

<取材にご協力いただいた陸上部員の皆さん>
(写真左から)
<2019年3月卒業>
小西 凌さん(滋賀学園高等学校出身、麗澤大学経済学科:マネージャー)
田中 匠さん(栃木県立那須拓陽高等学校出身、経営学科:選手)
西澤 健太さん(八千代松蔭高等学校出身、経済学科:選手)
富塚 美幸さん(千葉県立幕張総合高等学校出身、外国語学科:マネージャー)
みんなで喜びを分かち合いたい!そのためにベストを尽くそうと決意しました
2017年4月、7年間コーチを務めてきた山川達也さんが監督に就任し、新体制でスタートを切った麗澤大学陸上競技部。10月に迎えた箱根駅伝(東京箱根間往復大学駅伝競走)予選会では昨年の22位を大きく上回り、過去最高の15位を獲得する快挙を成し遂げました。劇的な展開を見せた今シーズンを、山川監督と、来年度の陸上競技部をリードするメンバーと振り返ります。
――今年4月、監督に就任された時のチームはどんな状況でしたか?
山川監督:部員はすごく不安だったと思いますし、私自身、かなりのプレッシャーを感じていました。箱根駅伝出場は麗澤大学の最大の目標。結果を求められる状況で、監督未経験の自分がその責任を果たせるのかと。でもこれまでの7年間、予選会の後に心から喜べたことが一度もないんですね。一生懸命頑張ってきて良かったと心からみんなで喜びたい。そのためにベストを尽くそうと、腹をくくったんです。
――そこから、どのようにチームワークを築いていったのでしょうか?
山川監督:これが、なかなか思うようにいかなかったんです。選手はやる気がないわけではなく、うまく力を出しきれない状況が続いて、このペースでは前年を上回れない...と危機感がありました。ただ、一番苦しんでいるのは選手達なのもわかっていたので、踏ん張りどころだなと思いました。
――どのタイミングで流れが変わったのでしょうか。
山川監督:夏合宿です。合宿に入って1週目、部員達を集めて「本当にこのままでいいのか?」と問いかけました。今の状況なら、去年と同じ22位にはなれるかもしれない。でも、それでいいのかと。予選会も迫っている中、私も真剣勝負でしたから!
――監督の言葉を、みなさんはどう受けとめたのでしょうか。
田中さん:私自身、4月からうまくペースに乗れなくて不安と焦りでいっぱいでした。でも、監督から「22位」とリアルな数字を言われた瞬間、目が覚めたというか。去年と同じは絶対にイヤだと思ったし、監督の本気も伝わって、もう不安とか言っていられないと、気持ちを全部入れ替えたんです。そこからです、走れるようになったのは。他のメンバーも同じ気持ちだったと思います。
山川監督:まさにその直後から、選手達の顔つきも練習の出来具合もガラッと変わって、あれっ!?と私も思わず目を見張るほど。
――練習内容も変えたりしたのでしょうか?
山川監督:メニューは特に変えていなくて、それより重視していたのは、選手への言葉がけです。これはコーチ時代から変わらないことですが、選手の力を伸ばすには、どのタイミングで、どんな言葉をかけてあげればいいか、いつもそればかりを考えています。伸びるきっかけを探して、走りでも練習への取り組み方でも、少しでも良くなったことを見つけたら、タイミングを見計らって本人に伝えるように心がけています。
西澤さん:私も合宿中、朝練習の準備を誰よりも早く開始していたのを監督に褒められて、こんな小さいことまで気に留めて褒めてくれるなら、もっと頑張って監督を驚かせたいと思いました(笑)。
堂々とガッツポーズができるように
――10月の予選会。スタート前から手応えはあったのでしょうか?
山川監督:夏合宿から、これまでにない良いペースできていて、タイムからも去年を上回れるとは思いましたがまだまだ不安でした。ただ、当日、スタート地点での後悔はなかったです。スタートしてしまえば監督は何もできません。「ペースをあげろ!」「キープしろ!」と声をかけることもできなくて、選手が自己判断でゴールまで走りぬくしかないのです。ですからスタート地点までに、選手に伝えたいことは全部伝えきる、スタートで後悔だけはしないように――そんな想いで4月からずっと選手と向き合ってきました。その目的は果たせたと思います。
――結果がわかった時はどんな想いでしたか?
山川監督:現地で15位までは大学名を呼んでもらえるのですが、お恥ずかしいことに、15位で麗澤大学の名前が呼ばれた時、思わず「やった!」と小さくガッツポーズ(笑)。名前を呼ばれたのは初めてだったので...。周りには本選に外れて悔し泣きをしているチームもいて、これで喜んではいけないと、一瞬でガッツポーズを引っ込めました(笑)。
田中さん:私は、15位に入ったことは嬉しかったのですが、残念なことに今年はケガで出場メンバーから外れてしまい、過去最高タイムのメンバーに入っていたかったというのが、正直な気持ちです。
小西さん:私も正直、嬉しかったですが、それはほんの一瞬でした。今のままでは本選出場は厳しいので、本当の勝負はここからだと身の引き締まる思いがしました。
山川監督:まさにその通りで、今年、本選に大きく近づけたこと、チームのレベルが確実に上がってきていることは確かですが、10位とは8分ものタイム差があります。部員みんなの力でその差を埋めて、来年こそは予選を突破し、堂々とガッツポーズを振り上げたいです。
誰のこともあきらめない。ここでは1人ひとりが最後まで主役だから
――部員の皆さんは、今のチームをどのように感じていますか?
富塚さん:麗澤大学陸上競技部の一番の特長であり強みは、監督と選手、マネージャー、みんなが力を合わせてチームを作っていけるところだと思います。今年は特にチームワークが良くて、それが結果につながったと思います。
小西さん:マネージャーの私達にも監督やメンバーから期待されていることが伝わるので、やりがいがあります。
山川監督:マネージャーにはコーチ的な役割も担ってもらっているんです。彼らには、選手への接し方や今後の方針についても意見を求めたりして、とても頼りにしています。この場を借りて、ありがとう!
西澤さん:麗澤大学陸上競技部は、強豪校の半分にも満たない少人数チームなので、タイムに関係なく、監督が一人ひとりを本当によく見てくれます。自分が必要とされている実感があるから、苦しい時も頑張れる。誰もが成長できるチャンスがあるのは、麗澤大学ならではだと思います。
山川監督:私としては、全員に伸びてほしいんですよ。4年間最後まであきらめないで、1人ひとりの成長を見届けたい。例えば、今回の予選会でメンバーに選ばれた4年生は、高校時代のタイムは決して速くなかったけれど、大学の4年間あきらめることなく続けてきたからこそ、予選会を走るまでに成長することができた。予選会直前も、私が一番気にかけていたのは、実は予選会のメンバーに入れなかった一人の選手です。大学入学後、ケガでずっと競技会に出られなくて、一度も正規のユニフォームを着ることが出来なかった彼に言葉をかけ続けて、結果、彼も予選会後の競技会で自己ベストを出すことができました。選手をふるいにかけ、上位者だけで闘う方法もありますが、麗澤大学は違う。一人ひとりが最後まで主役です。
――切磋琢磨しあう部員同士、普段はどんな雰囲気ですか?
小西さん:練習が終わり寮に戻れば、みんなと遊んだりしゃべったり、とても楽しいです。
山川監督:毎晩うるさいんだけど、何してるの? (笑)
一同:え...?
――仲の良さが伝わります(笑)。それでは最後に、監督から高校生の皆さんにメッセージをお願いします
山川監督:一生懸命に打ち込んだこと、苦しい中で頑張ったからこそ得られるものが必ずあります。目標に向かって努力すれば、誰でも必ず成長していけることを、大学の4年間でたくさん経験してほしい。友情や思い出、目標に向かってあきらめずに取り組んでいく力を体得して、社会に羽ばたいていってほしいと願っています。