経済学部
2022.03.08|最終更新日:2023.10.04|

【前編】脱プラスチックを実現させたい。
学生の想いが詰まったビジネスアイデア「ベジパック」ができるまで

【前編】脱プラスチックを実現させたい。学生の想いが詰まったビジネスアイデア「ベジパック」ができるまで

経営専攻独自のプログラム「ビジネスイノベーションプロジェクト」の一環として開講される2年次生の授業「ビジネスデザイン」。履修する学生全員が毎年12月に開催される「麗澤大学SDGsフォーラム・学生プレゼンコンテスト」に参加し、2021年度は「ベジパック」のアイデアで勝山さんと金子さんのチームが2年次生にして後援会特別賞を受賞しました。「ビジネスデザイン」とはどんな授業? 「ベジパック」って? 授業を担当する近藤先生、勝山さんと金子さんにお話を伺います。

※「持続可能な社会の実現のため、未来にむけて、私たちができること」をテーマに、SDGsに関連した社会的課題の解決に関するアイデアを競う麗澤大学学内コンテスト。「社会貢献・ボランティア部門」「経済・ビジネスモデル部門」の2部門があり、2021年度が3回目の開催。

近藤 明人
経済学部 経営学科 教授
千葉県出身。東海大学大学院経済学研究科応用経済学専攻博士課程後期修了。経営者、ISOマネジメントシステム審査員など経営の実務的な立場としても活動。趣味はテニスと、ゼミナール生に誘われて始めたサバイバルゲーム。
勝山 朋美
経済学部 経営学科 経営専攻 2020年入学
千葉県出身。ディズニー映画が好き。一番のお気に入りは「塔の上のラプンツェル」。
※取材時、2年次生
金子 紀輝
経済学部 経営学科 経営専攻 2020年入学
埼玉県出身。麗澤大学硬式野球部に所属しており、在学中に2部リーグに昇格することが目標。
※取材時、2年次生
目次

    アイデアをビジネスにするまでのプロセスを学べる授業

    ―まずは「ビジネスイノベーションプロジェクト」について教えてください

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    • 近藤先生:新規ビジネスモデルの創出や経営課題分析、プレゼンテーションなど、ビジネスに不可欠な実践力の習得を目指すプログラムです。2年次の春セメスターの「ビジネスリサーチ」ではデータを用いた経営分析の手法を、秋セメスターの「ビジネスデザイン」ではアクティブ・ラーニングを通して新規ビジネスモデルを開発するプロセスを学び、3年次の授業「ビジネスイノベーションプロジェクト」では企業との合同プロジェクトに挑戦します。学生はそれまでに習得した知識を活かし、企業が実際に抱える経営課題を見つけ、仮説を立案してその解決策を考え、企業にプレゼンテーションするのです。実践的かつ段階的な学びを通して、基礎から確実にビジネススキルを身につけることができるプログラムで、今後は「ビジネスデザインコース」として展開していく予定です。

    ―「ビジネスデザイン」はどんな授業でしょうか?

    • 近藤先生:履修する学生全員が、毎年12月に開催される「麗澤大学SDGsフォーラム・学生プレゼンコンテスト 経済・ビジネスモデル部門」に参加することを目指し、3人のグループ単位でSDGsに関連したビジネスアイデアを約3ヵ月間かけて形にしていきます。最初の数回の講義でポイントを伝えた後は、学生主体でアクティブ・ラーニングを行います。アンケート調査やインタビューなど、すべて学生が考えて実践し、必要に応じて教員がアドバイス等を行います。本当の意味でのアクティブ・ラーニングを体験できる授業です。2022年度は、「麗澤大学SDGsフォーラム・学生プレゼンコンテスト」のほかに、学外のコンテストに参加することも視野に入れています。

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    コロナ禍で増えたプラスチック容器をどうにか削減したかった

    ――勝山さん、金子さんチームのビジネスアイデアについてお聞かせください

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    • 勝山:私たちが考えたのは、破棄される野菜から生まれた100%リサイクル素材でつくるお弁当容器「ベジパック」です。アイデア源は、私がニュースでたまたま目にした完全植物由来の新素材(以下、新素材)。東京大学生産技術研究所の酒井雄也先生らが考案した、野菜や果物などの廃棄食材を原料とする素材で、コンクリートのような建材としての使用が見込まれているものです。この素材を応用し、ほかにも活かせないかとチームの3人で話し合い、ひらめいたアイデアがお弁当容器です。ちょうど、コロナ禍によるテイクアウト・宅配需要の増加でプラスチック容器のごみが増えていることが問題になっていたので、どうにかしたいね、と。

    金子:さっそくプラスチック容器についてリサーチしてみると、使い捨てプラスチック容器を廃棄食材由来の新素材に代替できれば、海洋ごみや二酸化炭素排出量の削減、プラスチック原料の資源節約にもつながることがわかり、持続可能な社会に貢献する、すごく良いものができる! と確信しました。

    ―どのように具体化していったのでしょうか?

    勝山:アイデアが思いついたのは良いけれど、そもそも、その素材がお弁当容器として使えるのか? コストはどのくらいかかるのか? など、わからないことがたくさん出てきました。そんな時、近藤先生が「素材を考案した酒井先生にお話を伺ってみては?」とアドバイスしてくださいました。面識のない一学生が相手にしてもらえるだろうかと恐る恐るメールを送ると、酒井先生から「ぜひ、会ってお話ししましょう」と快いお返事をいただき、3人で東京大学生産技術研究所を訪ねました。

    • 金子:私たちのアイデアを酒井先生にお伝えすると「容器としての使用も大いにあり得る」と前向きな回答をしてくださいました。さらには野菜を粉末にしてプレスする製造工程を見学させてもらい、実際に新素材を使って試作品もつくらせていただきました。大がかりな設備がなくても製造できることがわかり、実現への期待が一気に高まりました。酒井先生の教え子で、その新素材を製品化する会社を起業した町田紘太さんにもお話を伺えたのも大きな収穫でした。

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    勝山:その後も酒井先生、町田さんとメールでやりとりを継続しながら、アイデアをどんどん具体化していきました。「ビジネスモデルキャンバス」というビジネスツールを使い、原料調達や販売経路などビジネスを成立させるために必要な要件を一つひとつ埋めていったのですが、コストを試算する段階で新たな問題が...。このベジパックをつくるコストが予想以上だったのです。実現は厳しいかな...と自信をなくしかけましたが、「SDGsに貢献できることを付加価値としてアピールしよう!」と、チームの3人で方針を固めました。

    金子:販売経路については、麗澤大学がスポンサーとして協賛する「千葉ロッテマリーンズ」の試合やイベント時にベジパックを使用していただけないかと打診してみることにしました。近藤先生にも同席していただき、担当者の方とお話しし、ロゴ使用やコストなどの問題により会場内での使用はまだ難しそうだけど、場外のキッチンカーでの使用ならあり得ると仰っていただき、チャンスを見出すことができました。

    協力してくれた方々の想いを背負い、100名以上の聴衆を前にプレゼンテーション!

    ―プレゼンコンテスト本番に向けてはどんな準備を行いましたか?

    勝山:1次審査はA4サイズ・1枚の企画書とアイデアを披露した動画を提出します。「経済・ビジネスモデル部門」には19チームが応募し、2次審査に進んだのは私たちを含む4チームでした。2次審査は10分間のプレゼンテーションです。近藤先生からいただいたアドバイスは一言「原稿を読むな」でした。だから皆、原稿は作らずに本番に挑みました。

    近藤先生:自分の想いやアイデアを相手に"プレゼント"するのがプレゼンテーションです。学生にはいつも、用意した原稿を読み上げるのではなく気持ちをこめて伝えようと教えています。すると学生は、とても良いプレゼンテーションができるようになるのですよ。

    金子:近藤ゼミナールの先輩方にも、スライドの作り方などについてたくさんアドバイスをいただき、おかげで本番に向けてどんどんブラッシュアップすることができました。

    ―本番はどうでしたか?

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    • 勝山:2次審査当日、企業や市役所からいらした外部審査員の方々、学長、教員や学生など100名以上の聴衆を前にして、緊張がピークに達しましたが(笑)、近藤先生にアドバイスをいただいた通り、「自分の想いをしっかり言葉にして伝えよう」と思いました。プレゼンテーションで強調したことは、100%リサイクル素材でつくるお弁当容器が社会にもたらすポジティブな影響、そして、"お弁当容器"というすでにあるものと新素材を掛け合わせて新しい価値を生み出した革新性、日本初の取り組みであることです。皆さんにしっかり伝えきれたと思います。

    金子:ほかの3チームは3年次生でしたので、プレッシャーを感じましたが、東京大学の酒井先生や町田さん、千葉ロッテマリーンズの方々など、私たちのために協力してくださった方々の気持ちに応えるためにも頑張ろうという想いでやり遂げました。

    勝山:結果は後援会特別賞を受賞。私たちが約3ヵ月間かけて形にしたものが、皆さんに認めてもらえたことが何より嬉しかったですね。酒井先生にもメールでご報告すると「おめでとう、よくここまで頑張りましたね」と、ねぎらいのお言葉をいただきました。

    ―おめでとうございました! 後編では、お二人がプロジェクトに取り組んで学んだことと、近藤先生からの評価を伺います。

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