大学の授業
2022.10.20

【後編】町を元気に!「廃校再生プロジェクト」への挑戦
~他学部とともに学ぶ「麗澤・地域連携実習」~

【後編】町を元気に!「廃校再生プロジェクト」への挑戦 ~他学部とともに学ぶ「麗澤・地域連携実習」~

滋賀県高島市にある旧広瀬小学校を舞台に繰り広げられる「三方よし×SDGsの廃校再生プロジェクト」。このプロジェクトは、「麗澤・地域連携実習※」の一環として、2021年11月にスタートしました。挑戦するのは、全学部から集まった1年次生12名。後編では、メンバーの4名とアドバイザーとして参加した2年次生1名に、プロジェクトの中身や今後の展開についてお話を伺いました!

※「麗澤・地域連携実習」とは、自ら動き、課題解決に取り組んでいくPBL(課題発見解決型学習)の最初の一歩として用意されている1年次を対象とした授業です。行政や企業が現実として直面する問題を取り上げ、学生による調査や提案内容の評価を大学と受け入れ先の市町村や企業が連携して行います。

今城 一夏(プロジェクトリーダー)
国際学部 国際学科 国際交流・国際協力(IEC)専攻 2021年入学
千葉県出身。好きなものは旅行と自然、ひまわりと線香花火。楽しいことが好きな行動派。
※取材時、1年次生
神谷 真吾
国際学部 国際学科 国際交流・国際協力(IEC)専攻 2021年入学
千葉県出身。静かに考えごとができる夜中の散歩が好き。趣味は音楽鑑賞でmiwa、Novelbrightのファン。
※取材時、1年次生
深井 祐希
経済学部 経済学科 観光・地域創生専攻 2020年入学
埼玉県出身。今はまっているのは任天堂のゲーム「スプラトゥーン」。フルーツやケーキを扱うお店でアルバイトをしている。
※取材時、1年次生
米元 未来
経済学部 経営学科 経営専攻 2021年入学
千葉県出身。2.5次元ミュージカルをはじめ、物語を間近に見ることができる舞台が好き。
※取材時、1年次生
駒田 仁(アドバイザー)
国際学部 国際学科 国際交流・国際協力専攻 2020年入学
宮崎県出身。趣味は映画鑑賞、音楽全般。ピアノとギターも弾く。
※取材時、2年次生
目次

    現地で感じたワクワク感を広く伝える「パンフレット」

    ―現地訪問後の動きをお聞かせください

    今城:私たちが目指したのは、第一に廃校によって消えてしまった子どもの声を町に取り戻すこと、第二に地域住民、旧広瀬小学校の卒業生、麗澤大学の「三方よし」を実現することです。目標に向けて現地訪問前の初期案も含めてアイデアを再考し、最終的に「パンフレット案」「記念式典案」「長期案」の3案に絞り込み提案することにしました。そして、2022年2月に行われた活動報告会で、旧広瀬小学校のある高島市の方や課題をご提供くださった麗澤校友会の方に向けてプレゼンテーションを行いました。

    ※三方よし:近江商人の経営理念として現在知られていますが、もともと麗澤大学の創立者・廣池千九郎(ひろいけちくろう/法学博士)が昭和初期に使用し始めたのが最初と研究で明らかになりました。「自分よし」「相手よし」「第三者よし」となる提案を学生は考えます。

    (参考):廣池千九郎記念館ウェブサイト

    ―まず、「パンフレット案」についてお聞かせください

    • 深井:より多くの方々に旧広瀬小学校のことを知ってもらおうと、パンフレットの制作を企画しました。現地に足を運んだことで、旧広瀬小学校には世代によってさまざまな楽しみ方があることがわかったので、若者層やファミリー層などのターゲット別にパンフレットを制作することを提案しました。
      「具体的にどのようなパンフレットが良いのだろう」と思案する中で、麗澤校友会の方々にもヒアリングし、アドバイスをいただきました。その時に学んだことは、「目的を見失わない」ということです。私たちは、活動報告会までに何とかそれらしい形にしなければならないと焦ってしまい、一体何のために制作するのか、本来の目的が置き去りになっていました。

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    私たちの本来の目的は、旧広瀬小学校の魅力を最大限に伝えることです。そのためにはシンプルに、私たちが旧広瀬小学校で感じたワクワク感や、心動かされたことを伝えるのが良いと思いました。報告会後も実現に向けて、高島市が生産に力をいれているオリーブや、麗澤大学のキャンパスにある廣池千九郎像をモチーフにしたデザインにして、高島市と麗澤大学らしさをアピールするのはどうか、などとアイデアを膨らませています。今後、グループ内でさらにアイデアを深めて、廃校施設の活用についてのニーズ調査も行い、パンフレットの制作を進めていく予定です。

    新しいつながりと思い出を生む「135周年記念式典」

    ―「135周年記念式典」とはどのような企画ですか?

    神谷:現地訪問の際、旧広瀬小学校は昨年の2021年11月に創立135周年を迎えていたことを知りました。この創立135周年という節目を記念して、卒業生が故郷高島市と再びつながり、広く来場を呼びかけることで地域の活性につながる機会をつくりたいと企画したものです。

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    • 人を惹きつけるインパクトがあるもの、且つ、旧広瀬小学校らしいものを考えていて思い出したのが、現地で目にした卒業記念品の数々でした。そこで、記念式典では新しい記念品をつくろうと、来場者全員でプールの底をペイントする「プールペイント」を提案しました。プールの底であれば町の景観に影響しないので自由にペイントできますし、プールサイドや航空写真で見てもインパクトがあります。SNSで発信することにより町に人を呼び込む宣伝効果も見込めます。世代を超えた交流ができる機会となり、旧広瀬小学校を象徴するものにもなるのではと思いました。

    さらに、もうひとつの目玉イベントとして「夕涼み会」を提案しました。これは現地訪問の際、地域の方が高島市を流れる安曇川(あどがわ)は夕日がとてもきれいだと教えてくださったことや、私たちが夜の校庭で花火をしてすごく楽しかった体験がヒントになりました。来場者に盆踊りやキャンプファイヤーを楽しんでもらうことで、新しい思い出と新しいつながりが生まれたら良いなと思います。卒業生への連絡やプールペイントの許可取得の方法などについては手探りの状態ですが、創立135周年を迎える2022年11月に記念式典を実現できるように、引き続きチームの皆で頑張っています!

    麗澤大学と高島市の魅力を組み合わせた「英語教育×カフェ」

    ―「長期案」はどのような企画ですか?

    米元:地域を長期的に活性化していくための旧広瀬小学校の活用アイデアです。学校といえば規則が多く、普段は学校に関係する人しか立ち入れないという印象があるからこそ、自由に使える場として「かいほう」し、非日常を楽しんでほしいという想いから「開放的・解放的な場所」をテーマに施設の活用法を考えました。そのひとつが「英語教育×カフェ」です。麗澤大学といえば「国際性」ということで、英語表記のメニューや英語のワークショップなどにより、英語を楽しく気軽に学べるカフェを企画しました。メニューには、高島市産のアドベリーやオリーブをはじめ、現地訪問の際に町中の至る所で実っているのを見かけた柑橘など、地域の美味しいものを取り入れて、地域の魅力として発信していきたいと考えています。目指すは、地域の方も遠方からのお客さまも、気軽に立ち寄ることができるコミュニティスペースです。予算や英語スタッフの確保など課題は多いですが、これから市場調査などを行い、実現の可能性を探っていきます。

    学部混合で学んだからこそ、できた体験

    ―学部の垣根を越えたチームで取り組んできていかがでしたか?

    • 米元:他学部の学生と接点を持てたことがまず嬉しかったです。たとえば国際学部のメンバーは行動先行で自由奔放、経済学部は常に冷静、外国語学部は感性豊かというように、視点も行動パターンも違うので、一緒に行動していて新鮮でした。

      深井:私たち経済学部だけで現地に行っていたら、ドッジボールはしなかったはずです(笑)。今回のように、心動かされる体験がたくさんできたのは、個性豊かなメンバーがいたからこそだと思います。

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    ―プロジェクトに参加した感想をお聞かせください

    米元:メンバーは皆それぞれ魅力的で、私にはない良いところを皆からたくさん学ぶことができました。この経験を忘れずに、社会に出てからも、人の良いところをどんどん取り入れて成長し続けていこうと思います。

    神谷:プロジェクトを進める中でいろんな人の意見を聞く機会があったのですが、そこで気づいたのは、私が良いと思うことについて、ほかのメンバーや違う立場の人々の考え方はそれぞれ異なるということです。今後どんな取り組みをする時も、視野を広く持って、関わる人皆の気持ちを大切にしながら進めていきたいです。

    深井:今回「パンフレット案」のチームリーダーを務め、リーダーの役割を初めて経験しました。慣れないことばかりで悩むこともありましたが、状況を俯瞰し、皆の意見に耳を傾け、決断することの大切さを学ぶことができました。リーダーを務める経験ができて良かったです。

    今城:プロジェクトのおかげで、何か事を起こす時に一番大切なのは人とのつながりや、人の想いだと実感しました。これからも旧広瀬小学校にたくさん詰まっている想いを大切にしながら、一大学のプロジェクトとして廃校活用を成し遂げたいです。麗澤大学や千葉県、滋賀県をも越えて、いろんなところに私たちのワクワクが伝わっていくプロジェクトにしていきたいです。

    ―アドバイザーとして参加した駒田さん。感想と、今後の展開についてお聞かせください

    駒田:想像していた以上に1年次生は自分たちで考え、積極的に行動していたので、アドバイザーとしての出番はほとんどなかったのですが、その分、私たち2年次生も1年次生の皆と一緒にプロジェクトを楽しみ、チームの一員としてとても良い経験をすることができました。

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    • 麗澤・地域連携実習としてのプロジェクトは活動報告会で終了しましたが、2022年4月からは私が代表を引き継いで「旧広瀬小学校活用プロジェクト」として再スタートを切ります。11月12日に「カラフル・パワフル・ひろせフル -Coloful・Powerful・Hirosefull- 〜旧広瀬小学校開放日〜」の開催が決定していて、アート展示と制作体験、ライブペイントパフォーマンスなど楽しい催しを予定しています。そのプレイベントとして学内で「手形アート」も開催します。リーダーを務めるからには、メンバー全員の個性が輝くプロジェクトにして、最善の成果を上げたいいきたいと思っています。

    ※本プロジェクトには前年の麗澤・地域連携実習に参加した2年次生4名がアドバイザーとして参加しました。

    どんな時も妥協せず、一生懸命に、マイペースに進んでいこう!

    ―最後に、高校生へのメッセージをお願いします!

    • 神谷:大学生になったら、麗澤・地域連携実習のような課外活動にも積極的に参加することを強くおすすめします。学生生活が2倍も3倍も楽しくなりますよ!

      米元:教室から外に飛び出してみると、そこで学べることがたくさんあります。皆さんもぜひ、いろんな活動にチャレンジしてみてください。不安でも、一人ではないので大丈夫です! サポートしてくれる仲間に、きっと出会えますよ。

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    深井:皆さんの周りにいる友達や先生、普段の高校生活から吸収できることは、実はたくさんあります。今いる環境をどう活かすかは自分次第です。最大限に活かして、自分を伸ばしていきましょう!

    駒田:コロナ禍によって活動が大きく制限され、我慢が求められる状況が続いていると思います。そんな中でも、できることはあるはずです。どんなに小さいことでも良い、人と比べなくて良い、自分なりにできることに取り組んでみましょう。どんな時も妥協せず、一生懸命に、そしてマイペースに進んでいけばきっと大丈夫です。

    今城:私は今回、アドバイザーの先輩方にたくさん相談して助けていただきました。人に頼ると問題が解決するだけでなく、そこからさらに計画が前進したり、考えが広がったりしていきます。いっぱいチャレンジして、困った時は周りに助けてもらいながら、新しい世界の扉をどんどん開けていきましょう!

    「麗澤・地域連携実習」について
    籠 義樹 地域連携センター長/経済学部 経済学科 教授

    今回、現地訪問における地域住民へのヒアリングなどのつなぎ役は担当教員が行いましたが、実際の現地調査は学生主体でどんどん進みました。学生たちは臆することなく現地でさまざまなヒアリングを行っており、その行動力と自主性に圧倒されました。2年次生のアドバイザーの適切な助言もあり、素晴らしい成果を上げていると思います。

    麗澤・地域連携実習は、PBLの学びを1年次生のうちから体験し、その後の自らの発案によるPBLにつなげていくことを狙いとして、2017年に開始されました。成果のクオリティは年々向上し、連携先企業の業務に実際に採用していただく例も出てきています。フィールドワークが主体のため、コロナ禍では大きな痛手となりましたが、学生の参加意欲は教職員の想像を遥かに超えて高く、オンラインを活用した調査やグループワークにも見事に適応していきました。今後、教職員のバックアップ体制をさらに充実させ、学生のより良い学びにつなげるとともに、その成果が連携先の業務に資するものとなるよう、今後も取り組んでいきたいと思います。

    【麗澤・地域連携実習】
    対象:全学部・1年次生
    2021年度実績:75名の学生が9つのテーマに分かれて実施
    地域連携の取組み、2021年度成果報告書はこちらから

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