経営学部
2023.12.25|最終更新日:2024.04.22|

『フレームワーク』とは?ビジネスでよく利用されるもの、メリット・デメリット、経営との関係を解説します

『フレームワーク』とは?ビジネスでよく利用されるもの、メリット・デメリット、経営との関係を解説します

【麗澤大学監修】 物事をスムーズに進める上で、論理的思考は欠かせません。最近は、企業経営やビジネスにおいてフレームワークが注目されるようになりました。フレームワークを用いると、考えるテーマや目的が明確になるため、論理的に物事を進めやすくなります。 そこで、フレームワークの基礎知識や注目される理由、メリット・デメリット、経営との関係性について、麗澤大学経営学部の横田理宇先生に解説してもらいました。

目次

    フレームワークって何?

    フレームワークとは、物事を論理的に考える、かつ効率的に進める上で活用する型のことです。ビジネス研究における歴史の中で、コンサルタントら専門家がクライアントや顧客と接しながら、思考のアプローチ方法やビジネス創出の方法をモデル化しました。

    目的に応じてそれぞれを型として開発したのが、フレームワークです。現代社会では消費者の行動パターンなどが細かく変化するため、フレームワーク自体も随時アップデートされています。

    ビジネスで使われる意味

    ビジネスの分野では、事業に関する情報の整理といった現状の把握とその分析、目標達成や課題改善に向けた意思決定のプロセスにおいての判断材料として、フレームワークが活用されています。なかでも、マーケティングにおいては一般化されています。

    IT業界で使われる意味

    IT分野では、アプリケーションやWeb、ソフトウェアを効率よく開発するためにフレームワークが使われています。例えば、開発過程で「必要な機能が網羅されているか」を検証することにフレームワークを用い、製品やサービスの枠組みを決めるのに役立っています。

    ビジネスに役立つフレームワークの種類と特徴

    経営においては、さまざまなフレームワークが戦略やマーケティング、組織マネジメントなどの目的に応じて使い分けられています。ビジネスモデルなどを検討する際には、1つの型では網羅できないため、いくつかのフレームワークを組み合わせて考えることもあります。

    あるフレームワークで検討したが、後に対処できない事象が発生し、「別のフレームワークで検討したらうまく対応できた」といった流れで、ビジネスモデル自体もバージョンアップさせていくのが一般的です。

    MECE(ミーシー)

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    MECEは和訳で「モレなく、ダブりなく」という意味です。フレームワークの基本的な概念であり、正確な判断が必要な場面で物事を整理する際に用いられます。ビジネスに限らず、論理的な思考を必要とする場面で数多く使われています。

    MECEそれぞれの単語と意味は下記です。
    ・Mutually=お互いに
    ・Exclusive=重複せず
    ・Collectively=全体に
    ・Exhaustive=漏れがない

    STP分析

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    商品やサービスを販売する際、マーケティング戦略を組み立てるときによく利用されるフレームワークです。STP分析では市場を細分化し、狙う市場ターゲットを絞り込み、その中で自社の立ち位置を決めていきます。ポジショニングを考える場面では、ポジショニングマップを用いて自社の販売戦略を練っていきます。

    STPそれぞれの単語と意味は下記です。
    ・Segmentation=区分け
    ・Targeting=ターゲット(標的)
    ・Positioning=立ち位置

    AISAS(アイサス)FW003.jpeg

    AISASとは、インターネットやSNSの普及により新たに生まれた「消費者の購買プロセス」を表すフレームワークです。2005年6月に株式会社電通が商標登録しました。消費者が情報を受け取るだけだった従来の購買プロセス「AIDMA」の一部が、「Search(検索)」「Share(共有)」に置き換わっています。

    AISASそれぞれの単語と意味は下記です。
    ・Attention=注意
    ・Interest=興味
    ・Search=検索
    ・Action=行動
    ・Share=共有

    3C分析

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    3C分析は顧客・競合・自社の3つの関係性から現状を分析するフレームワークです。マーケティングにおいて重要な市場や競合といった外部環境と自社の内部環境を分析し、事業を成功に導くヒントやカギを探るために3C分析が活用されています。

    3Cそれぞれの単語と意味は下記です。
    ・Customer=顧客
    ・Competitor=競合
    ・Company=自社

    SWOT分析

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    SWOT分析は外部環境と内部環境、自社の強みと弱みをマトリックスにして分析を行うフレームワークです。経営戦略においては、企業や事業の置かれた現状を把握するために用いられます。2つをかけ合わせると行動指針が浮き彫りになり、「『弱み×脅威』で例えると弱みを把握・理解して脅威を回避し、リスクを抑える」と解釈できます。

    SWOTそれぞれの単語と意味は下記です。
    ・Strength=強み
    ・Weakness=弱み
    ・Opportunity=機会
    ・Threat=脅威

    ビジネスモデルキャンパス

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    ビジネスモデルキャンパスは新規事業の創出、既存ビジネスの改善を行う際によく使われるフレームワークです。9つの要素で構成され、ビジネスにおける重要な要素を整理できます。1つのビジネスモデルを設計図のような形に落とし込むため、全体像や強み弱みを可視化できる特徴があります。

    ビジネスモデルキャンパスの9つの要素
    ・顧客セグメント(Customer Segments)
    ・顧客との関係(Customer Relationships)
    ・価値提案(Value Propositions)
    ・チャンネル(Channels)
    ・収入の流れ(Revenue Streams)
    ・コスト構造(Cost Structure)
    ・主な活動(Key Activities)
    ・主なリソース「経営資源」(Key Resources)
    ・パートナー(Key Partners)

    フレームワークが注目される理由

    ビジネス分野では、ひと昔前まで既存製品を一部改良して翌年に再販売するようなモデルで収益を上げることが通用していました。ただ、情報化社会の進化に伴って消費者行動や市場の変化によってビジネスの競争環境が大きく変わりました。

    消費者が従来とは違った切り口でインターネット模索を行うため、新たに製品やサービスを企画したりPRしたりする際には、これまでにない創意工夫や戦略的視点が求められています。重要なのは、消費者の声を拾い上げ、さまざまな場面で生かすことです。

    フレームワークはコンサルタントら専門家が論理的な背景をもとに生み出したビジネスに応用できる型のため、新しく製品やサービスを打ち出す方法を探る際に役立ちます。フレームワークを活用すると、チームやグループ、組織のメンバーが同じ型に沿って議論を進められるため、次のような効果が生まれます。

    1.目標までの道のりを可視化しやすい

    1つのフレームワークを共有言語として使うことで、チーム内に共通認識が生まれます。そうすれば設定した目標に対する道筋が可視化しやすくなり、定まった方向性で議論が行いやすくなります。

    2.改善点の洗い出しを行いやすい

    チームとしてフレームワークを共有することで共通認識を持って意見を出し合えるため、議論の内容が集約しやすくなります。同時に、どのようなことにズレが生じ、何が噛み合っていないのかを可視化できるため、改善点の洗い出しができます。

    3.現状の整理・分析を実践しやすい

    フレームワークを使うと、チーム内で1つのテーマに多様な意見があることを認識し把握することが可能になります。すると、現状を整理することに大いに役立ち、分析を実践しやすくなります。

    フレームワークを活用するメリット

    チーム全員で1つの製品やサービスをつくる際、フレームワークのメリットを理解した上で活用することが重要です。フレームワークのメリットには、次の3点が挙げられます。

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    1.論理的な思考に役立つ

    フレームワークは物事を考える方向性を明確化し、構築された型であるため、あれこれ余計な考えを働かせたり無駄な部分を考慮したりせず、目標に向かって思考を深められます。

    例えば、チーム内でフレームワークに沿って思考を進めると、共通する型の中で互いの意見を整理できるため、論理的に思考を積み上げられます。論点がぶれずに意見を重ねられるので、プロジェクトの推進など多くの場面で利用されています。

    2.共通認識の構築に役立つ

    多くの場面でフレームワークが用いられるのは、共通認識を構築しやすいからです。1つの型に沿って意見をまとめる過程の中で、考え方の違いや認識のズレに気づき、どうすれば1つの目標に向かって進められるかを明確にできます。

    個人で修正する部分やチームとしてルール化する部分など、共通認識の構築に大きく役立ちます。そうすれば、コミュニケーションの質も高まります。

    3.仕事の進行管理に役立つ

    フレームワークの活用により共通認識が構築できると、目標に対して今どの段階にあるのかを把握できるため、仕事やプロジェクトの進行が管理しやすくなります。全体、あるいは個人のタイムマネジメントを行うことにも一役買っています。

    フレームワークのデメリット

    フレームワークはあくまで1つの型なので、とらわれすぎると、新しい考えやアイデアが思いつかないというデメリットを持ち合わせています。デメリットには、次の3点があります。

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    1.異なるアイデアを生みにくい

    フレームワークを活用することは、個人およびチームの思考を1つの型に当てはめていくことです。そのため、物事がうまく進まないなど壁にぶつかった場合、フレームワークの外に目を向けられない状態に陥る可能性が潜んでいます。

    実は、課題や答えがフレームワークの外に存在しているかもしれません。つまり、異なるアイデアや考えを生みにくいというデメリットがあります。所々で立ち止まり、フレームワークの外に目を向け、アイデアを出したり考えたりすることも大切です。

    2.進行中の計画を変更しにくい

    プロジェクトを推進する上で、フレームワークは羅針盤のような働きを持ちます。例えば、異なる部署をまたがって物事を進行する場合、途中で計画変更が生じたときにフレキシブルに対応しづらくなるデメリットがあります。

    フレームワークを使って出した結論はあくまで仮説です。結論どおりに物事を動かしてうまく進行しなかった場合は、仮説が間違っていたと切り替え、計画を変更することが必要だと考えましょう。別のフレームワークを試すことも1つの手段です。

    3.別の手段・方法に目を向けにくい

    フレームワークに慣れると活用が目的化してしまい、当てはまらない状況にぶつかっても、別の手段や方法に目を向けにくくなります。フレームワークから導き出した答え、結論はあくまでも仮説なので、エラーが出ることもあります。それを前提に、柔軟性を持ってフレームワークを使いこなすことが大事です。

    フレームワークと経営の関係性

    フレームワークとは、新しいビジネスの創出、イノベーションの創出、企業の業務改善などに役立つ思考の型です。経営視点で掘り下げると、働く職場、経営する自社のマーケットなどさまざまな環境にどのような問題や課題を抱えているかを発見できます。

    また、見つけた問題や課題を解決するため、どういう意思決定を実行していけばいいのか、そのプロセスを可視化する1つの型になります。今後の社会で必要不可欠なことは、次の2つのポイントです。

    ・問題を自ら発見すること
    ・見つけた問題を自ら解決するように行動すること

    フレームワークはそのための手段や方法として積極的に使えるものですが、それを使えば完璧というわけではないことは理解しておきましょう。

    麗澤大学経営学部が取り組むフレームワーク

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    経営学部では「実学」「デザイン思考」「データサイエンス」をキーワードに、経営に直結した学びとして多様なフレームワークを学びます。フレームワークはあくまで思考の手段や方法なので、それぞれに適した活用方法があります。

    まず使い慣れることが大切なので、授業ではいろいろなフレームワークを使ってもらいます。学ぶ工程は「使う、慣れる、身につける」といった流れです。学生が卒業する頃には、多様なフレームワークの種類と用途を覚えた上で、どれを活用すれば何が実行できるのかを理解できているはずです。

    経営学部が育てたい人物像は次のようなイメージです。
    ・自分で課題を見つけて解決できる
    ・課題解決とビジネスをつなげて考えられる

    経営学部では「新規ビジネスを考えるポジションにつく」「会社を起業する」「事業を立ち上げる」「社内で何か新しい企画を考えて進める」など、就職後に即戦力として活躍できる人材を育てられるカリキュラムを組んでいます。

    例えば、新設の「ファミリービジネス専攻」では、事業の後継者である卒業生がビジネスフレームワークなどを活用し、二次創業(既存事業とは異なる新事業・新分野に挑むこと)する勢いで積極的に事業を展開していただけたらいいなと考えています。

    麗澤大学サイト「データサイエンス教育」
    https://www.reitaku-u.ac.jp/about/global_leader/#linkDataScience

    合わせて読みたい記事
    「デザイン思考とは?ビジネスシーンで注目されるアプローチ法について知ろう」(Reitaku Journal)https://www.reitaku-u.ac.jp/journal/1776597/

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    「ファミリービジネス(家族経営・同族経営)を学ぶ!メリット・デメリットや成功のコツを知り起業家精神をもった後継者になろう」(Reitaku Journal)
    https://www.reitaku-u.ac.jp/journal/1776435/

    経営学部で学ぶ「ビジネスフレームワーク」

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    経営学部では、入学初年度から「手を動かし、頭を使って考え、発表を行う」といった流れで、ビジネスフレームワークについての学びと実践の機会をつくっています。

    1・2年生の間に、デザイン思考で顧客志向のビジネスを考える「ビジネスデザイン論」、フレームワークの型を理解した上でグループワークや実践を交えて学ぶ「ビジネスフレームワーク論」などの授業を通じて、フレームワークに関する基礎的な知識や活用方法を身につけてもらいます。

    3年生では、本格的な産学連携(教育・研究機関と民間企業が連携する取り組み)の授業が加わります。「ビジネスイノベーション・プロジェクト」「スタートアップ・プロジェクト」などの授業では、「企業に自社の課題を提示してもらい、学生がその課題を分析した上で改善方法を提案する」といった課題解決型のプロジェクトを通してフレームワーク実践の深部を経験してもらいます。

    経営学部の学びの軸は「実学」「デザイン思考」「データサイエンス」の3本柱です。デザイン思考では、社会の変化に応じて企業が顧客にどのような価値提案をできるかを学び、データサイエンスでは、エビデンス(根拠や裏づけ)のそろえ方、データをもとにした仮説検証の方法などを学びます。そして、それらを組み合わせた上で、実学としてよりビジネスの現場に近い知識やスキルを身につけるため、ビジネスフレームワークの教育に取り組んでいます。

    麗澤大学サイト「経営部/2024年4月開設」
    https://www.reitaku-u.ac.jp/lp/businessadministration/

    【麗澤大学 経済学部・横田理宇先生】

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    職名:准教授
    学部/学科:経済学部経営学科
    専門分野:経営組織論、企業倫理学
    研究テーマ:制度論やソーシャル・キャピタルの視点に基づく企業の社会的責任の研究

    ■学歴
    2003年 筑波大学第三学郡社会工学類/卒業
    2005年 筑波大学大学院修士課程経営・政策科学研究科/修了 修士(社会工学)
    2014年 麗澤大学大学院国際経済研究科博士後期課程/修了 博士(経営学)

    ■経歴
    2005年 株式会社つくばアソティック・フーズ
    2014年 公益財団法人モラロジー道徳教育財団/客員研究員
    2014年 麗澤大学企業倫理研究センター/客員研究員
    2018年 麗澤大学経済学部助教

    プロフィール参考
    https://www.reitaku-u.ac.jp/about/teachers/economic/281/

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