経済学部経営学科1年次春セメスターの履修必修科目で、国際学部グローバルビジネス学科にも設置されている「簿記原理」の授業。簿記の基礎を学ぶこの授業では、2021年4月から「反転授業」と呼ばれる授業形態を導入、さらにクラス分けによる「レベル別授業」を展開し、日本では他にない独自の学習スタイルに取り組んでいます。多くの授業では、講義後に復習・応用として課題や演習に取り組むことが一般的ですが、反転授業では、学生は授業前にオンライン教材で事前学習し、授業は復習・応用を中心に行います。現在、国内外の教育機関で少しずつ反転授業が導入されています。今回は、鈴木先生に反転授業を導入した理由やその成果を伺いました! ※2023年度入学者までが対象となるカリキュラムです。
授業は、学生が事前学習でわからなかったところをフォローする時間
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これまでの「簿記原理」の授業では、皆さんが考える従来の「授業」同様、講義で知識をインプットした後、復習や応用として演習に取り組んでもらっていました。しかしその方法では、授業時間内に全ての学生が満足する授業を行うのは難しいと思いました。学生によって理解レベルも様々だからです。また、そのやり方だと、学生が授業の後に自主的に演習に取り組み、しっかり復習するようにコントロールすることも難しい...。結局、あまり理解ができていない学生もいるのに、授業は先に進めなくてはならない状況になってしまい、私の中でずっとジレンマを抱えていました。
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そんな状況を改善するために導入したのが「反転授業」です。導入後の「簿記原理」の授業では、学生が事前に動画教材で学習をしてから授業に臨んでいます。そうすることにより、授業までに学生は基本的な知識は動画で学習済みなので、授業では、学生が事前学習でわからなかったところに絞って、重点的に解説ができます。学生が予習をしてくることで、授業時間はすべて、学生がわからない内容の確認をし、理解できるよう徹底的にフォローする時間に充てられるようになりました。
学生が事前学習をする仕組みづくり「反転授業×レベル別授業」
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反転授業はその成果が認められ、すでに複数の大学で導入されていますが、ひとつ、欠点があると考えています。それは事前に動画を見ない学生がいるということ。そうですよね、私も学生だったら見ないかもしれません(笑)。それならば学生が動画を見る仕組みをつくろうと、この授業では、セメスターの途中で2回、レベル分けテストを行い、習熟度別に4クラスに分けています。レベル分けすることで、学生がレベルに応じた授業を受けられるようになります。また、自分が今どのレベルにいるのかが明確になるので、学習する動機づけにもなります。
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しかも、テストは2回あるので、1回目のテストの点数が良くても油断すると2回目のテストでクラスが下がってしまう可能性があります。反対に、努力をすればクラスが上がる可能性があるわけですから、それはもう頑張りますよね。さらに、授業でも毎回、動画の内容に関連するテストを行い、その点数は成績評価に反映されるので、毎回欠かさずに動画を見て授業に臨まないと成績が下がってしまいます。このように学生が「頑張ろう」と思える仕組みを色々工夫しています。
学生の理解度が大幅アップする授業形態が「反転授業」
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動画教材は、この授業のテキストを執筆している教員5名が分担して作成し、YouTube(外部サイトに移動)で公開しています。教員がスライドを用いながら解説し、演習にも取り組む授業同様の内容です。YouTubeに公開することで、毎回授業前に学生がどのくらい事前学習をしているのか、動画の視聴状況をアクセス解析からチェックできるようになりました。繰り返し再生している学生や、授業前日、夜遅くまで視聴している学生、あるいは授業の後、復習に活用する学生もいて、皆さんの努力が目に見えてわかるので嬉しいですね。
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今年度(2021年度)から本格的に反転授業を導入しましたが、反転授業の効果はてき面です 。従来よりもスムーズに授業が進行しています。それにも関わらず、学生の理解度は例年よりも圧倒的に良いです。授業中に学生に質問しても答えがしっかりと返ってきますし、テストの点数も高いです。私が担当する授業は中級クラスですが、彼らに簿記の過去問題を出題しても、クラスの半数が満点を取りますよ。
小手先のテクニックではなく、簿記の本質を理解し、考える力を身につける
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簿記とは、簡単にいえば企業の成績表を作成するためのスキルであり、「簿記原理」はそのための基礎を学ぶ授業です。もちろん「日商簿記検定3級」の合格も視野に入れていますが、資格取得だけを目的とした授業ではなく、今後社会人になっても必要となる「学習の仕方」の習得も目的としています。資格合格のために必要な小手先のテクニックを身につけたところで、3級に合格する以上の力にはならない。この授業が目指すものはその先、簿記の本質を理解し、簿記のスキルを社会でどう活かすべきか、自分で考えて実践できる力を身につけることです。
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そのために授業では、簿記の様々なルールについて単に暗記するのではなく、なぜそのようなルールが必要なのか?根拠をわかりやすく、徹底的に解説しています。授業で使用するテキスト(外部サイトに移動)は、我々麗澤大学の教員が作成しているオリジナルのものです。麗澤大学の学生に是非学んでほしい内容を詰めこんでいます。簿記検定3級の全範囲を網羅するものではありませんが、このテキストと授業の内容をしっかり理解して学習を積み重ねていけば、2級や1級の試験はもちろん、社会に出ても十分通用する力が身につくはずです。
麗澤大学の反転授業は、オンラインで予習して、授業で復習・応用を行っていく、ハイブリッド授業と呼ばれる形です。 自宅で都合の良い時間に学修できることや、習熟度に応じたクラス分けをすることで意欲が結果に繋がりやすいのでしょう。 後編では、実際の授業の様子をレポートしていきます!