載していて、胸元のモニターに自分の感情を写し出したり、多言語での通訳を含む会話ができたりします。
    接客が必要な店舗での人手不足解消、介護現場でのレクリエーションアシスタント、教育現場でのプログラミング学習など、さまざまな場所で活躍しており、社会に大きく貢献しています。

    Pepperや、Papero(パペロ)、 Kirobo/RoboHon(キロボ、ロボホン)など、ヒト型ロボットの形で人とのコミュニケーションを媒介するものをAIロボットと呼ぶことが多いです。
    なお、これらの形のロボットでも、ネットワークを介した向こう側に人間がいて、その通話相手の顔表情・感情や動きを模して動くようなものは、一種の動画通話の代わりとも言えますし、またはこれは「アバター」という呼び方で表現されることもあります。
    それに対し、ロボットと対峙する人間との受け答えまでをAIが高度に認識・判断して行うものが、AIロボットというべきものでしょう。
    これらは仮に実態が電話であっても、人型ロボットの形態から感情移入を誘発でき、人々がAIロボットに対する愛着も生まれ、これらを介してコミュニケーション促進になる効果が期待できます。

    iPhoneやiPadに搭載されている「Siri」は、人と会話ができるロボット「チャットボット」としての一面ももちながら、音声認識や自然言語理解の機能を搭載し、ユーザーの要望に応えることができる「AIアシスタント」としても人々をサポートしてくれます。

    ■産業用ロボット

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    物を運ぶ、潰すといった単純作業だけでなく、AIを搭載した産業用ロボットは人間がプログラミングすることなく、学習機能を生かして難しい作業を行えるようになったり、不良品を見つけ出したり、ロボット自体の故障を予測できたりして格段に作業効率をあげて人件費削減や高品質な製品製造に大いに役立っています。

    従来の産業用ロボットも、もちろん生産性の向上には役立っていますが、定期的なメンテナンスや、ティーチング(産業用ロボットに目的の動作を教える)が必要で、それには専門的な知識や技術をもった人材も必要です。

    しかし専門的な知識や技術をもった人材不足から、なかなかロボットを導入するまでに至らない工場も少なくありませんでした。

    そこで産業用ロボットにAIを搭載することで今まで人が行っていたティーチングやメンテナンスの工程をAIが行うことで今まで以上に効率化し、簡単に行えることが可能となったことでAI搭載の産業用ロボットの導入はこれまで以上に進んでいくことでしょう。

    AIやロボットの業界で働きたい! どんな職業がある?

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    まず、AIロボットの開発や設計、制作に携わりたい場合は、ロボティクスを少しでも学ぶことが重要です。

    ロボティクスとは、「ロボットテクノロジー(RT)」や「ロボット工学」と言われ、ロボットの設計・製作・制御を学ぶロボット工学の一つの学問です。
    社会に役立つロボットを製作するために、機械工学・電気電子工学・情報工学といったさまざまな工学の知識を総合的に活用して研究開発を行います。
    しかし、ロボットに関わる仕事は、その研究開発や製造だけではありません。

    ここではロボット工学で学んだ先にはどのような仕事があるのか紹介していきます。

    産業用ロボットオペレーター

    産業用ロボットオペレーターとは動作プログラムをつくり、産業用ロボットに目的の動作を教えるティーチングを行う人のことです。
    このティーチングを行うためには基本的に資格をとることが法律によって義務付けられています。

    産業用ロボットは生産性を高め、格段に作業効率をあげることで人件費削減や高品質な製品製造に役立っていますが、出力の高いロボットは操作や扱いに誤りがあると大きな事故につながる恐れがあります。
    そのため、安心安全に事故や問題のリスクを低減させるために資格が必須です。
    基本的にと言いましたが、出力が80W以下の産業ロボットに限り、事故のリスクが低くなるため資格を取得せずに運用が可能になります。

    このティーチングに必須な資格とは労働安全衛生法が定めた「特別教育(産業用ロボットの教示等の業務に係る特別教育)」を受けることで取得できます。
    特別教育にはロボットに対して位置やスピードなどの動作を記憶させる「教示」とロボットのメンテナンスを行う「検査」の2種類があります。

    産業用ロボットオペレーターは、人ではできなかった作業を、ロボットに行わせることができ、作業効率の向上や人件費削減が実現できます。

    産業現場での人手が今後も減っていくこと、また特に海外の成長国でのニーズが高まっていくことが予想され、その点でまずは国内の現場で経験を積み、さらに海外に活躍の場を拡げて行くことが考えられます。

    また産業用ロボットだけではなく、今後さらにより広い分野でロボットが様々に導入され活用されていくことを考えると、そうしたロボットのオペレーター人材の必要も拡がっていくでしょう。

    例えば、災害の現場で人命を助けるレスキューロボット、病院や介護施設などで人を助ける医療・福祉ロボット、土木建設や農林水産業などで活用されるロボット、都市や地方の交通を将来的に支えると考えられる自動運転ロボット、など、様々な分野で活躍するロボットに、それぞれオペレーターが必要です。
    近年広く活用されているドローンの操縦オペーレーターは、その特徴的な一つと言えるでしょう。

    ロボット開発エンジニア

    ロボット開発エンジニアとは、ロボットの開発と設計を行うエンジニアのことです。

    ロボットの開発は、ロボットの感覚にあたる「センサー」、ロボットの頭脳にあたる「知能・制御」、ロボットの動作にあたる「駆動」の大きく3つに分けられて進められます。
    これらの要素技術のそれぞれに専門性が求められ、研究者やエンジニアとなっていく上では、ロボット全体を理解するとどもに、その中で特に自分は何を専門とするのかを意識して追究していく必要があると考えられます。

    似ている職種として、全く新しいロボットを開発・設計する「ロボットクリエーター」、ロボットの外観などデザインを考えていく「ロボットデザイナー」が挙げられます。プログラミングやメンテナンスまでトータルに関わるのがロボット開発エンジニアですが、これらのクリエーターやデザイナーはそうしたエンジニア全体の能力に加えて、独自のデザインセンスや創造性を持ち合わせた人を指すことが多いです。

    さまざまなタイプのロボットを生み出し、人々の生活を豊かにしていく仕事です。
    想像力や技術力に加え、これからの時代、常に最新の技術・情報を得るためにも、またロボット業界で世界に飛び出していくためにも語学力、コミュニケーション力も必要ですよ。

    AIエンジニア

    AIに関する知識に長けており、機械学習やディープラーニングといった技術を使ってさまざまなAIを世に生み出す仕事です。

    AIエンジニアになるためには、IoTの知識をはじめ、データ解析をし、AIを構築したり修正したりする上でもプログラミングスキルなど専門的な知識が必須となります。
    特にPython(パイソン)は多くのAI開発に使用されている言語で、まず習得しておいた方が良いでしょう。Pythonを基本として、他のプログラミング言語を応用して習得していくこともできます。

    これからますます発展していくAI業界は、AIエンジニアが不足しているといわれており、日本だけでなく世界中で求められています。

    ロボットシステムインテグレーター(Sler)

    ロボットシステムインテグレーターとは、ロボットSler(エスアイアー)とも言われ、ロボットを導入したい工場や企業と、ロボットメーカーの間に立って、ロボット導入をサポートする専門業者です。

    エスアイアーになるために必須な資格はありませんが、SIer協会の目指すSI人材育成のためSI検定(2020年より)が開設されました。ロボットシステムインテグレーション(ロボットSI)を行う上で必要な知識の習得レベル・技術の修熱レベルを測定するための検定試験です。

    エスアイアーは、既存・市販のロボットを導入、活用して目的(課題解決 )を果たすことができる人材で、企業側の課題を分析し、どのようにロボットをシステム化すれば一番効率よく運用できるかということを考える仕事です。
    プログラミングや組み立て、アフターケアまで幅広く対応します。

    産業の現場で用いられるロボットシステムについて幅広く知り、また導入される現場のニーズを的確に把握・理解し、ロボットや関連機器を適切に導入・配置して課題解決に導くのが仕事となります。

    これまでは産業用ロボットに長年関わった人が、セカンドキャリア的になる例が多かったのです。しかし、最新の機器類に興味を持ち、また現場の問題解決に積極的に取り組めれば、経験の少なさに関わらず取り組める新たなニーズをもった分野はまだこれから多く出てくるので、これからの若い人にぜひ考えてもらいたい領域です。

    特に、これまで狭義でのエスアイアーは製造業現場でのロボット導入でした。しかし最近では、工業製品よりも食品産業などこれまで人手に頼ることが多かった現場や、土木・建設、農業・林業、交通など、労働人口減少・高齢化の影響を強く受けている分野でのエスアイアーが今まさに希求されているところです。

    データサイエンティスト

    企業にはたくさんのデータが集まってきますが、そのデータを整理・分析し、活用できる人は多くありません。
    そこでデータサイエンティストは膨大なデータを有効活用し、企業がもつ事業戦略に役立てることができます。

    データサイエンティストになるためには、まずは統計学やビッグデータ、データベースに関する知識が必要になります。
    その他にも、情報工学やAIエンジニアのようにプログラミングの知識、ビジネスやトレンドなど幅広い知識、そしてマネジメントスキルまでも身につけておくことが求められています。

    また、データサイエンティストに似た職業でデータアナリストがあります。
    データアナリストの方が、データそのものの収集や分析を中心として取り組む意味に対し、データサイエンティストと言うと、それらのデータの生み出される背景を推測したり、データの活用を行い、社会やビジネスにおける問題の解決や、経営戦略などにつなげる意味合いが強いと思われます。
    どちらを選ぶかは、皆さんの好み次第とも思われます。

    ロボットについて、このようなデータサイエンスにどのように関わるかですが、最近のロボットでは、例えば環境認識センサとして良く用いられるLiDAR(レーザ式測域センサ、周囲に照射したレーザで周辺環境との距離を測り、3次元的な位置関係を計測するセンサシステム)で測られるPointCloud(ポイントクラウド)と呼ばれる点群データは3次元位置データの塊です。数千〜数千万の点群データを効率的に処理し、そこから物の形状、さらにはそこからそれが人なのか車なのか、建物なのか、を理解するAIを構築し、それに基づきロボットを動かします。

    このように、最新のロボティクスでは、データサイエンスが必須です。
    これから、ロボットを特に専門とした、データアナリスト、データサイエンティストが必要とされてくることは確実と考えられます。

    2024年開設予定「工学部・情報システム工学専攻/ロボティクス専攻」で学ぼう

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    麗澤大学では2024年4月に工学部を開設予定です。
    「テクノロジーに愛を」をスローガンに、人や社会をテクノロジーと共感でつなぎ、課題解決のデザインができるエンジニアの育成を目指します。

    工学部の専攻には、アプリケーションのつくり方や企業のシステム構築の方法などを学ぶ「情報システム工学専攻」とロボットとデータを組み合わせて社会に役立つモノをつくる「ロボティクス専攻」の2つの専攻があります。

    これらの専攻はそれぞれ独立ではなく、相互に密接に連携し、また各学生は両方の専攻や、さらには他学部の教員にも必要な時に助言・指導を得られるようにして、社会における様々な課題解決に役立てる人材を育成していきます。
    またそれを可能とするように、新しく建設される新棟ではそのための教育・研究環境を提供するような設計が考えられています。

    授業ではできるだけ多くの実践経験を積めるようなカリキュラムになっており、ITスキル、プロジェクト遂行力、人に寄り添うデザイン力、そしてそれらの知識と技術を社会に正しく使うための道徳・倫理も麗澤大学の工学部では学べます。

    AI、IoT、ロボティクスを含んだ最先端のデジタル技術やソフトウェア工学の知識やスキルを演習やPBL(課題解決型学習)などの実践的な形式で提供し、アイディアを形にする力を養成します。
    また、工学的知識にとどまらず、上記のように他学部の教育内容も機会を得られることで、社会・経済・文化・歴史・倫理を考える機会をつくり、多角的な視座と理解力もつけることが可能です。

    麗澤大学工学部ではこれらを備えることによって、麗澤大学工学部ならではの工学的知識とリベラルアーツ的要素を併せ持つ特色ある人材を育てます!

    まとめ:世界をより豊かに!AIとロボット業界はこれからも発展し続け、需要が高まる分野へ

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    AIやロボットの分野は、お互いが組み合わさりながらもこれからますます発展していく分野であり、今よりももっと人間に身近な存在になることは間違いありません。
    すでに、人手不足の解消や作業効率化など、さまざまなシーンで活躍しています。

    これからの時代では、AIやロボットを扱う人材の需要はますます増えていきます。

    AI、ロボットについて学び、世界をより豊かにする人材になりましょう!

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