工学部
2023.04.27|最終更新日:2023.10.04|

【前編】「多様な人生の選択肢を得られる環境を」工学部※ ロボティクス専攻への想い ※設置認可申請中

【前編】「多様な人生の選択肢を得られる環境を」工学部※ ロボティクス専攻への想い ※設置認可申請中

今回お話を伺ったのは、2024年4月に新設される工学部(設置認可申請中)でロボティクス(ロボット工学)を教える予定の鈴木高宏先生です。鈴木先生は東京大学准教授としてロボティクスの研究を行いながら、長崎県庁職員として離島のEV(電気自動車)プロジェクトの推進役を務め、その後は東北大学に移り東北復興プロジェクトの推進など、ロボットや次世代交通などの先進技術の社会実装に取り組まれています。前編では、鈴木先生が未来技術への関心を抱いた背景や研究内容、取り組まれてきた未来技術の社会実装について伺います。

鈴木 高宏
教授/未来工学研究センター教授
東京大学大学院工学系研究科機械情報工学専攻博士課程修了。専門分野は次世代モビリティとロボティクス。2004年より東京大学大学院情報学環准教授に着任し、その後長崎県庁でEV&ITS推進担当として電気自動車の利活用などに携わる。その経験を活かし、2014年東北大学未来科学技術共同研究センター教授として、東北復興プロジェクトに注力、東北大学福島復興支援室の新設に貢献。2023年4月より麗澤大学に着任。東北大学未来科学技術共同研究センター特任教授。
目次

    「1からモノをつくるのが好きだった」幼少期〜学生時代

    • 私は小さい頃からは読書やレゴ®、プラモデル作りが好きでした。コンピューターが好きになったきっかけは、両親に中学校の合格祝いでパソコンを買ってもらったことだと思います。当時「マイコンBASICマガジン」というBASICのプログラムを自作できる雑誌があり、それを読みながら自分でゲームのプログラムを作って打ち込んでいました。今と違ってソーシャルメディアなどもなかったので、ほとんど一人で没頭していたような気がします。決して自慢できるレベルではないですが、ガンプラ(ガンダムのプラモデル)なども含めて1からモノをつくるのが好きな子ども時代でした。

    ゲームに関しては、中学・高校の時には「ゲームブック」というジャンルにハマっていました。今で言うアドベンチャーやRPGゲームで、それが本の中にすべて集約されているものです。順番に読んでいくというより、ゲームを進める上で選択肢に応じてページを移っていくという、あまり知られていない狭い世界のジャンルだと思いますが、それがとにかく好きで当時日本で発行されていた本はほとんど集めていたと思います。ただ、そのコレクションも引っ越した時に実家に置いていたら、全部売られてしまい、今では封印した歴史です(笑)。

    「点群データ」で目に見えない情報も可視化する

    • この10年間は大学のプロジェクト企画・運営業務や、産学連携などのマネジメントを主に行ってきましたが、研究者として今私が大きな関心を持っているのは、「点群データ」という三次元の計測データをどう利活用していくかということです。そもそも点群データとは、三次元上の点の集まりのことを指していて、ロボットや自動運転における周辺環境認識や地図作成に使われています。これに色情報を載せたデータを加工していくと、今流行りのメタバースのような三次元のVRのデータなどもつくることができます。それ以外にもバーチャル観光であったり、防災にも役立てたりすることができますが、私は特に運転シミュレーションをこれまでやってきているので、その領域で利活用することに取り組みはじめています。

    • 点群データの例:福島ロボットテストフィールドにおける計測データ

    加えて、そうした目に見える三次元環境だけでなく、目に見えないデータを点群データに載せていく活用方法もあります。例えば、5G通信は電波範囲が非常に狭い特徴がありますが、電波が目に見えないので、例えばその電波強度をVRの空間の中にヒートマップのように表示すると、どこで電波が通じるかがわかる多次元の環境を構築することも可能になってきます。こうした新しい情報も融合された空間の構築に、今までのキャリアや経験を活かして取り組んでいきたいと思っています。

    「世界の隅っこまですべて知りたい」という変わらない好奇心

    • さらに、今やっていることの中で、皆さんにも分かりやすいものだと「次世代モビリティ」があります。いわゆる電気自動車や自動運転などの、車を中心とした新しい移動システムです。現状、自動運転はコストが高く、クオリティもまだ高くないですが、視野を広げると三次元空間のデータの収集に活用することができます。広い範囲のデータを定点観測するためにセンサーを配置すると非効率的ですが、動き回る車は広い範囲のデータをリアルタイムで収集することができるので、あらゆる場所のデータをデジタル化することができます。これはアドベンチャーゲームでダンジョンを巡っていくと、そこに地図がどんどん広がっていく感覚に近い発想かもしれません。

    昔ハマったゲームブックは、分厚い本の中にすべてが詰まっていました。そのため行き止まりの場所もすべて見ることができたのです。それが私にとってはすごく面白かった。結局私は、迷宮があったらすべての行き止まりも含めて、確かめてみないと気が済まないのかもしれません。そういった意味では、私自身の興味関心は脇道のところも含めて広がっているので、様々な分野の人と関わりながら、こうした取り組みを進めていきたいと思っています。

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