教職員
2017.01.10|最終更新日:2022.03.31|

異文化と出会い、自分の可能性を広げてほしい

異文化と出会い、自分の可能性を広げてほしい
岩澤 知子
国際学部 国際学科 教授、麗澤オープンカレッジ カレッジ長
大阪府生まれ。大阪大学人間科学部卒業後、野村証券に入社。その後、夫の米国留学を機に自身もボストン大学大学院に留学、宗教哲学を専攻。博士課程修了後、同大学宗教学部のティーチング・フェローを経て帰国。
目次

    一冊の本との出会いが、私の人生を変えた

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    私が通っていた大学の学部では、3年生に進級する時に教育学か社会学か行動学かのいずれかを選ぶのですが、実は入学当初から「教育学だけは絶対、選ばないな」と思っていました。というのも、「自分の子どもを育てるだけでもきっと大変なのに、他人の子どもを育てる責任なんて、とても負えるわけがない!」と思っていたからです(笑)。

    ところが、2年生の後期に出会った一冊の本が、私の教育者への扉を開いてくれました。それは子安美知子さんが執筆された『ミュンヘンの小学生』という本で、そこには"生徒が持っている素材を引き出し、育て輝かせていく手助けをするのが教師である。教育とは芸術なのである"と書かれていたのです。

    その言葉に強く心を揺さぶられて、絶対選ばないと思っていた教育学を選択したのでした。

    「外国語を学ぶ」=「それぞれの民族の世界の見方を学ぶ」

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    私の授業をひとつ紹介しますね。「比較文明文化概説」といって、文明や文化の基礎となる宗教に焦点をあてて、様々な文化のあり方を比較しながら、各民族の世界観の違いや、その比較から明らかになってくる日本人の宗教的意識のあり方などを学んでいく授業があります。「宗教」と聞くと、自分には関係ないと思っている学生も多いのですが、私の授業を一学期間受けると、学生たち自身が、いかにふだん宗教的なものに取り囲まれて生活しているかに気づき始めます。私はその驚きに満ちた様子を見るのが大好きなんです!

    また異文化を学ぶ上で欠かせないのが、外国語ですね。麗澤大学は外国語教育に力を入れていますが、私にとって外国語とは「未知の世界への入り口」であると同時に、「それぞれの民族の世界の見方」を教えてくれるものです。一般に日本人は、自分が考えていることをあまり言葉にせず、お互いの気持ちを察することを美徳としますよね。それに対して、たとえばアメリカ人は、とにかく弁が立つ。これでもか、これでもか、と徹底的に言葉を使って論じ合います。そこで求められるのは、他人の意見にただ同調するのではなく、自分と他人との違い、言いかえれば「自分のオリジナリティー」を、どれだけきちんと言葉にできるかです。

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    最近の日本の学生さんは、ある意味、どんどん賢くなっていて、まわりの空気を読みながら、他人とぶつかり合うのを上手に避けようとしますよね。でも実は、「違い」を避けることは、自分の成長にはつながらない。様々に異なる意見が飛び交う場に身を置いてこそ、生き生きとした知的刺激に満ちた体験ができ、自分の伸びしろも増えていくと思うのです。そのためにはまず、他人の考え方と自分の考え方との違いを受け入れて尊重することが第一歩。そうすることによって自分の新たな視野が広がっていくようなコミュニケーション体験を、学生の皆さんには、どんどんしてほしいですね。

    私はアメリカに留学している間、「日本人としての自分」についてよく考えることがありました。世界を知ろうとすればするほど、「日本とは、日本人とは、いったい何者なのか」を知らなければならないと実感したのです。私が今、研究している「日本神話」や「神道」も、この思いがあったからこそ出会ったものです。「日本人としての自分を知る」ということは、これからグローバル社会で生きていく皆さんにとって、きっと必要になるはずです。

    麗澤大学には留学を希望する学生が多く、たいへん心強く思います。これから皆さんが学んでいく外国語とは、単なるコミュニケーションの道具ではなく、「異文化を理解するための扉」なのです。異文化理解というのは、それほど簡単なことではありませんが、それに挑戦しぶつかっていくことは、とても刺激的で、自分の世界を大きく広げてくれます。留学して外国語を思う存分勉強することと合わせて、ぜひ留学先の宗教文化と日本との違いにも興味を持って視野を広げ、新たな扉を開いてもらいたいですね。

    あなたの中の原石を「宝石」にしたい

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    麗澤大学の学生の特徴は、とても素直で探究心があり、世界に出たいという強い思いを持っている人が多いということです。さらに、学生と先生との距離が近くアットホームな雰囲気に包まれていて、学習指導に限らず、生活面についても気軽に話し合える学風が生きているのも、麗澤大学の素晴らしいところですね。

    私は、勉強が苦手だと思っていたり、自分が何をしたいかわからなくて悩んでいるような学生さんも、みんな大きな可能性を内に秘めていると信じています。

    学生の皆さんが持っている様々な可能性を引き出すこと -- それこそが、教育者としての大きな喜びです。あなたの中に今まで気づかずに眠っていた原石を「宝石」にするお手伝いを、ぜひ私達にさせてください。ここ麗澤大学で、皆さんにお会いしてお話しすることができる日を、今から楽しみにしています。

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