経営学部
2024.02.08

【前編】破棄されてしまう規格外バナナの新たな活用方法を生み出し、SDGs達成を目指す「バナナビールプロジェクト」

【前編】破棄されてしまう規格外バナナの新たな活用方法を生み出し、SDGs達成を目指す「バナナビールプロジェクト」

経済学部 経営学科 近藤明人教授のゼミナールに所属する学生のグループが、通常破棄されてしまう規格外未使用バナナの新たな活用方法を生み出し、「SDGs探求AWARDS 2022」(主催:一般社団法人未来教育推進機構)学生部門において優秀賞を受賞しました。バナナビールプロジェクトとは、一体どのようなものなのでしょうか? 前編では、プロジェクトリーダーを務める秋山詩歩さんに活動内容について伺います。

秋山 詩歩
経済学部 経営学科 経営専攻 2020年入学
茨城県つくば市出身。好きな食べ物はバナナ。可愛いキャラクターや韓国のイラストレーターが制作するものが好き。
※取材時、4年次生。
目次

    「新規性」と「わかりやすさ」を追求したプレゼンテーション

    大学3年次の秋、毎年、学内で開催される「麗澤大学SDGsフォーラム」の学生プレゼンテーションコンテストに参加するために、ゼミナールの中でグループを組んで活動を始めたのが、バナナビールプロジェクトが始動するきっかけでした。プレゼンテーションのテーマを考える時に、ゼミナールの担当教員である近藤先生から、「新規性」と「わかりやすさ」の2つが重要だとアドバイスをいただきました。

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    • メンバーと様々なアイデアを出していく中で、私は自分が好んでよく食べるバナナに着目し、「バナナなら誰もが知っているものでイメージしやすいのでは?」「皮を丸ごと使えたら面白そう」と思ったので、バナナに関する問題・課題を調べることにしました。調査を進めていくうちに、生産地におけるバナナ農家の労働問題、貧困問題、健康被害、そして中身は食べられるのに見た目の傷などで規格外とされてしまうバナナの問題があることがわかりました。

    これらの問題にアプローチすることは、SDGsの17の目標における、「1.貧困をなくそう」「3.すべての人に健康と福祉を」「12.つくる責任つかう責任」などの実現につながっていくと思い、破棄されてしまう規格外未使用バナナを皮ごと活用したバナナビールの開発と販売、そして、その売り上げの一部をバナナ農家へ寄付する仕組みをプレゼンテーションで提案することに決めました。

    「皮まで丸ごと使いたい。」試作の苦労

    • ゼミナール内では私たちの活動以外にも様々なプロジェクトが動いていているのですが、その中で、他のチームのコーヒービールのラベル制作に携わってくださっていた柏ブルワリー(千葉県柏市にある醸造場)の梅崎様との出会いがありました。バナナビールのビジネスモデルと私たちのビール開発への熱い想いを伝えたところ、「いいじゃないですか。ぜひやりましょう!」と快くお引き受けくださり、バナナビールの試作開発が本格的に始まりました。

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    私たちの気持ちとしては、SDGsの目標であるフードロス削減のテーマに沿った「規格外バナナを皮まで丸ごと活用する」という条件にこだわりたかったのですが、皮の苦味がどのくらい出てしまうかなど問題点は山積みで、試行錯誤の連続でした。柏ブルワリーの梅崎様は、バナナはそのまま入れるのではなく、全部つぶしてペースト状にして入れた方がいいのではないかと、いくつもの試作品のパターンを作ってくださり、一緒に検討してくださいました。バナナビールの試作開発に辛抱強くお付き合いくださった柏ブルワリーの皆様には感謝しかありません。

    現場に何度も足を運び、調査を繰り返した日々

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    • 試作開発に向けて、気になる点は事前にすべて洗い出し、企業や専門家の方にメールでご連絡して、面会や現地調査を繰り返し行いました。柏ブルワリー様には何度も足を運びましたし、他にもバナナジュースの専門店や、バナナの皮の栄養素に詳しい他大学の先生、フィリピンのバナナ生産者への支援などを行っているNPO法人APLAの方など、ご相談先は多種多様です。現地調査に行くことでわからなかったことが見えてきて、足を使って現場に出向き、担当の方に直接教わることはとても大事だと実感しました。

    皆様が多大なるご協力をしてくださり、うれしく思う一方で、「その期待に応えたい」「皆様のために頑張りたい」という気持ちが大きくなり、自分を追い込みすぎて、苦しくなってしまった時期もありました。そんな時に、近藤先生が「自分だけのために進めると苦しくなるから、相手のためにと思って本来の目的をもう一度振り返ってみたら?」と励ましてくださいました。その言葉でハッとし、バナナビールを通してフードロス削減に貢献すること、バナナ生産者がバナナを育てている気持ちを応援すること、新しいものを世の中に出したいという目標に向けて、また一から立ち上がることができたのです。

    社会貢献に立ち返って完成したバナナビール

    • これまで様々な壁に直面しましたが、ラベルやボトルのデザインも出来上がって、いざ完成した試作品を手にした時は、チーム全員が感無量でした。そして、いよいよ迎えた「麗澤大学SDGsフォーラム」での学生プレゼンテーションコンテスト。結果は、なんと経済部門 最優秀賞を受賞、さらには一般社団法人未来教育推進機構が主催する「SDGs探求AWARDS 2022」では、総計1,671件の応募の中から選んでいただき、学生部門 優秀賞を受賞することができました。このような結果が出た時は、本当に嬉しかったです。私たちのバナナビールプロジェクトが多くの方々に認知され、SDGs目標の達成に近づく小さな1歩を社会に伝えることができたと感じました。

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    受賞後も、このバナナビールプロジェクトを一過性で終わらせず、フードロス削減を継続するため、2年目は幕張ブルワリー株式会社様のもとで新たに再スタートを切りました。今回は、実際にバナナビールの開発と商品化を目指し、その資金調達のためにクラウドファンディングを実施することを計画しています。たくさんの方々と一緒にバナナビールで乾杯できる日が待ち遠しいです!

    ※2023年9月15日~10月30日の間、クラウドファンディングを実施。目標金額を達成し、合計で1,308,350円ご支援いただくことができました。

    ― 一つひとつ難題をクリアしながら、バナナビール開発に向けて日々精進している秋山さんとプロジェクトチームの皆さん。後編では、秋山さんが麗澤大学に入学したきっかけと、経済学部のファミリービジネスコースで学び大切だと感じたという「人づくり」について伺います。

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