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平成29年度 入学式告辞

古くから、咲けば散る、咲かねば恋し山桜と歌われておりますように、日本人として花への思いがたえぬ、この麗らかな春の日に、秋山浩保柏市長を初め、多数のご来賓の方々のご臨席のもと、平成29年度麗澤大学入学式を挙行できますことは、私どもの大きな喜びでございます。また、新入生の保護者やご家族の方々にも心よりお喜び申し上げます。

  本年度の入学者は大学院生29名、学部生749名、別科生36名、総計814名、これに特別聴講生と研究生28名、この中には、世界の22の国と地域から来られた176名の外国人留学生も含まれます。麗澤大学を代表いたしまして、皆さんの入学を心から歓迎いたします。

  さて、本日は、ここにご出席の皆さんのご入学を心から歓迎し、3つのことをお伝えしたいと思います。

  まず第一は、麗澤大学という名称でございます。「麗澤」の意味についてお話しするのは、まさに「麗澤」という名称の中に麗澤教育の理念が表わされているからです。「麗澤」とは、『易経』という中国の古典からとった言葉ですが、『易経』の言葉は、私たち人間の進化と退化の法則を、自然現象に当てはめて表現している点に特徴があります。

まず『易経』には、「象に曰く、麗(り)澤(たく)は兌(だ)なり、君子もって朋友講習す」という一節に見るように、「麗澤」という言葉がそのまま登場する箇所が一カ所あります。この場合、麗澤とは「ともに並ぶ澤」を意味します。「沢」といっても流れる渓流というよりは、むしろ、水の貯まる地面のくぼみを指すものであり、まさに廣池学園の「池」や沼をイメージすると分かりやすいでしょう。先ほどの一節をもっとわかりやすく現代風に言えば、「並んでいる沢が互いに潤し合う姿は喜ばしい。立派な人間になろうとする者が志を同じくする友とともに学び切磋琢磨する姿は素晴らしい」という意味になります。すなわち、お互いを切磋琢磨する学びを通して、常に相手を尊重し、互いに助け合いながら、自己の品性と知性を高めることの大切さを謳っているわけです。これはまさに人間教育とは何か、人格教育とは何かを教えてくれる至言ではないでしょうか。 

 それとともに、『易経』には、麗澤の麗を「付着する」という意味の「つく」と読ませる箇所があります。すなわち「日月は天に麗(つ)き、百穀草木は土に麗く。重(ちょう)明(めい)もって正に麗けば、すなわち天下を化成す」(離為火)という一節で、これを現代風に訳せば、「日や月は天に付着しているから萬物を照らすことができ、穀物や草木は土に付着しているから花を咲かせ実を結ばせることができる。また、明徳、天から与えられた優れた徳性をもって正しい道にしっかりと付着して政治を行えば、天下を正しく教化できる」という意味です。『易経』では、さらにこれを天体の自然現象に当てはめ、「黄離(こうり)、元吉(げんきち)なり」、すなわち「太陽が中天にかかり、黄金色の光で万物を照らす」という解釈も成り立つとしています。本学の創立者の廣池千九郎はこのような古典の精神を敷衍し、「麗澤」の意味をこう表現しました。「麗澤」とは「太陽天に懸かりて萬物を恵み潤し育つる義なり」と。つまり「天にかかる太陽のように、生きとし生けるものすべてを慈しみ育てる人であれ」というのが、「麗澤」の名称に込められた創立者の願いです。

  第二に、本学は、昭和10年の創立以来、「高い品性と専門性を備え、自分の考えを国際的に発信できる人材の育成が大切である」という創立者の考えに基づき、グローバル社会を舞台とし、互恵の精神で持続可能な社会の構築に貢献しうる教養人および公共人を育成することを目指してまいりました。皆さんもご存じのように、昨今では、企業や若者を取り巻く環境変化により、基礎学力や専門知識に加え、それらをうまく活用していくための「社会人基礎力」の養成が産学をあげて提唱されています。経済産業省によれば、社会人基礎力とは「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」であり、「前に踏み出す力」、「考え抜く力」、「チームで働く力」の3つの能力から構成されているとしています。同省が社会人基礎力を提唱し始めたのは、ここ10年ぐらいですが、ではその能力をどのように具体的に養成するのかという本質的な問題なると、学校現場での処方箋は何も提示されておらず、すべて私たち高等教育機関の手に委ねられているわけです。

この21世紀型の新しい能力の特徴は、認知的な能力だけではなく、対人関係的な能力や人格特性などを含む人間の全体的な能力だという点です。本学はその中核的能力は品性力であり、各個人が道徳性を養うことによってのみ品性を高めることができると考えています。これを大学での学問的地平で展開したのが、本学の「知徳一体」という建学の精神です。知徳とは知識と道徳のことで、創立者は「知識と道徳は一体両面のものであって、両者相合しておのおのその真義を発揮しえるものである」と述べています。すなわち知識と道徳が調和してこそ、その各々の真価が発揮されるということです。もちろん、知識は重要ですが、それは諸刃の剣であることを自覚していなければなりません。たとえば、知識を悪用すれば、知識の豊富な分だけ社会に対して与える害悪も大きいのです。ですから現代社会において、知と徳、物と心、外的な豊かさと内的な価値とを結びつけるには、「知徳一体」という考え方が、どうしても必要となってくるでしょう。

第三は、本学では、そのような社会人基礎力はもちろん、グローバル時代に対応しうる人間力と専門的能力を養成する様々なプログラムが用意されているということです。たとえば、本学では、世界の18の国と地域の51の大学と交流ネットワークを構築し、外国語学部ではクロス留学や海外研修、経済学部ではグローバル人材養成コースで全員留学を目指すなど、充実した両学部のユニークな留学プログラムや研修制度が用意されています。28年度の一年間だけでも、250名を超える学生が、海外留学や研究プログラムに参加し、国際的通用性のある人間力を高めております。国際性に関し、本学の実力がどれほどかと言いますと、イギリスの教育専門誌Times Higher Educationが運営するTES Global社が日本のベネッセグループの協力を得て行った世界大学ランキングの日本版では全国国公私立435校中、国際性(environment)で全国第4位、中長期の全在学生に占める留学経験者の割合では第6位で、いかにグローバルな教育環境が整っているかがご理解していただけると自負しております。

 言うまでもなく、皆さんの先輩も頑張っています。大学の教室での勉学や留学以外に、ミクロネシアでの環境教育支援活動、ネパールでの減災教育支援活動、カンボジアでの交通安全教育支援活動、東日本大震災被災地ボランティア活動、秋田での限界地域活性化活動などの学生によるPBL(課題解決型学習)活動や、北海道枝幸町、群馬県水上町、沖縄石垣市での学部生と留学生による観光インターンシップなど枚挙に暇がありません。どれも詳しくご紹介したいものばかりですが、時間の関係上、そのようなオール麗澤の学生諸君の活躍をひとつだけ紹介します。それは2016年11月にアメリカのワシントンD.C.で開催された全世界から千人の学生が参加した「全米模擬国連大会」に外国語学部と経済学部の合同チーム8名が参加したことです。彼らはルーマニア外交官の役割を演じ、国連総会第3委員会【GA3】、国際原子力機関【IAEA】、国連難民高等弁務官事務所【UNHCR】、国際連合食糧農業機関【FAO】で、問題解決への手段を英語で討論したのですが、見事、『アウトスタンディングポジションペーパー賞』を受賞するという栄誉に輝きました。

 つぎに本学のキャンパス内には、キャリアセンター主導のインターンシップ、グローバル・ドミトリーでのユニット・リーダー主催のイベント、いろいろな外国語のシャワーを浴びることのできるiLounge、麗澤グローバル広場など、様々な活動支援の学習空間とプログラムがありますが、今年度、新たに2つの施設を開設しましたのでご紹介します。一つは英語のネイティブが常駐し、皆さんの英語のコミュニケーション力アップの支援をするCEC(Centre for English Communication)、もう一つは新しい学習形態であるアクティブラーニングを展開するための学びの空間ALSC(Active Learning Support Commons)です。新入生の皆さんには、これら本学の学術的・教育的資源を最大限に活用され、より高い知識と、道徳性をそなえた人間力をポリッシュアップしていただければ願っております。

最後に、本日の御来賓の一人、本学の卒業生で日本のプロ車いすテニスプレーヤー、グランドスラム車いす部門で男子世界歴代最多となる計40回優勝の記録保持者である国枝慎吾さんの言葉に「可能性は無限大」というのがありますが、どうか皆さんには、自分の無限大の可能性を信じつつ、真の学びの楽しみと醍醐味とを是非ともこの麗澤で体験していただきたいと思います。皆さんが本日から新たな一歩を踏み出し、充実したキャンパスライフを送られますことを祈念し、告辞といたします。 

平成29年4月2日 麗澤大学学長 中山 理