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2020.12.09|最終更新日:2022.06.15|

【後編】私も、あなたも。一人ひとりがやるべき国際協力、SDGsへの取り組みがあります

【後編】私も、あなたも。一人ひとりがやるべき国際協力、SDGsへの取り組みがあります

コロナ禍における国際協力について、松島正明先生へのインタビュー。 後編では、国際協力の現状と、高校生や大学生ができることは何か?お話を伺います。

松島 正明
国際学部 国際学科 教授
長野県飯田市出身。東京外国語大学外国語学部ドイツ語学科卒業。住友銀行を経て特殊法人国際協力事業団※(JICA)へ。アフガニスタン事務所長、イラク事務所長、北海道国際センター所長などを務め、2018年より現職。専門分野は国際関係論、国際協力論。訪れた国は100ヵ国以上におよぶ。「訪れた国は全部好きになって帰ってくるが、一番好きな国はと問われれば当然日本」。映画「男はつらいよ」シリーズを見ながら晩酌するのが、リラックスタイムの過ごし方。※現・独立行政法人国際協力機構
目次

    できることからひとつずつ、「皆で一緒に」取り組んでいく

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    • 国際協力を取り巻く環境は今、非常に厳しいとと言わざるを得ません。新型コロナウイルスの世界的な大流行により、JICAも、世界各国に派遣している約6,000名の関係者を一時帰国させる異例の事態となりました。日本の支援だけでなく、世界各国からの途上国支援事業がほぼ止まっている状況にあり、2030年までの達成を目指す「SDGs※」の達成に黄信号がともっているとも言われています。さらに、世界は分断の時代にあり、アメリカをはじめヨーロッパ、中南米などでも「自国第一主義」がとられるなど、国際連携を進めることが難しくなってしまいました。

    • 多国間の枠組みを取りまとめるべき国連も、なかなかこのような状況下においてその役割を果たすことができず、分断は深まる一方です。とは言え、「途上国支援を止めてよい」わけにはいきません。今こうしている間にも、多くの途上国では新型コロナウイルスの蔓延とそれに伴う経済の停滞などで、大きな社会不安を招いており、深刻な事態となっています。紛争、飢餓・貧困、気候変動などSDGsの課題である諸問題も待ったなしで進んでいて、二国間の取り組みだけでは、到底解決することはできません。分断の流れに甘んじることなく、国連や日本など先進国がリーダーシップを発揮し、より積極的に国際連携を図ることが不可欠です。

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    一方、SDGsの目標達成に対しては、国連や政府など行政機関だけで達成できるものではありません。自治体、NGO、大学など教育機関、民間企業なども重要なアクターであり、個人レベルでやるべきこと、できることもたくさんあります。私も、あなたも。たとえばSDGsのゴール6に関して言えば、歯磨きをする時には水道の蛇口を閉める、洗濯は毎日しないで節水を心がけるなど。これらは今すぐ個人でできることです。どんな些細なことでもいい、大切なのは、「他人事ではなく、自分事として」皆が一緒に取り組んでいくこと。仲間と一緒にやってみる、高校、大学を挙げて取り組む、その取り組みをさらに地域に拡げるというように、皆がつながり合って協働して取り組んでいけば、たとえ小さな取り組みであっても、やがては世界を変える大きなアクションにつながります。

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    • 考えが異なる個人や団体が協働するためには、まず相手の意見を真摯な態度で(敬意をもって)受け入れること。すべては、そこからです。様々な立場の人たちがアイデアを出し合い、できることから一つひとつ、協働しながら取り組んでいく。そうすれば、この難しい時代も、きっと、乗り越えていくことができるはずです。
      ※2015年の第70回国連総会で採択された「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals, SDGs)」

    「日本」を知らずに世界は語れない

    • 先日、ある高校で講演をした時のこと。参加者の高校生からこんなことを言われました。「途上国への支援も大切だけど、今は日本も大変ではありませんか?少子高齢化、過疎化は深刻だし、日本にだって貧困はあります」と。彼らは海外だけでなく、日本の問題にもちゃんと気がついているのです。どこの国でも若い世代は「グローバル化」といえば自国外に関心を向けることが多かったと思いますが、今の高校生は、海外のみならず日本に対しても関心がある。そこに、私は大きな希望を感じています。大学では、世界で起きている事柄に興味を持ち、外国語や世界各国の事情などについて学ぶことはもちろん大切ですが、同時に日本のこともしっかりと学んでほしいと思います。

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    • 日本とは、日本人とは何か、日本が今なぜこうなったのか?を知らなければ、外国に出かけた際にその国がどうしてこうなったのかを正しく理解することはできないし、そもそも、自国のことも知らないようでは、諸外国の人々から信用を得ることはできません。日本はどんな国だ、それに対してアフリカは?中国は――?と常に広い視野と豊かな好奇心を持ち続けながら、貪欲に学ぶこと。加えて身につけた知識やアイデアを率先して実践しましょう。それこそ、水道の蛇口はちゃんと閉める、とかね(笑)。「知る・気づく」から、さらに進んで、「自ら行動する」ことが、より良い世界をつくることにつながります。意識の高い高校生の皆さんなら、きっとできると思います。

    「覚悟」を決めたら、のびのびと。やりたいことをたくさん経験してほしい

    • ウィズコロナの世界がどうなるかわかりませんが、今よりも難しい時代になることは確かでしょう。と言って、不安がっていても何も始まりません。ではどうするか。私はこれまでの経験から「何かに取り組む覚悟を決する」ことだと思っています。覚悟ができれば、どんな状況に陥ってもおじけづかずのびのびと楽しく、自分のやりたいことをできるようになると信じています。もうひとつは、スポーツでもアートでも、友たちと遊ぶでも何でもいい。若いうちに様々なことにチャレンジして経験を積むことです。私は学生時代に、約100種類のアルバイトをしており(貧乏でしたから)、社会人になってから、大いに役立ちました。

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    多様なことを経験するからこそ、「人間力、胆力(魅力)」が身について、世界の誰とでも信頼関係を築くことができる人間になります。皆さんも、世界中の人たちとパートナーシップを築き、平和な未来を目指して「率先して動く」ことのできる人になってください。

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