

麗澤大学AI・ビジネス研究センター / 都市不動産科学研究センター センター長
プライベートではおいしいコーヒーの淹れ方を研究中。海外旅行が好きで、世界各国にいる友人たちを訪ねるのが楽しみ。
「夢は叶う」。自分の人生のキャリアを長く見る選択が必要です
そこでテニス初心者も入れてチームを作り、素晴らしい恩師やコーチとの出会いもあり、3年生の時にダブルスで素人だった子とペアを組んでインターハイに出場、後輩たちは団体戦でも出場を果たした。無から有を生み出し、夢を叶えた瞬間でした。大学でもテニスを続けたのですが、もともと抱えていた肘の問題で、大学2年生の時に、アスリートとしての道が閉ざされてしまった。その時は、本当に人生が終わったと思いましたね。
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そのような時に、生涯の師となる教授と出会うことがありました。その教授は、日本で初めて「計量経済学」という学問を教えた方で、その後のビッグデータ解析などの基礎となる知識を与えてくださった。今思うと、高校進学時に両親や恩師が普通高校への進学を進めてくれたことが、研究者へと転換する機会を残してくれていたと思います。父が言っていたのは、人生は長い。テニスだけが人生ではない。チャンスが多い普通高校に行くことが大切だと言ってくれたことです。その結果、大学にも進学し、テニスがなくなっても、新しい熱中できる道を見つけることができたと思っています。そして、アスリートの時も、研究者になる時も、良い「師」の存在は欠かせないものでした。
一番難しいものに挑戦する。人々の幸せを左右する「環境」。本当の豊かさとは何か、見えない価値を測りたい!
私は「経済測定」という分野の研究をしています。経済社会では、様々な統計を見ながら政策や経営を考えますが、その統計が歪んでいては、正しい判断ができません。その中でも、測定すらできない分野があると、社会は正しい方向に舵をきることができなくなってしまうのです。「経済測定」の分野において、最も測定が困難な対象と言われてきたのが、「環境」であり「不動産」の価値測定でした。私が大学生、大学院生の頃、日本はバブル真っ只中。巨額の富を築く人もいたけれど、その一方では貧しい人もいるし、長時間の通勤や通勤ラッシュで大変な思いをしている人たちもいる。環境の問題だってある。
このように環境価値を測定していくためには、不動産の価値を測定・分解していかなければなりません。なぜなら、不動産は品質が均一ではなく、最寄り駅からの距離や、たとえ同じ土地でも、建物の築年数や構造などによって価値が変わってしまうからです。しかし、不動産の価値を測定しないことには、環境の価値も測れません。もっとも測定が困難な対象だと言われていても、挑戦する価値があると思いました。これが私の研究者としての人生を始めるきっかけとなりました。今振り返ると、一番難しいと言われているからやめておくというのではなく、「高い志」が何よりも大切だと、改めて思っています。 その価値を測定するためには、AIを勉強しないといけない。その研究を通してAIと出会ったのは1995年のことでした。
縁の下の力持ちが大切。日本における不動産価格指数の運用システムを作ったのは、麗澤大学の卒業生!
不動産価値の測定は、ビッグデータを解析して行いますが、既存の技術では限界があり、AI(人工知能)の力が必要でした。と言っても、1995年当時はビッグデータやAIという言葉もなかったし、AIの性能も低かった。今、注目されているディープラーニングの基礎となる理論が誕生したのは、2006年のことです。その頃はデータをAIで解析できる形にする作業だけでも、膨大な時間と労力がかかり「ビッグデータの研究は作業で、研究ではない」という批判もありました。しかし、すべての研究がそうですが、データを作るといった縁の下の力持ちがいなければ、何も始まらないのです。
統計というものは勝手に作ってはいけません。国際機関が指針を作成します。この時、不動産価格指数を作るための世界共通指針を作成するプロジェクトに、私が専門家として招聘され、OECD、国際通貨基金(IMF)、国連、世界銀行が共同で公表したガイドラインに、私が考案した不動産価格の測定法が推奨されたのです。
テクノロジーの力を借りて社会課題を解決すること、それが研究者としてのやりがいです
見えないものを見えるようにすると、便利になることはたくさんあります。たとえばコロナ禍での行動制限が経済にどれだけ影響を及ぼすのか。皆さん、知りたいと思いませんか?その影響は、人の流れと消費のデータを解析することで予測でき、政府が政策決定する上で重要な指標となります。見えないものを可視化することは、人々がより正しい意思決定をすることに役立ち、それが今、テクノロジーの力によって可能になってきているのです。