『君と宇宙を歩くために』泥ノ田犬彦 著，講談社　

　講談社のマンガサイト「＆sofa」で連載されている泥ノ田犬彦さんの作品で、マンガ大賞2024の受賞作です。マンガ大賞は、書店員を中心とするボランティアで構成されたマンガ大賞実行委員会が選考しています。

　高校生の小林大和さんは、授業には出ているものの頭の悪いヤンキーとみなされています。アルバイトをしていますが、仕事が覚えられず同じミスを繰り返してしまって長続きせず、点々とバイト先を変えています。「ほかの人は簡単そうにやれるのに、どうして自分はできないんだろう。覚えられないんだろう」という悩みを抱えています。そんなとき、クラスに転校生が編入してきました。転校生の名前は、宇野啓介さん。

　宇野さんは、話す声がやたら大きく、自分の行動の手順となるミニノートがないと動けません。ノートには、例えば朝することとして「起きたら布団をたたむ」「靴下をはく」「うがいをする」などが順番として書かれています。宇宙に憧れをもつ彼は、ノートのことを「テザー」だといいます。テザーとは、宇宙飛行士が宇宙空間で作業をするときの命綱のことです。「人が多いところは苦手」「複数のことを同時に行えない」という宇野さんに興味をもつ小林さん。宇野さんのノートの一番新しいページには「学校でこまったことがあったら友だちの小林大和に相談すること。悩みを話す！！」と書かれています。小林さんの手によるものです。

　二人は、宇野さんの大好きな宇宙や星について語り合ううち廃部寸前の天文部に入ろうと意気投合します。そこで、顧問の先生や先輩などとも交流を深めていきます。

　他の人が"普通"にできることが苦手で、それでも色々工夫して、なんとかできるように克服をしていこうとする高校生たちが、お互いを思いやって成長していこうとする友情の物語です。

　学生相談室となりのこころの休憩室に所蔵しています。まだ１巻しか発行されていませんが、今後が楽しみなストーリーです。ぜひ、読みにきてください。

　　学生相談室受付　寺本敬子