卒業生の活躍
2022.10.27

【後編】二度目の起業で見えた本当にやりたいこと。マーケティングでトップ企業へ

【後編】二度目の起業で見えた本当にやりたいこと。マーケティングでトップ企業へ

ビッグデータとテクノロジーを駆使した、最先端のマーケティング戦略で企業の成長をサポートする「株式会社CINC」(以下、CINC)を創業し、経営者として約130名の社員を率いる石松さん。その道のりは決して平坦ではなく、さまざまな試練に遭いながらも「あきらめなかったから、今がある」と語ります。後編では、起業を決意してからCINCを創業するまで約10年間の道のり、そしてこれから目指す未来について伺います。

石松 友典
株式会社CINC(東証グロース市場上場)代表取締役社長
[国際経済学部 国際経済学科(現在の経済学部 経済学科)2004年3月卒業]
千葉県出身。人材派遣ベンチャー企業、外資系証券会社、外資系銀行、ITベンチャー企業などでの勤務を経て、2014年に株式会社core(現・株式会社CINC)を創業。趣味はゴルフとテニス、3歳の子どもの子育て。
目次

    新しい同僚は、数学の天才やハーバード大学出身者。世界トップクラスの秀才と同じ土俵に飛び込む

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    • 転職先としていくつか選択肢がある中、最も厳しい環境で自らを鍛えようと選んだのがフランスの証券会社、ソシエテ・ジェネラル証券株式会社でした。周りの同僚は、東京大学では物足りずハーバード大学に行ったとか、数学オリンピックで金メダルを獲ったとか、世界トップクラスの頭脳を持つ人たちばかりでした。そんな環境で働けば、自分も彼らと同等の実力をつけられるのではないかと飛び込んだのです。しかし、これがもう大変過ぎて、毎日泣きながら仕事をしていました。

    そこでの業務は、デリバティブという株式から派生する金融商品をつくって、地方の証券会社に販売するというものでした。証券や金融工学などの知識はほぼなかったので、毎日夜中まで勉強していたのですが、なかなか仕事に追いつくことができませんでした。でも実は、それらの知識は大学の授業で学んでいたことだったので、「もっと大学時代に勉強しておけば良かった!」と、深く後悔しました。あとは英語です。職場には中国人やフランス人のスタッフもいるので、会議もメールもすべて英語でやり取りをしていました。私は大学時代にアメリカ短期留学の経験があり、多少は話せると自負していたのですが、ビジネスではまったく通用しなくて悔しい思いをしました。ディスカッションに入りたくても英会話についていけず、同僚には「丁寧語ってわかるか?」とあきれられる始末でした。この体験からも、高校生の皆さんには、大学に行ったらしっかり勉強することをおすすめします(笑)。英語もビジネスで使えるくらいのスキルをつけておけば、仕事の幅が広がりますよ。

    リーマン・ショック、リストラ、起業失敗。困難に衝突しながらも、ついにCINCを創業

    ソシエテ・ジェネラル証券株式会社での仕事はあまりに大変で、もう辞めるしかないんじゃないか、と思うこともありましたが、どうにか食らいついていくうちに少しずつできることが増え、営業成績も上がっていきました。すると、アメリカのJPモルガン証券株式会社からヘッドハンティングされ、2度目の転職をすることになりました。そこへ起きたのが、リーマン・ショックです。外資系金融企業にリストラの波が押し寄せ、ある日、私も人事に呼ばれて解雇を言い渡されました。その日のうちに荷物をまとめて会社を去り、この時はさすがに「最悪だな」と思いました。

    • その次に入社したのが、イギリスの大手銀行、スタンダードチャータード銀行です。一定以上の資産をお持ちのお客さまを対象とする銀行で、私は主に経営者のお客さまを担当したのですが、リーマン・ショック後で世界的に不況だというのに、そこで対応した経営者の方たちは皆、元気いっぱいだったのです。彼らの眩しい姿を見て、「そういえば、僕は起業したいんだった」と、ふと思い出しました。そして、起業するなら今じゃないか、とピンときたのです。そこからすぐに事業アイデアを練り始めて、2009年に最初の起業をしました。

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    当時は、広告媒体がテレビからインターネットに移行しつつあり、YouTubeが出始めた頃でした。私が立ち上げたのは、YouTube向けの映像制作代行とインターネット版テレビショッピングのサービスを提供する会社でした。今でいうユーチューバー、ライブコマースの先駆けですが、時期が早すぎたのと、リーマン・ショック後で資金調達が難しかったことなどが重なり、事業はうまくいかず、数年で閉業することになりました。

    その後に入社したのはIT関係のベンチャー企業です。ここでは、新しいビジネスモデルを構築する企業がどうやって成長していくのか、Webマーケティングとはどういうものなのかなど、たくさんのことを学ばせていただきました。会社が成長し、自分も役職が上がるにつれ、自分自身が会社をつくって実現したいことが明確になっていき、2014年、仲間と2人で2度目の起業を行いました。それが、現在の株式会社CINCです。創業0年目は、信用も何もないところから「取引させてください」と営業して回り、毎日朝から夜中までぶっ通しで仕事をしていました。それまでの人生で一番大変でしたが、ようやく自分が本当にやりたいことができるワクワク感でいっぱいでした。

    独自開発ツール「Keywordmap」。ビッグデータをもとに、顧客ニーズの発見と課題解決を可能に

    今はどんな企業もインターネットを使って商品やサービスを販売する時代ですが、多くの企業がインターネットで集客する方法がわからなかったり、マーケティングのための時間を割けなかったりといった課題を抱えています。そうした企業に向けて、私たちCINCは、インターネットを通じた売り上げを効率よく最大化するためのツールとコンサルティングサービスを提供しています。

    情報が溢れるインターネットの世界で、自社の商品・サービスを知ってもらうために重要なのは、顧客のニーズに合った情報を発信することです。では、どのようにすれば顧客のニーズがわかるのでしょうか? 皆さんも、欲しいものだったり興味のあることだったり、何か知りたいことがあればGoogleなどの検索エンジンで検索すると思います。その検索エンジンやSNSに入力されるキーワードは、消費者の興味関心を知る上で重要な手がかりとなります。

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    • 私たちが独自開発した分析ツール「Keywordmap」には、さまざまなWebサイトから収集したキーワードのビッグデータが蓄積されています。私たちはこれを自然言語処理技術やAIなどを使って解析することによって、顧客のニーズを見つけ出し、顧客が見たいと思うコンテンツ、購入につながるコンテンツをつくることを可能にしているのです。クライアントは大手企業から中小企業まで、業種も多岐にわたり、Keywordmapも現在約500社にご利用いただいています。

    社内では、分析ツールを開発するエンジニア、データを分析してマーケティング戦略を練るコンサルタントなどが活躍しています。どの職種であれ、マーケティングの世界を目指すなら、専門知識の前に、人への興味があることが必要です。なぜなら、マーケティングとは人に伝え、人を動かすことだからです。人に強い興味関心があって、社会に対する理解があり、その上で「誰に、何を届けたいのか」を心に明確に思い描ける人。そういう人が良いアウトプットができる、と私は考えています。

    2014年に創業したCINCは、2021年に東証マザーズ上場を果たし、仲間も100人以上に増えました。これからもっと仲間を集めて、より大きなことに挑戦していきたいと思っています。そしてCINCに入った仲間が、ここで頑張ることで一流のマーケターになり、どこへ行っても通用する実力をつけられるようにしたいと考えています。目指すは、企業からも、一流のマーケターを志す人からも「マーケティングならCINC」と認められる、マーケティングのトップ企業です。

    想いを持ち続けて行動していれば、少しずつ前に進める

    私が高校生に伝えたいことは、自分の人生を本当に楽しみたいのであれば、やりたいことを諦めないでほしいということです。辛くても、失敗しても、想いを持ち続けて、今できることを行動に移していきましょう! そうすれば確実に力がついていきますし、少しずつでも前進することができますよ。

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