大学の授業
2017.10.30|最終更新日:2020.09.24|

【大学の授業シリーズ】人生に必要な「お金」のこと、真剣に学びませんか?~「FP実務演習(初級)」~

【大学の授業シリーズ】人生に必要な「お金」のこと、真剣に学びませんか?~「FP実務演習(初級)」~
上村 昌司
経済学部 学部長、会計ファイナンス専攻 専攻長
東京工業大学大学院情報理工学研究科数理・計算科学専攻博士後期課程修了。その後、数学の専門性を活かしながらファイナンスに専門を移し、研究に従事。
目次

    金融業界に必須の「資格」を取得しよう

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    会計ファイナンス専攻は、「会計」と「ファイナンス(金融)」の両分野について専門的に学べる専攻です。卒業後に「金融業界」もしくは企業の「財務・経理部門」で働きたい人、税理士や国税専門官などの資格に挑戦したい人には最適の環境が用意されています。また、同専攻では、4年間で「日商簿記」と「FP(ファイナンシャル・プランニング)技能検定」の2つの資格取得を目指す「ダブル・クオリフィケーション」制度も導入。基礎からじっくりと学べるほか、誰もが不安なく、将来を見据えた実践的な授業も数多く取り入れた実学志向の高いカリキュラムが組まれています。

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    「FP実務演習(初級)」は主に大学3年次で受講し、FP3級の取得を目指す授業です。FP3級の試験は、年に3回。そのうち9月と年明けの1月に行われる試験に向けて、学力の向上を図りながら、学生自らが主体的な姿勢で勉強が進められるように教壇で上村先生が熱弁をふるいます。

    授業開始直後、最初の5分間で小テストが行なわれます。前回の授業の復習を兼ねながら、本番の試験を意識して限られた時間で即座に判断する瞬発力を養うのが目的です。小テストが終わると、すぐに答え合わせ。このあたりからクラスの雰囲気は一気に引き締まっていきます。答え合わせが終われば、いよいよ本格的な講義の開始です。

    板書が多い正統派授業

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    授業の進め方は正統派。全般的に、黒板に要点を書き出しながら適宜内容を解説していくスタイルです。上村先生の話を真剣に聞きながら、板書するのに必死な学生の姿が印象的です。大学の授業はスライドを使ったり、あらかじめ用意されたレジュメを配布したりと、むしろ現代は板書を控える傾向が主流になりつつある中で、なぜ板書を中心とした授業スタイルなのでしょうか?

    「学生たちは"面倒だな"と思っているかもしれません。私も、書くのが結構しんどいですから(笑)。ですが、どのように要所を捉えて要点としてまとめていくのか。板書を通じてコツを掴んでほしいので、あえて行なっています。
    聞き流すのではなく、しっかりと手を動かして書くことは、その場で頭に知識を入れていく重要なプロセス。授業を通じて勉強方法を身につけてほしいと考えています。何せ、国内外の状況の目まぐるしさと密接に関わる銀行などの金融業界は、社会人になってからも常に勉強しなければ太刀打ちできない業界。学生のうちに、自ら能動的に勉強する癖をつけてほしいんです」

    もっと知ってほしい、個人にまつわるお金のこと

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    大学に入学する場合、どれほどのお金が必要だと思いますか?大学に進学し卒業したら、大学に進学しない人の場合と生涯賃金にどれほどの違いが出てくるのでしょうか?これは皆さんにも関係のあるお金の話。人生で避けては通れないことなのです。

    「日本ではお金の話と言えば金融が中心で、パーソナルファイナンスと呼ばれる、個人のお金の話について学べる環境がまだまだ少ない。生まれてから死ぬまでのお金について学ぶことは、金融機関の仕事に携わらなくても、皆さんが知っておくべきこと。だからこそ、学生には意識して話をしています」

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    授業の主たる目的は資格取得ですが、その内容としてはお金にまつわる基礎を学ぶことにつながっています。この日の授業では、不動産に関して取り上げていました。法律によって敷地には用途の指定がなされています。要は自分の土地だからと言って好き勝手に建物を建てることはできないのです。多くの学生にとっては、初めて聞く内容が目白押し。そこで上村先生は、日常生活といかに密接に関わっているかを意識できる話を盛り込むように工夫するそうです。「今日の帰り道では、授業の話を思い出しながら、ちょっといつもと視点を変えて家を見てください。敷地に隙間なく建っている家がありますか?そうです、ないはずです。

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    なぜないのでしょうか?それはそんな地帯があったら"もしも"の際に対処できないからですね。これにもきちんと法律として"防火地域"や"準防火地域"などと定められているわけです」

    今は"不動産"と言われてもまだピンとこないかもしれません。しかし近い将来、自分自身の家族ができて「さぁ家を建てよう!」と思い、土地を買う時には、この知識が役に立つと思います。実はとても身近な学びなのです。

    お金の話、嫌いにならないで!

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    上村先生は、「お金の話を嫌いにならず(笑)、ぜひ興味を持ってみてほしい」と呼びかけます。「人生においてお金は必要ですし、お金の問題は避けては通れません。もちろんビジネスの世界でもお金は必須です。授業で得た知識を活かして、社会の荒波にきちんと対処できる大人へと成長してほしいですね」

    そして授業に託す真の願いは、自分で目標を設定して勉強できるようになることだと先生は考えます。「学生時代に、どんどん勉強への喜びを感じてほしい。資格の勉強はそのきっかけになりやすいと思います。コツコツと積み重ねると成果が上がりやすいので、本人のやる気につながりますし、報われたことへの嬉しさは格別でしょう。

    その気持ちが味わえるようになると、社会に出て働くこととなっても、常に素直な気持ちで継続的に勉強できるはずです。特に金融機関には昇格試験等が多々あり、常に勉強を続ける必要があります。今のうちからひたむきに勉強することに慣れておくことはとても重要だと思います」

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