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平成29年度 卒業式告辞

 本日ここに、平成29年度、麗澤大学学位記授与式、ならびに別科日本語研修課程修了式を挙行するにあたり、麗澤大学を代表してお祝いのご挨拶を申し上げます。

 まずは、高いところからではございますが、公私にわたり御多忙の中、多数のご来賓をはじめ、関係各位のご臨席を賜りましたことに対し、衷心より厚くお礼申し上げます。

 次に、卒業生、修了生の皆さん、本日は誠におめでとうございます。また、これまで皆さんを支え、この日を待ちわびておられたご家族の皆様のお喜びもひとしおと思います。心からお祝いを申し上げます。

さらに後援会、麗澤会をはじめ、多くの関係者の皆様方には、日頃から本学の教育・研究活動に対し、深いご理解とご支援を賜っておりますことにも、厚く御礼申し上げたいと思います。卒業生および修了生の皆さんがめでたく喜びの日を迎えられましたのも、数多くの恩人の方々のお陰でございますので、この機会をお借りし、ともに心より感謝の気持ちを捧げたいと思います。

 さて、今年度は、大学院言語教育研究科で1名、経済研究科で1名に博士の学位を、言語教育研究科と経済研究科で合計21名に修士の学位を、外国語学部と経済学部で合計487名に学士の学位を、別科日本語研修課程で46名に修了証書を授与いたしました。さらに、海外の提携校から留学されている特別聴講生も19名が修了されました。

 本日、卒業および修了された学部生と大学院生合わせて510名の中には、72名の外国人学生が含まれております。これに別科日本語研修課程修了生と特別聴講生を含めますと、出身は22の国と地域に及びます。自国と異なる言語、文化、習慣の壁を克服して見事学業を成就された留学生の皆さんのこれまでのご努力に対して深く敬意を表します。

本日、本学を巣立ってゆかれる皆様の洋々たる前途を祝福し、本学を代表し、2つのことを申しあげたいと思います。

 まず第一は、これから皆さんが巣立ってゆく社会では、皆さんのご両親の世代が、これまで経験してこられたのとはまったく異なるライフスタイルが待っているということです。そのことを予言するような一冊の本が2016年に出版され、日本でも話題になりました。著者はロンドン・ビジネススクールの先生で、人材論・組織論の世界的権威であるLynda Gratton教授です。タイトルはThe 100-Year Life。日本語では『ライフシフト』とも訳されていますが、原本は『100年の人生』という意味です。それが日本にも当てはまるのかといいますと、2007年生まれの日本人の子供の50パーセントは107歳まで生きると予測されているのです。この予測が的中するかどうかは別にして、日本はまさに社会の長寿化レースで世界の先頭を走っているのは間違いありません。国連推計でも、32年後の2050年には100歳以上の、いわゆるセンテナリアンが、100万人を突破するであろうと述べています。

 この長寿化は、単に私たちが長生きをするというだけでなく、これからの皆さんの働き方にも、ものすごい変化が起きることを意味しています。今までの人生は、大学を卒業して就職し、65歳まで働いて、後は引退・定年になって年金生活を送るという直線的な時間軸でした。人生をすごろくに例えると、教育、仕事、年金暮らしの3つの升目、あるいはステージしかなかったわけです。ところが、これからは生涯を通して様々なキャリアを経験する、あるいは経験せざるを得ないマルチステージの人生すごろくを皆さんは進んでいくということです。

 また皆さんが就職された企業にしても、未来永劫に続くという保証はどこにもありません。一つの会社が繁栄を謳歌できる期間、すなわち売上高と総資産額ランキングの上位企業として君臨できる期間は、何年ぐらいあると思いますか。1983年では30年でしたが、現在はグローバル化・IT化・技術革新という企業を取り巻く環境の激変の中で、たったの18年しかないのです。端的に言えば、企業が元気でいられる寿命よりも、皆さんの就業期間の方が長いということです。こらからは就職したら終身雇用の会社で自分のキャリアが決まるという時代ではなく、自分のキャリアを自分で考える時代になるわけです。そうなってくると、会社人間のように組織の中で自分を捉える見方よりも、組織とは別に、自分はどのような人間でありたいかという問題意識のほうが重要になってくるでしょう。一言でいえば、皆さんの考える自分のアイデンティティは何かということです。

 さらに、それに加え、これからはお金や不動産のような有形資産よりも、無形資産(intangible assets)が必要になるとグラットンは述べています。無形資産とはお金に換算できない資産のことで、スキル、知識、周囲からの評判、バランスのとれた生活、温かい家族関係、肉体的・精神的健康、多様性に富んだ人的ネットワークなどの資産です。このどれをとっても、麗澤で皆さんが学んだ道徳性、知徳一体の建学の精神と密接に関係する問題ですね。  第二は、不確かな未来に対して、私たちはどのような態度で臨めばよいかという課題です。それに対する答えのヒントが、アップル社の共同設立者の一人、スティヴ・ジョブズが2005年にスタンフォード大学の卒業式で行った有名な演説の中に見つけることできます。彼は「点と点を繋ぐ」(Connecting Dots)ことの大切さをこう述べています。「将来をあらかじめ見据えて、点と点をつなぎあわせることなどできない。できるのは、後からつなぎ合わせることだけだ。だから、我々はいまやっていることがいずれ人生のどこかでつながって実を結ぶだろうと信じるしかない。自分の根性、運命、カルマ…、何にせよ、我々は何かを信じないとやっていけないのだ。私はこのやり方で後悔したことはない。むしろ、今になって大きな差をもたらしてくれたと思う。」皆さんが、今までやってきたことや、今やっていることは、点としか思えないかもしれない。しかし、その点が、人生のいつかどこかで実をむすぶということを信じなさいということです。では、この点とは何か?中国の古典の『易経』に「積善の家には必ず余慶有り」という箴言があります。善行を積み重ねた家には、その報いとして必ず幸せが訪れるというように、私は小さな「善い行い」ではないか、と捉えています。本学の創立者廣池千九郎も、「持久微善を積んで撓(たゆ)まず」という箴言を残しています。つねに正義や社会貢献の精神を持ち続け、毎日、小さなよい事を積み重ねていくことが最高のモラルにつながってゆくというわけですね。

 ですから、これまでやってきたこと、今やっていること、これからやろうとすることが、もし善きことならば、たとえ今は点にしか思えなくとも、それを続けて行けば、その点はやがて線となり、皆さんの素晴らしい人生の物語を造り上げるプロットになると信じることではないでしょうか。

 私たちは日々常に努力を怠ることなく、一歩一歩地道に歩み続けることによって人間として成長してゆきます。常に変化に対応しながらも、いつも麗澤スピリッツを奮い立たせ、様々な恩恵に報いる心、相手を思いやる心、お蔭様でという感謝の心、そして他者に貢献する心を忘れなければ、きっとこれからの人生で、生きていることの素晴らしさと喜びを心から味わう時熟的瞬間が訪れることでしょう。これから皆さんの行う努力が、その時はたとえ一つの点としか思えなくとも、後になって振り返れば、ちょうど水滴が集まった七色の虹のように美しく輝いて見える瞬間が訪れることを心からお祈りし、ここに告辞と致します。皆さん、ご卒業、おめでとう!

 

平成30年3月14日    

麗澤大学 学長 中山 理