卒業生の活躍
2019.09.02|最終更新日:2021.12.09|

<アメリカへ移住した卒業生> [後編]「大学は社会に挑戦するところ」 ~留学をきっかけに大学改革の道へ~

<アメリカへ移住した卒業生> [後編]「大学は社会に挑戦するところ」 ~留学をきっかけに大学改革の道へ~
本田 寛輔
University of Maine at Augusta(メイン州立大学アーガスタ校)
Director of Institutional Research and Assessment(IR・学習成果アセスメント室長)
[国際経済学部 国際経営学科(現在の経済学部 経営専攻)1998年3月卒業]
宮城県出身。大学の寮生活を経てロンドン大学SOASへ留学。2012年12月にニューヨーク州立大学アルバニー校で高等教育政策、大学運営の博士号を取得。現在は妻と4歳の息子と共にメイン州の自然を楽しみながら充実した生活を送っている。
目次

    海外で働いてみてわかった日本人としての強み

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    現在私は、メイン州のオーガスタ市にある州立大学でIR・学習成果アセスメント室長として勤務しています。この部署は在学者数、退学率、卒業率の分析や学生による授業評価、学生の学習実態アンケートなどを実施しています。

    専門職として前線で働いているうちは専門技能が問われますが、中間管理職やそれ以上になると、組織の政治を上手く処理する技能が問われます。たとえば私は中間管理職で全学のデータを扱う部署なので、政治的な配慮が問われます。データが出た時点で問題があると判断するであろう部署にまず掛け合い、そこで問題解決策などを模索してもらい、その草案ができた時点でデータを公表するなど、段取りには気を配ります。

    また、データを曲解しそうな学内構成員にはデータ分析の限界をよく説明し、会議の前に事前調整を済ませておきます。こうした事前の根回しや調整、そして合意形成までを促せるのが日本人としての強みだと思います。

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    2010年頃から日本でも私の専門分野である大学機関・調査研究や学習成果の診断に関心が高まり、様々な大学で講演をする機会に恵まれました。2年前、麗澤大学に講演で訪れた際、ゼミの大場教授の授業にゲストとして参加しました。私がアメリカの生活事情を話した後、大場教授が「海外の生活についてどう考えるか」という四象限の枠組みを提示しました。それに沿って、学生がどの分類に当てはまるか明示し、それぞれの意見を交換します。そして、大場先生が四象限分析の枠組を社会の様々な問題に援用し「共創空間」という形で取り組んでおられるのに感銘を受けました。

    ここ数年、私もアメリカやイギリスで専門分野の業務管理や意思決定支援に関して、いくつか四象限の分析枠組みを学会発表していたところだったので、師弟関係のような見えない線で繋がっていたのではと驚きました。大学時代に大場ゼミでKJ法や問題解決を視覚的に行う「フィッシュ・ボーン」などの思考法を学び、その基礎が今の自分の中に根付いていると実感しました。

    想定外の苦境はその後の糧になる。留学に完璧なプランはありません

    麗澤大学には海外からの留学生も海外留学を目指す日本人学生も多いため、「留学」はそれほど珍しいことではありませんでした。実は、他大学に進んだ友人に留学の話をすると、「頑張っているんだね、すごいね」で話が終わってしまうことがあります。しかし、麗澤大学では多くの学生が海外を視野に入れて学んでいます。

    学生同士の普段の会話では、「この国の文化はどうだとか、観光するならこの場所やレストランがお薦めだ」など、次から次へとたくさんの国の情報が飛び交います。多くの学生の意識が海外へ目が向いているからこそ、情報量が違うのです。在学中には気がつきませんでしたが、多くの学生が海外へ目を向けているということは、なかなか体験できないことだと思います。将来海外と繋がりを持ちたい方にとって、こうした環境に身を置けることはとても大事なことだと思います。

    留学には「完璧な計画」や「理想通りの経験」というものはあり得ません。逆に、想定外の苦境が山程ありますし、その苦労は後の人生での糧になります。

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    留学準備はできる範囲で調べ、あとは自分の意志が固まれば十分ではないでしょうか。それ以上は日本の外に出ないと分からないのですから。留学の相談を受けると「留学することで、日本の現実から逃げていないか」という悩みをよく聞きます。でも、日本の現実に向き合っていたら、留学する時間が取れませんよ。まずは思い切って海外に羽ばたいてください。ご家族がどうしても心配するのであれば、観光旅行や短期留学から始めても良いと思います。

    私は帰国子女ではありませんし、大学まで海外旅行すらしたことがありませんでした。そのため、麗澤大学の留学サポートには本当に助けられました。

    教職員の方々、留学帰りの先輩とオリエンテーションで集まる機会が何度もありました。個人で留学をした友達も1人いましたが、ビザから銀行残高証明、履修登録、住居の手配など、何から何まで大変だったと思います。私の場合は最初の留学は麗澤大学にサポートしてもらい実現できたので、とても感謝しています。

    優先順位は人それぞれ。人生設計には修正がつきもの

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    私が留学した当時とは違い、現在ではインターネットでいろいろな事ができるようになりました。パソコンやスマートフォンで英単語、発音、会話まで練習できますし、edXやCourseraといったサイトでは世界の有名大学の授業が無料で受けられます。これらを留学準備にどんどん活用してください。また、いくつかの大学では留学せずに、全てオンラインで日本にいながら学位が取れます。ただし、現場を知らないと机上の空論に成り兼ねないので、最終的には実際に現地に行くことをお薦めします。

    私は20歳で「大学経営の分野で働く」という目標を持ち、達成まで猪突猛進だったため、人生設計が他の人たちより数年は遅れたかもしれません。例えば、私の息子は今年5歳ですが、同級生は10歳くらいのお子さんがいる方が多いです。人生の優先順位は人それぞれですが、皆さんが留学を決意されるときは、長い目で見た人生計画も考えてみてください。まずは、先生や先輩、バイト先の知り合い、親戚など、年代の違う人たちと話して様々な情報や視点を得ながら、自分なりの考えを確立していくと良いでしょう。

    海外に長く住むと日本の良い部分も多く見えてくるようになります。一度日本を出たら二度と戻ってこれない訳ではありません。もし海外に出て自分の想像と現実が違かったら、方向修正すれば良いのです。留学や海外生活はあなたの人生経験をとても豊かにしてくれます。周囲の心配に振り回されず、自分の信念を大切にしてください。応援しています。

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