浦田 和喜
ハードだから楽しい?英語劇グループが紡いだ80年以上の伝統
麗澤大学開学と同じ1935年に創設、80年以上にもわたり受け継がれてきた伝統ある英語劇グループ。日本を代表する俳優としても知られる田中邦衛さんも麗澤大学の卒業生で、英語劇グループ出身者の一人。ネイティブスピーカーが顧問を務める本格的な文化部として知られおり、モットーに「Strive to do better(さらなる向上を目指して奮闘せよ)」を掲げ、約30名の学生が熱心に活動しています。
取材当日、英語劇グループが日頃活動するキャンパス内小劇場「スモールシアター」へと足を運ぶと、快活な二人の学生がに取材陣をお出迎え。非常に礼儀正しく、丁寧な対応をしてくれただけでなく、機敏に活動する姿が印象的でした。
お二人に話を聞くと、演劇経験者のほうが少数派で、未経験者かつ英語が苦手という学生も毎年数多く入部しているとか。「英語で演劇」と聞いて、興味はあっても近寄りがたい雰囲気を感じている方も多いかもしれませんが、大丈夫です。
男女比や、外国語学部と経済学部の比率もおおよそイーブン。多様で幅広いメンバーがフランクに英語劇グループへの扉を叩いているようです。だからこそ、毎回、圧巻の公演が実現できる凄みの裏にある、学生達の日頃の研鑽が伝わってきます。
取材に応じた学生の一人である、4年生の浦田和喜さんの父親が、実は顧問のトリキアン先生。浦田さんは「だから入部したわけではないのですが(笑)」と入部の動機を語ってくれました。
浦田:高校時代は演劇部だったので、もともと演劇に興味がありました。ただ、麗澤大学以外の大学も視野に入れていて。それが高校3年次に、麗澤大学の大学祭(麗陵祭)でたまたま観劇した上演にものすごく感動したことから麗澤大学を志望するようになりました。クオリティの高さ、劇そのもののレベルの高さ。そして英語力。全てがすばらしかった。"ここで私も演劇がしたい!"と直感的に思って。"この英語劇グループのメンバーとして演劇と英語の両方を磨きたい"と麗澤大学に入学。そして入部に至りました。
一方、和智太誠さんは、大学2年から3年の冬までの2年間、部長を務めました。入部以前は「まったくの演劇未経験者でした」と話します。
和智:大学入学前は英語への苦手意識がとても強くて、はっきり言えば嫌いでした(苦笑)。でも英語への関心はありましたし、これからの社会では必須だと思っていました。私は経済学部の学生ですが、英語に近い環境にも身を置きたいと思っていました。英語劇グループを知ったとき、当時は"劇なら楽しく英語も覚えられそう"などと根拠なき期待を持ち、勢いで入部。決して楽ではありませんでしたが(笑)英語に四苦八苦しながらも、メンバーや環境に恵まれ楽しく活動できました。
英語劇の醍醐味「みんなで一緒に作り上げる」を味わって!
二名の学生の話に興味深く耳を傾けていたのが、同席した顧問のトリキアン先生。先生は「入部当初と1年ごとに経験を重ねてきた学生達の姿を比べると、見違えるほど変わっていくのがわかります。卒業の頃になると、誰もがかなりたくましく成長していますから」と目を細めました。
トリキアン:英語劇に興味を持ってくれた新入学生達には、入部してもっと演劇に意欲が生まれてくれることを願っています。英語劇の醍醐味は、"一緒に劇を作り上げること"。過度に英語への不安を感じてほしくないのです。
入部間もない1年生には、私自身、なるべく簡単で聴き取りやすいスピードで語りかけるように意識していますし、必ず3年生が1名、アシスタントディレクターとして1年生の傍にいますので、私が伝えたことでうまく聴き取れなかったことがあっても、先輩がしっかりフォローしてくれるので安心してください。
トリキアン先生が顧問に就任した1994年以来、25年間貫いてきたのが、何事も決して先生の一存で決めようとせず、上級生をはじめとする学生達と相談しながら進めること。そして、一人ひとりの状態やポテンシャル、得意不得意を考慮しながら、年間を通じてなるべく平等に機会が巡るように配役していることです。「"1つのことをみんなで一緒にやり遂げる"大切さを、参加する全員の学生達で共有するためだから」とその意図を力を込めて語ります。
トリキアン:英語劇は、舞台上の配役だけでなく舞台作りも学生達が担います。照明や音響、衣装、大道具、小道具、舞台配置、ポスター、舞台装飾といった役割が全員に割り振られていきます。こうした多様な役割に直接触れながら、今まで気づかなかった自らの長所を新たに引き出す場所にもなってほしいと思っています。そして活動を通じて"自信(Self-confidence)"をつけてほしいのです。