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2013/04/12

ミズーリ大学のCenter for Character & Citizenship (品性・市民性センター)とともに品性教育に関する共同研究

 4月の8日から10日にかけて米国における品性教育への理解を深めるため、ミズーリ州のミズーリ大学セントルイス校のCenter for Character & Citizenshipを訪問した。同センターと本学の道徳科学教育センターはすでに学術交流に関する了解覚書(MOU)を締結している。今回のホスト役を引き受けてくださったのは教育学部教授のバーコビッツ博士(Marvin W. Berkowitz:Sanford N. McDonnell Professor of Character Education, UM System Thomas Jefferson Professor, Center for Character and Citizenship)である。目的は、品性教育のモデル校を視察するためと、本学の品性教育の評価法についての意見交換をするためである。

 前者については同行した本学の水野修次郎教授の詳しい報告があるので、ご覧いただきたい。その日の夜はセントルイス大学学長主催の歓迎晩餐会へ招待していただいた。参加者はジョージ学長ご夫妻、バーコビッツご夫妻、バスル教育学部学部長ご夫妻、レイフィールド副学長で、同大学の執行部が家族ぐるみで歓迎していただき、心から感謝している。ジョージ学長は著名なナノテクノロジーの化学者でありながら、ジャズピアニストでもあり、会場となった会員制クラブのセントルイス・クラブのピアノでジャスを演奏し、友人のシンガーがそれの伴奏に合わせて美声をホールに響かせたのには驚いた。ちなみにご令嬢のバーバラさんも音楽の教授で作曲家である。

 後者については、私と水野教授で本学の行っている道徳教育の概要について説明し、ミズーリ大学側からは、バーコビッツ博士を中心にCenter for Character & Citizenshipの副センター長のビア博士、カウンセラーのリストン博士、教育学部の評価の専門家のカップ博士がそれぞれ専門の立場から、品性教育と道徳教育の評価法について意見交換をした。今後は麗澤のmoral competency standard策定に向けて同センターも協力していただくことになり、大いに手ごたえを感じた訪問であった。


ミズーリ大学主催、品性教育のモデル校視察報告

                                                    麗澤大学 教授 水野 修次郎       


 2013年4月8日、今日は、セントルイス地区でのキャクラターエデュケーション(徳性のある人間になるように教育する人格の教育)のモデル校になっているRidgewood Middle School(中学1年生と2年生の公立中学校)とSaint Louis Charter School(小学校1年から中学2年までのチャータースクール)を訪問した。チャータースクールとは、公立の学校であっても、独自のスクールカラーを出せる学校のことです。


Ridgewood Middle School

 15年前のRidgewood Schoolは、授業が成り立たないように荒れた学校で、学生の成績はひどく悪いものでした。そこへ今春まで校長であるChristine Pestlorさんが赴任しました。彼女がまず始めにしたことは、ZAP(Zeros Aren’t Permitted)というプログラムで、宿題をしてこないことを認めないという方針の徹底でした。昼食までに宿題を提出しない学生は、昼食を校長とともに食べることになるという方針の徹底です。友達と昼食を食べられないということは、学生にとってはつらい処罰になります。校長が宿題の提出を徹底させる責任を引き受けたことになり、見違えるように宿題の提出がよくなりました。

 次に、授業の出席をよくする方法を徹底させました(truancy code)。授業の出席は、法律上の義務でもあるので裁判所の判事の協力を得て、出席の徹底を強力に推進しました。

 3番目にしたことは、教師をエンパワーすることです。いままでのRidgewood学校は、評判の悪い学校であったので、教師として必ずしも適さない教師のたまり場になっていました。教師に改革を求めたところ、47人中20名の教師が学校を去ることになりました。残った教師と新しく赴任したやる気のある教師たちには、それぞれの特性を生かし、さまざまな教育プランを提出させ、その実行を援助することによってユニークな授業が生まれました。いくつか紹介すると、Teen leadership(リーダーシップの発揮)、Character council(生徒が生徒に品性教育をする), Aftershock(さまざまな困難を体験した女子学生のための特別授業)、 ImPACT(Aftershockの男性版)が誕生しました。

 このような努力によって、学校は秩序を回復し、学生の学力も見違えるように向上しました。実際に見学してみると、学生のリーダーシップが発揮されていて、学生によるキャラクターエデュケーションやリーダーシップの発揮、発言や発表の立派な態度、静かな教育環境にはキャラクター教育の威力を感じました。


Saint Louis Charter School

 Saint Louis Charter Schoolは2000年に創立された新しい学校です。教頭のJulie先生の説明によるとキャラクタープラス(Character Plus)というプログラムに従い、前に述べたRidgewood中学校のように、服装の規定の作成、授業の出席率を高める、学生の意見を受けいれ、学生のリーダーシップを発揮させ、学校の運営に学生を参加させるなどの、民主主義アメリカならでわの人格教育を推進していました。小学校2年生と3年生の授業を参観しましたが、児童は落ち着いて、課題に取り組んでいて、歩き回る子どもはいませんでした。児童や生徒は、とても行儀よく、挨拶やドアでの出入りは他の人のためにドアを開けて待つ、などの基本的な生活習慣がよくできるのには感心しました。



 この2校はともにNational Character Schoolに選出された優秀校として表彰されています。ともに、学生の入学待ちリストを多く抱えた人気のある学校です。廊下や教室には、学生が書いた徳目、尊敬、ケア、責任などの標語や、さまざまな偉人や英雄の説明、さらに個々の学生を大切にするという意味で、それぞれの最近の出来事を記事にして壁新聞、あるいは教室の入り口には担当教師の標語やポリシーの記述などが貼られており、学校全体の環境が徳や人格を中核にしたものになっています。子どもたちは人格育成を中核とする学校環境の中で生活することにより、自然な方法でそれぞれの望ましい徳目を身に着けていきます。

 この学校見学を計画実行しているのがMarvin BerkowitzeというMissouri大学の教育学部教授です。セントルイス地区でキャラクターエデュケーションが効果を上げている強力な指導者の一人です。教授は、もう少し効果的な学校教育を推進できる方法があるのに、多くの教師はそれを知らないので、この2校のような成功例を実際に見て、勇気を得てほしいと述べていました。

 アメリカの学校は、騒然としていて、落ち着きなく、学習も成立していないのではと思っている日本人も多いと思います。しかし、キャラクターエデュケーションが実際に威力を発揮し、秩序ある礼儀正しい児童・生徒を見ると、何か本当の学校のあるべき姿を見たように思いました。アメリカの学校には、多文化社会、貧困、いじめ、家庭教育力の弱体化などのさまざまな挑戦すべき課題があります。しかし、まじめに取り組み、創意工夫し、徳や人格を育成することを中核にした学校が存在することに勇気づけられました。