経営学部
2023.04.18|最終更新日:2023.10.04|

【前編】これからの時代を「生き抜くための」経営学を
<経営学部新設特別対談:経済学者×次世代教育専門家×麗澤大学>

【前編】これからの時代を「生き抜くための」経営学を<経営学部新設特別対談:経済学者×次世代教育専門家×麗澤大学>

2024年春、麗澤大学は新たに経営学部の新設を予定しています。そこで今回は専門家として、東京大学大学院経済学研究科・経済学部の柳川範之教授、株式会社リクルート スタディサプリ教育AI研究所所長の小宮山利恵子先生(麗澤大学客員教授)をお招きし、麗澤大学経営学部設置準備委員長の近藤明人教授と対談を行いました。現在の麗澤大学の経済学部経営学科から一体何が変わるのか? そして新しい経営学部を専門家はどう見るのでしょうか? 3名の対談でお届けします。

柳川 範之 氏
東京大学大学院経済学研究科・経済学部 教授。内閣府経済財政諮問会議 民間議員。専門分野は金融契約、法と経済学。 中学卒業後は父親の赴任先であるブラジルで過ごし、高校へ行かずに独学で大学を受験。慶應義塾大学経済学部通信教育課程に入学し、シンガポールで通信教育を受けながら独学を続ける。大学卒業後、東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。著書に『Unlearn(アンラーン) 人生100年時代の新しい「学び」』(日経BP)など。
小宮山 利惠子 氏
株式会社リクルート スタディサプリ教育AI研究所所長。東京学芸大学大学院教育学研究科准教授。麗澤大学客員教授。専門分野はEdTech、アントレプレナーシップ教育。 早稲田大学大学院修了後、国会議員秘書、株式会社ベネッセコーポレーション会長秘書、GREE株式会社を経て現職。ひとり親家庭に育ち、高校から大学院まで奨学金で学んだ経験から「すべての子どもに教育の機会を与える」ことを目指す。著書に『レア力で生きる 「競争のない世界」を楽しむための学びの習慣』(KADOKAWA)など。
近藤 明人
麗澤大学経済学部教授。経営学部設置準備委員長。専門分野は経営管理論、ファミリービジネス論、環境経営論、行政経営論。 東海大学大学院経済学研究科応用経済学専攻博士課程終了。卒業後、実家のファミリービジネスの経営に携わるとともに、ISOマネジメントシステム審査員や経営コンサルティグなど、経営の実務を経て現職。
目次

    「本物の力」がつく、実学教育を提供します

    近藤:本日はお集まりいただきありがとうございます。小宮山先生には、新しい経営学部でアントレプレナーシップ教育などの面からお力添えいただくことになっています。柳川先生には今回、初めてお目にかかります。私の周りの方からも「あの柳川先生と対談するなんて!」と言われ本日は緊張しておりますが(笑)、せっかくの機会ですので、新しい麗澤大学の経営学部について色々なお話をさせていただければと思います。

    早速ですが、経営学部(2024年4月設置予定)の概要からお話しさせてください。現在、麗澤大学では経済学部の中に経営学科がありますが、今後の社会のニーズを見据え、学びの内容をアップグレードし、2024年に経営学部として独立させることになりました。

    • 新しい経営学部を構想する際、一番に考えたのは「『本物』の力がつく実学教育をしよう」ということです。たとえば私自身が大学で経営学を学んでいたと時、正直に言って中々面白いとは思えなかったんですね。教科書に書かれていることを、経営やビジネスの現場でどう活かせばいいのか?現場で教科書の理論通りにいかない時はどうするの?といった実践的なイメージが沸かなかったのです。その経験があり、自分が大学教員になってからは、文系にも理系のような「実学」を取り入れるべきだと考え、実践してきました。新・経営学部は、その「実学」に重きを置いたカリキュラムにしたいと考えています。

    カリキュラムは、社会的ニーズが高まっている「ビジネスデザイン思考」「データサイエンス」「SDGsプログラム」の3つを基盤とし、アクティブ・ラーニングや演習を通して学んでいきます。それも、ただやればいいのではなく、たとえばビジネスプランを考えたら、実装する、プロトタイプ(試作品)を作るところまでやる。統計学もアクティブ・ラーニングで学び、学生がデータを集めて分析し、結果を議論し「データを使って何をやるのか」まで落としこむ。SDGsも、学生一人ひとりが問題の深刻さを理解した上で、使命感をもって取り組むというように、すべてにおいて学生が「自分ごと」として捉え、活動することを最重要視しています。

    絵空事ではない、生き抜くための「経営学」

    柳川:構想を伺い、麗澤大学から意欲的なカリキュラムが登場するんだなと、とても楽しみになりました。とくに印象的なのは「実学」と仰ったことです。

    ひと昔前の経営学がどうだったかといえば、それこそ「大企業のトップが考える経営戦略とは」といった話を、分厚いテキストから学んでいたわけです。それも決して無駄ではありませんが、大企業のトップになる人はごく一部ですから、多くの学生にとっては他人事で、つまらなかった(笑)。

    • それが今、皆が皆、ひとつの会社に定年退職するまで勤める時代ではなくなり、起業をしたりベンチャー企業で働いたり、独立自営で働くフリーランスの方も増え、自分自身が経営やビジネスをすることがよりリアルな世界になりつつあります。そうなると会計やファイナンス、契約の知識がなければ、今後本当に困ってしまうということです。つまり、今の経営学は、他人事や絵空事などではなく、一人ひとりが「生き抜くための学問」である必要がある。それを学べるのが、まさに、これから開設される麗澤大学の経営学部ということなのでしょう。

    小宮山:最近「自分を経営する」という言葉を聞きます。どういうことかといえば、今はプロジェクトごとに雇用契約を結ぶジョブ型雇用が増えていて、そのような状況では、自分で自分を売り込む必要があるんですね。「自分」という会社の経営者として、自分自身をマーケティングする方法、これは今後、誰もが身につけておかなければならない必須のスキルであり、「生き抜く力」になると思うんです。

    柳川:そうした実践力はやはり、リアルな体験を通さなければ、中々身につくものではありません。アクティブ・ラーニングと実学重視のカリキュラムによって、今の時代に「使える」経営学が身につくといえるのではないでしょうか。

    「スマホ」をビジネスに活かし、利益を生む方法を考えられますか?

    近藤:では具体的にどんなことを学ぶかといいますと、新しい経営学部には4つの専攻を設置し、その内3つが現在の経営学科の3専攻から引き継がれ、1つが新たに加わる「ファミリービジネス専攻」となる予定です。もちろん、既存の専攻も従来のままではなく、これまでの実績を活かしながら、「実学」を学ぶためのカリキュラムに進化します。

    まず3つの専攻を紹介させていただきますと、「ビジネスデザイン専攻」は企業や社会の課題を解決する力や、新しいビジネスを創る力を身につける専攻。「AIビジネス専攻」は、企業のDX(デジタル・トランスフォーメーション)やAI活用を推進できるプロデューサーを育成する専攻。「スポーツビジネス専攻」は、スポーツを活用した新たなビジネスを創出できる人材の育成に力を入れていきます。

    柳川:これからは起業や独立する方が増えるとはいえ、実際は、企業で活躍する人もたくさんいるわけですが、新・経営学部はベンチャーや独立志向だけでなく、企業が今まさに「欲しい!」と思う人材をしっかりと育てようとされているのを感じます。ビジネスデザイン専攻やAIビジネス専攻が育てようとしているのは、「今、何をすれば利益を伸ばせるか」「テクノロジーをビジネスにどう埋めこむか」を自分で考えられる人材。それは企業が今、最も欲しがっている人材なんです。

    DXの話でいえば、テクノロジーも重要ですが、実は、テクノロジーにビジネスをどう対応させるか、テクノロジーを取り入れて、組織や仕事の進め方をどう変えていくか、といったことを考えるほうがよほど難しい。それができる人材が育っていないから、企業は今、とても困っているんです。たとえば高校生の皆さんも、スマホという超高性能マシンを使いこなしていますが、では「スマホをビジネスにどう活かすか?」を発想できるかといえば、中々難しいと思うんですね。

    • 小宮山:だからこそ今すごく重要なのは、就職する・起業するにかかわらず、ゼロからイチを生み出す「0→1」マインドを育てることなんだと思います。これまでの教育ではあまりできていなかったところですよね。でも実際のところ、世界中から優秀な人材を集めているような企業が高く評価するのは、まさに、自ら一歩踏み出せる人です。そんな「0→1人材」が、新・経営学部からたくさん育っていくと嬉しいですね。

    スポーツビジネス専攻で新しいビジネスフィールドを開拓しよう!

    柳川:新しい経営学部では、学生が実際にビジネスを考えながら学びを進めていく、そんなイメージが膨らみますが、この時、どんなシチュエーションを想定して学んでいくのでしょうか? たとえば「3、4人の仲間でベンチャーを立ち上げるなら?」「大企業の社長だったら?」あるいは「あなたがAppleの社長だったら?」など、色々なパターンがあると思いますが。

    近藤:最初から大企業の経営となると、多くの学生にとっては遠い世界の話になってしまうと思います。まずは、学生がイメージしやすいベンチャーのようなスモールサイズのビジネスから始めて、徐々にステップアップさせていきたいと考えています。

    柳川:まさに、経営やビジネスを「自分ごと」として考え、実践的に学ぶということですよね。これは学生にとってすごく魅力的ですし、学んだことは実際、社会に出たときに強い武器になると思います。

    • それから、スポーツビジネス。これは今後、益々大きく伸びる可能性があります。データやデジタル技術を使って、今までできなかったことができるようになっていますし、健康や観光、エンターテイメントなど様々な産業と結びついて、新たな市場が生まれる動きがすでに見られています。人を集めることができるスポーツは地域活性にもつながるなど、たくさんのビジネスチャンスが見えてきているんですよ。これらのデータとビジネスは相性が良いですし、当然、そこにはそれを活かせる人材が必要です。ぜひ、スポーツビジネスというフロンティアを、スポーツビジネス専攻で開拓してほしいですね。

    SNSでこの記事をシェア