編集部
2024.07.01|最終更新日:2024.07.11|

『総合型選抜』(旧AO入試)とは?学校推薦型選抜・一般選抜との違い、試験内容やメリット・デメリットを解説します

『総合型選抜』(旧AO入試)とは?学校推薦型選抜・一般選抜との違い、試験内容やメリット・デメリットを解説します

2020年度より大学入学者選抜改革が実施され、大学入学共通テストが開始されました。国際化、さらに情報化社会の発展に対応できる人材を育てるため、受験生の学力要素として「知識・技能の確実な習得」「思考力・判断力・表現力」「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」という3つの評価ポイントが設けられました。 そこで「総合型選抜」をテーマに、仕組みや試験内容、学校推薦型選抜と一般選抜との違いについて、麗澤大学の大学入試・広報課課長の大本俊介さんに解説してもらいました。

目次

    総合型選抜とは

    総合型選抜とは、大学が求める学生を多面的かつ総合的に評価・選抜する入試方法です。受験生がこれまで培ってきた教養や技能、与えられた課題に対する論理的な思考力や判断力、表現力、そして人間性などをさまざまな観点から見極める試験といえます。

    選考方法については現在書類審査、小論文、面接、プレゼンなどが行われ、年々その種類や組み合わせは増えています。理由は、大学によって教育理念や教育方針・教育内容が異なる上、総合型選抜で重視されるアドミッション・ポリシーも大学全体、さらに学部や学科ごとに定められているからです。

    総合型選抜で重視されるアドミッション・ポリシーとは

    アドミッション・ポリシーとは、入学者を受け入れるための方針や学生に求める学習成果を示したものです。アドミッション・ポリシーは大学の教育理念から定められたディプロマ・ポリシー、カリキュラム・ポリシーに基づく教育内容を踏まえ、大学全体、さらに学部や学科ごとに策定されています。

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    例えば、麗澤大学経営学部では次のように明記されています。

    ■経営学部/入学者受け入れ方針(アドミッション・ポリシー)

    経営学とAI・データサイエンスの知識を活用して新たな企業価値を創造できる人材、ビジネスを通して社会課題の解決をデザインできる人材を育成するという教育目標を達成させるため、以下の知識・能力・態度を身につけている者を求め、受け入れます。

    1. 「知徳一体」の教育理念を理解し、関心を持つ者
    2. 経営学部の学習内容を理解し、関心を持つ者
    3. 経営学部の学習に必要な基礎的知識を持つ者
    4. 情報・データサイエンスなどの基礎的な運用技能を持つ者
    5. 経営学部で学ぶ目的意識の強い者
    6. ほかの人々と協調してグループワークやフィールドワークを行い、相互理解を図り、能動的な活動に取組む意欲を持つ者
    7. 独創性があり、新しいことに挑戦しようとする意欲を持つ者
    8. 高等学校時代の学習、および諸活動において成果をあげた者

    参考「大学の方針 3つのポリシー」
    https://www.reitaku-u.ac.jp/about/policy/

    総合型選抜とほかの入試の特長と違い

    総合型選抜は、学校推薦型選抜や一般選抜といった3つの入試区分の1つです。文部科学省には、それぞれの入試の特徴と実施時期が次のように記されています。

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    参考「大学入学者選抜関連基礎資料集第4分冊」(文部科学省)
    https://www.mext.go.jp/content/20210629-mxt_daigakuc02-000016365_7_1.pdf

    一般的に、総合型選抜は入学意欲、学校推薦型選抜は高校の成績、一般選抜は学力を重視する傾向にあります。ただし、総合型選抜も高校の成績や一定の学力を判断材料とする場合があり、学校推薦型選抜でも入学意欲を問われることが多々あります。

    明確な違いは、学校推薦型選抜は出身校の推薦が必須である点です。また、出願時期が異なり、総合型選抜が9月、学校推薦型選抜が11月から開始となっています。

    国公立大学と私立大学の総合型選抜の違い

    国公立大学の総合型選抜は論述と面接を年内に行い、さらに大学入学共通テストで所定の得点を求める方式があったりと、私立大学と比べて受験生の負担が多い傾向があります。私立大学は「各校がアドミッション・ポリシーに合う学生を獲得しよう」と入試方法はプレゼン方式や事前課題の提出方式など多様な傾向があります。

    参考「文部科学省「大学入試改革の状況について」(文部科学省)
    https://www.mext.go.jp/content/20200124-mxt_sigsanji-1411620_00002_002.pdf
    参考「令和7年度大学入学者選抜実施要項の見直しに係る予告」(文部科学省)
    https://www.mext.go.jp/content/20210729-mxt_daigakuc02-000005144_3.pdf

    総合型選抜の試験内容は?

    入試方法は書類審査、面接、小論文のほかに、プレゼンテーションやディスカッション、実技審査などを取り入れている大学が多い傾向にあります。大学側にとっては対面によるコミュニケーションを通して学生と相互理解を深めた上で、入学者を受け入れたいという思いもあります。

    受験生にとっては大学の思いや考えを汲み取った上で、高校の学業や課外活動をアピールできるため、学力重視の入試より人によっては魅力ある試験方法ともいえます。例えば、麗澤大学の総合型選抜では、全学部共通型としてプレゼン方式を取り入れています。選考方法には書類審査、プレゼンテーション、面接が課されています。ほかにも、面接方式や基礎学力方式など多様な選考方法があります。

    ■例:麗澤大学 全学部共通型【プレゼン方式Ⅰ期】外国語学部

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    参考「入学者選抜ガイド2025 1.総合型選抜編」(麗澤大学公式サイト)
    https://www.reitaku-u.ac.jp/pdf/RU_admissionGUIDE_2025_2.pdf

    選考の方法

    各大学が実施する総合型選抜では、面接や小論文、プレゼンテーション、学力試験など複数の方法を組み合わせています。活動報告書や入学希望理由書などの書類審査も大学によってさまざまな様式があり、求められる記入内容も違います。

    麗澤大学では、所定の書式に記入する形で「高校での学びから何を得て、大学でどう活用するのか」を書くものや、課外活動をレポートするものもあります。全学部共通で面接方式・プレゼン方式・基礎学力方式の総合型選抜があり、それら以外にも学部によって特色ある入試方法を用意しています。

    国際学部でボランティア、経済学部と経営学部では部活動の経験などを重視した入試、2024年4月に新設した工学部では自分のアイデアや作品をプレゼンできる入試や工学系を目指す女子生徒対象の入試も実施されています。

    出願の条件

    出願の条件については、とくに定められたものはなく、各大学に委ねられています。総合型選抜では、一般的に評定平均が条件に含まれません。ただし、大学によっては評定平均や英語の外部試験の成績などを加味されるケースがあります。

    ほかにも、オープンキャンパスで実施される模擬講義や説明会の参加を条件にする大学もあります。そのため、志望大学のリサーチはホームページや入試ガイドなどで早めに進めることをおすすめします。

    参考「入学者選抜方法」(麗澤大学)
    https://www.reitaku-u.ac.jp/admissions/info/

    総合型選抜のスケジュール

    文部科学省は総合型選抜の出願時期を9月以降、合格発表を11月以降と設定しています。

    ■総合型選抜の受験スケジュール例

    出願=9月~/合格発表=11月~
    パターン1 出願→1次選考→合格発表
    パターン2 出願→1次選考→2次選考→合格発表

    2次選考まで実施されることも多いですが、11月や12月に選考して年明けに合格発表を行う大学や、年明けに選考と合格発表を実施する大学もあります。どの大学も9月から始まる総合型選抜の出願までにオープンキャンパスを複数実施し、受験生に向けて情報展開しています。詳細は各大学のホームページをチェックしましょう。

    総合型選抜のメリットとデメリット

    一般選抜との選考方法の違いにより、受験生にとっては注意すべき点もあります。このテーマでは、メリットとデメリットを紹介します。

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    メリット

    1.受験の機会を増やせる

    9月1日から出願が始まる総合型選抜は、選考時期が早く入試回数も多いため、受験生にとっては受験の機会を増やせます。

    2.自分の得意や強みを生かした受験が可能

    プレゼンテーションやグループディスカッションなどコミュニケーション重視の入試をはじめ、多様な入試があるので自分の得意や強みが生かせる受験を選択できます。

    3.キャリアデザインや大学の学びがイメージできる

    総合型選抜を通じてアドミッション・ポリシーなどに向き合い課題意識を高めることで、今後「自分は何を学び、どのようになりたいか」というキャリアデザインを考える機会が得られます。また「大学で学んだことを、社会でどのように生かせるか」を見つめることで、大学での講義の解像度が高まります。

    デメリット

    1.受験直前に対策することが難しい

    高校生活の学びや課外活動の積み上げが評価されるため、受験直前に対策しようとしても難しい場合があります。また、高校生は探究型学習などさまざまなことを経験しています。総合型選抜を受験する場合は、できるだけ早めに「どの活動を軸に準備するか」を検討するといいでしょう。授業や部活動など日頃の高校生活を一生懸命に取り組むことが前提です。

    2.合格発表が早いので学ぶ意識が薄れる

    総合型選抜は選考と合格発表が早く、一般選抜の受験生に比べて4か月ほど先に進路が決まっているケースがあります。そのため、残りの高校生活の学習がおろそかになることも少なくありません。その影響で、大学入学後の講義についていけなくなるケースも見られます。

    大学によっては4月にクラス分けのテストを実施するなど、結果として高校での継続的な学びが前提となる場合も増えています。また総合型選抜で合格しても、入学の条件として「大学入学共通テストで指定教科の点数を70%以上とる」といった具体的な内容を課す国立大学もあります。

    3.評価ポイントが多様に存在する

    一般選抜などとは異なり、総合型選抜は「各大学や学部学科がアドミッション・ポリシーに合う学生を選抜するため、評価のポイントが多様である」という大きな違いがあります。

    麗澤大学における「総合型選抜」の概要

    麗澤大学では外国語学部、国際学部、経済学部、経営学部、工学部とすべての学部で総合型選抜を実施しています。

    なぜ総合型選抜を実施するか

    麗澤大学が総合型選抜を実施する理由は、学力の評価だけでは測れない部分を含め、受験生を多面的かつ総合的に評価したいからです。以前の大学入試とは違い、現在は「学生が学びたいことを実現できる大学をじっくり吟味できる」時代です。

    大学側も、自分たちが掲げるアドミッション・ポリシーに合う学生とマッチングできるように、総合型選抜の内容を年々ブラッシュアップしています。麗澤大学はオープンキャンパスにも力を入れており、各学部の先生と参加者が直に話をしてもらえるようなプログラムを組むなど受験の判断材料を提供するように心がけています。

    また、居住エリアが遠方なのでオープンキャンパスに参加できない場合など、本学のことでわからないことがあれば、オンラインでの個別相談も実施しています。

    参考「オープンキャンパス」(麗澤大学サイト)
    https://www.reitaku-u.ac.jp/admissions/opencampus/

    麗澤大学のアドミッション・ポリシー

    アドミッション・ポリシーについては、ディプロマ・ポリシーとカリキュラム・ポリシーとともに紹介しています。学部ごとに明記されていますので、下記の公式サイトを通してご確認ください。

    ■大学の方針

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    参考「大学の方針 3つのポリシー」
    https://www.reitaku-u.ac.jp/about/policy/

    重要なのは、それぞれの学部の学習内容を理解することです。例えば、総合型選抜の面接において経済学部と経営学部の学習内容を混同して話される方もいらっしゃいます。学部それぞれのポイントに留意しながら、受験の準備を進めることが大切です。

    2025年度の「総合型選抜」の概要

    2025年度の総合型選抜の受験スケジュールと各学部学科の選考方法と出願条件については、ホームページの情報をチェックしてください。

    ■入学者選抜ガイド「part1 総合型選抜編」

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    1.総合型選抜の受験スケジュール P3~4
    2.各学部学科の選考方法と出願条件
    外国語学部 P5~7
    国際学部  P8~10
    経済学部  P11~13
    経営学部  P14~18
    工学部   P19~20
    3.2024年度入学者選抜結果 P25
    4.入学金/授業料・学費、奨学金制度 P26

    【麗澤大学 大学入試・広報課課長 大本俊介さん】

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    ■プロフィール
    大学卒業後、食品メーカー、予備校職員を経て2020年に麗澤大学に入職。2022年より大学事務局副部長と大学入試・広報課課長を兼務。食品メーカーでは新規開拓を中心に営業職に従事。その後、日本大学通信教育学部で中・高の国語の教員免許を取得し、大手予備校に入職。予備校では学生指導、模試のデータ処理、高校営業など幅広く活躍。数十万人の受験生の入試データを分析した実績を持つ

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