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平成27年度 卒業式告辞

本日ここに、平成27年度、麗澤大学学位記授与式、ならびに別科日本語研修課程修了式を挙行するにあたり、麗澤大学を代表してお祝いのご挨拶を申し上げます。
 まずは、高いところからではございますが、公私にわたり御多忙の中、また、お足元の悪い中、多数のご来賓をはじめ、関係各位のご臨席を賜りましたことに対し、衷心より厚くお礼申し上げます。
 次に、卒業生、修了生の皆さん、本日は誠におめでとうございます。また、これまで皆さんを支え、この日を待ちわびておられたご家族の皆様のお喜びもひとしおと思います。心からお祝いを申し上げます。
 さらに後援会、麗澤会をはじめ、多くの関係者の皆様方には、日頃から本学の教育・研究活動に対し、深いご理解とご支援を賜っておりますことにも、厚く御礼申し上げたいと思います。卒業生および修了生の皆さんがめでたく喜びの日を迎えられましたのも、数多くの恩人の方々のお陰でございますので、この機会をお借りし、ともに心より感謝の気持ちを捧げたいと思います。

さて、今年度は、大学院言語教育研究科と国際経済研究科・経済研究科では合計4名に博士の学位を、合計27名に修士の学位を、外国語学部と経済学部では合計524名に学士の学位を、別科日本語研修課程では35名に修了証書を授与いたしました。したがって、本年は、総数590名の卒業生と修了生を送り出すことになります。さらに、海外の提携校から留学されている特別聴講生も19名が修了されました。
 本日、卒業および修了された学部生、大学院生、別科生、合わせて590名の中には、99名の外国人留学生が含まれております。これに特別聴講生を含めますと、出身は11の国と地域、総勢118名に及びます。自国と異なる言語、文化、習慣の壁を克服して見事学業を成就された留学生の皆さんのこれまでのご努力に対して深く敬意を表します。
 本日、立派に学位を取得された皆さんの卒業を祝福して、3つの餞の言葉を捧げたいと思います。

 その第一は、最近私が特に興味を惹かれたものの中に、アメリカの有名なハーバード・ビジネス・スクールで経営管理論を専門とするクレイトン・クリステンセン教授の印象に残る体験談があります。ハーバード・ビジネス・スクールとは、皆さんもご存知のように、ハーバード大学の経営大学院で、世界中から優秀な学生900人ほどをよりすぐって集めている超一流のビジネス・スクールです。その教授が、これだけはどうしても頭に入れて教室を巣立ってほしい、卒業してほしいと思うことがあるそうです。そして授業の最終日に学生たちに3つの質問を投げかけ、答えを求めるそうです。皆さんは、どのような質問だと思いますか。その質問は、高度に体系化されたマーケティング論でも、経営情報シムテム論でも、競争戦略論でもありません。それはとてもシンプルな質問です。その一、「どうしたら幸せなキャリアをしっかりと歩めるか」、その二「どうしたら家族との関係をゆるぎない幸福の源にできるのか」、その三、「犯罪者にならないためにはどうしたらよいのか」です。この最後の質問はちょっと意外な感じがしますが、クリステンセン教授の同級生で、優秀なオックスフォードの大学院生に与えられる国際的フェローシップのローズ奨学生32人のうち、2人が服役しているという事実が、教授にそのような質問をさせるのでしょう。その1人は、2001年、全米有数の大企業であったエンロン社が粉飾決算で倒産しましたが、そのいわゆるエンロン事件で有罪となったジェフ・スキリング元CEOだそうです。たとえ超一流の大企業であっても、モラルがないとガソリンの切れた高級車と同じで、廃車されることになるのです。

そして残りの質問、幸せなキャリア形成と家庭の幸福ですが、そのヒントとして、臨床心理学者のフレデリック・ハーズバーグの言葉を紹介しているのが注目されます。「人生で強い動機づけとなるのはお金ではなく、学習し、責任の中で成長し、他者に貢献し、成果を認められる機会である」と。言葉を換えれば、そのような機会を職場でも家庭でも努力して創造してゆくこと、それがもっとも尊い仕事や家庭生活をなすためのマネジメントだということです。

本学では、道徳をよりよき他者との関係性ととらえ、道徳は家庭から、経済は道徳から、という建学の精神にもとづき、家庭の中で、あるいは仕事を通して他者とのよりよき関係性を構築すること、それによって自分の品性の向上を目指すことを人生の目標に掲げています。ハーバード・ビジネス・スクールの優秀な卒業生でも不幸に陥っているのは、このような人生目標をマネッジメントの中心に置かず、自分の時間や才能やエネルギーを浪費しているからだとクリステンセン教授は述べています。どうか皆さんも、卒業に際し、この言葉を心に刻み、幸せなキャリア、幸せな家庭、幸せな人生を築いていただきたいと思います。

皆さんの限られた時間とエネルギーと能力をどう配分し、どう活用するかの意思決定が、皆さんのこれからの人生の戦略と皆さんの幸福な生き方を決めることになるのです。それを考えるのは、もっと後になってからで良いのではないかと思う人がいるかもしれませんが、卒業後は仕事、家庭生活、子育てなどで、人生はますます忙しくなる一方です。そういう日々の忙しさに流されやすい状況だからこそ、今まで以上に、人世に明確な目標を持つために、人生の意味について考える時間、そして自分の心と対話する時間をもっていただきたい。仕事での成功は人生の目標を達成する一つの手段でしかない。しかし、目標がなければ、人生は空虚なものになりかねないのです。

二つ目は、本年は麗澤大学の創立者廣池千九郎生誕150年という記念すべき年にあたるということです。皆さんが、このような節目の年に本学を卒業されるのも、単なる偶然以上の巡り会わせを感じます。先程申し上げたこととまさに関係するのですが、創立者は、大正から昭和初期にかけて、お金儲けという経済面や物質面だけではなく、人間の品性や精神面も大切な資本と考えました。そして、経営の基礎として道徳を大切にすることで、安心で幸福な生活はもとより、企業の永続や繁栄も享受できるという道経一体の思想、すなわち道徳と経済は一体であるという考え方を提唱しました。このようなコンセプトは、混迷の度を深めている現代社会でこそ再評価されるべきと申し上げたいのです。というのも、コンプライアンスやCSRなどの企業倫理の重要性が声高に叫ばれているのとは裏腹に、アメリカに限らず、日本でも、我が国を代表するような優良企業で不正経理が発覚したり、食品の偽装問題がマスコミを賑わしたりと、企業の不祥事が後を絶たないからです。先ほどハーバード・ビジネス・スクールの話をしましたが、有名な大学を卒業したからといって、立派な学位を得たからといって、幸せな生活が保証されているとは限らないのです。もちろん、成功は幸福の重要な条件ではありますが、成功と幸福とは同じものではありません。いかにして信用を築いていくか、いかにして徳を養うべきかを、いつも自分自身に問いかけることが必要なのです。

 そのような現代社会における創立者の精神を再認識するために「道経一体の経営で永続への道を切り拓く」という共通のテーマのもとに、今年は全国3会場で姉妹法人である公益財団法人モラロジー研究所と廣池学園との共催のシンポジュウムを開催いたします。第1回は6月19日、九州福岡のホテル日航福岡で、第2回は11月13日、東京のハイアット・リージェンシー東京で、第3回は来年の3月5日、大阪のシティプラザ大阪を会場にして盛大な催しを計画しています。その頃、皆さんは実社会で立派な社会人として活躍されていると思いますが、そのような皆さんのお顔を是非とも拝見せてください。大歓迎します。それを機に、今一度、働くとはどういうことなのか、社会人・家庭人として幸福とは何であるのか、そしてどうしたら豊かな人生を築けるのかをともに考えてみませんか。

三つ目は、卒業してから、皆さんと本学とをつなぐ麗澤会のお話です。これは日本人学生の皆さんはもとより、留学生の皆さんにもお伝えしたいことでもあります。本学は、グローバル時代を迎え、海外の大学と学術的・教育的コラボレーションを積極的に展開して参りました。昨年度から、廣池博士生誕150年記念のプレ行事として、すでに海外の提携校とアカデミックなコラボレーションを展開しています。たとえば、昨年の10月に、アメリカのワシントン州にあるセントマーチンズ大学で“The Global Community”という全体テーマのもとで共同シンポジウムを開催しました。その前の7月には、ドイツのイエーナ大学での講演会を行い、それに合わせて、本学のドイツ語学科の卒業生がシニアー・セールス・マネジャーをしているフランクフルトの五つ星ホテル、シュタイゲンベルガー・フランクフルター・ホーフ内のレストラン「ホーフ・ガルテン」を貸切り、ドイツ大同窓会を開催しました。それは「麗澤会欧州支部」の発足と本学からドイツへの留学生送り出し1000名を記念したもので、同時に麗澤会欧州支部のFacebookも開設されました。同窓会にはドイツ在住者だけでなく、イギリスのロンドンから遠路遥々駆けつけてくだった方、また日本からも本同窓会のために休暇をとって参加された方など、総勢44名で旧交を温めました。

昨年度は欧米が中心でしたが、今年は日本と経済的にも文化的にも大いに関係改善が期待されるアジア諸国でも、学術・文化交流を展開する機会を利用し、麗澤会を通して皆さんとの親睦と交流も深めてゆきたいと考えております。8月には、インドのタゴール国際大学で、タゴール訪日100年記念と本学の創立者生誕150年を記念する合同学術シンポジウムを行います。それに関連してインドのデリーと、フライトの中継地であるタイのバンコクで同窓会を開催します。また、本年4月より、経済学部にグローバル人材育成コースと道経一体コースが設置されることを記念して、マレーシアのサラワク大学で道徳と経済をテーマにしたシンポジュウムを12月に開催しますが、この際にも、クアラルンプールで同窓会を開催する予定です。麗澤を卒業して海外駐在員として活躍する日本人卒業生はもちろん、外国人留学生の方々、日本から参加される方も大歓迎です。現地での再会を今から楽しみにしています。

最後に皆さんが、本学でこれまでに修得された専門的知識にさらに磨きをかけ、品性完成という最終的な人生目標を追求しながら、世界で活躍されますよう祈念し、また、麗澤大学のさらなる発展のため、麗澤会、同窓会活動などを通じて、今一層、母校をご支援くださいますようお願い申し上げまして、ここに告辞といたします。

 

平成28年3月14日

麗澤大学学長 中山 理