大学の授業
2024.12.25

【後編】中国語とともに、文化と社会を一体的に学ぶ。理解を深めて伝える、通訳の真髄

【後編】中国語とともに、文化と社会を一体的に学ぶ。理解を深めて伝える、通訳の真髄

「中国語上級演習 Ⅳ」は、通訳を目指す学生にとっての「入門編」となる授業です。中国語の高いレベルの会話・読解・作文能力を育成することを目的として演習形式で学びます。 後編では、実際に「中国語上級演習 Ⅳ」に参加して、授業の様子をレポートしていきます!

邱 イー琪(Kyuu Iki)
外国語学部 外国語学科 准教授
台湾台北市出身。麗澤大学大学院言語教育研究科博士後期課程修了。日本には留学で訪れて以来、学生時代を含め20年以上滞在。麗澤大学外国語学部日本語学科の卒業生。当時の麗澤大学の印象は「ウサギがグラウンドを走っているくらい自然豊か」。
目次

    日本人学生と留学生がペアをつくり授業スタート!

    今回取り扱われたテーマは「東京観光案内」です。日本のカルチャーにフォーカスした授業になりそうですね。

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    • 情報収集、紹介する内容の検討、検討内容の発表が授業の基本的な流れになっています。「浅草・新宿・渋谷のいずれかを観光案内する想定で、ペアワークを始めてください」と邱先生が声を掛けると、一斉に席替えが行われました。学生は1対1のペアをつくるとすぐにお互いの情報交換を始めます。

      本授業は28名の学生が受講しています。この人数であれば、比較的密なコミュニケーションが取れるため、学生一人ひとりに目を配りやすく、効果的な指導を行えると邱先生は語ります。大学の授業としては少ない印象を受けましたが、麗澤大学の授業の中では、これでも比較的人数の多い部類に入るそうです。

    日本語と中国語が飛び交う、学生主体の学びの場

    • ペアワークでは、各々が指定された東京名所について知っていることや、観光案内するのに相応しい地域の特色について意見を交換します。

      学生は和気あいあいとした雰囲気の中、スマートフォンやタブレット端末で観光情報を検索したり、翻訳アプリで会話を聞かせ合って、ニュアンスが通じるか試したりしていました。邱先生は席を巡回しながら、聞き役に徹しています。学生主体でも進行できるのは、留学生はもとより、日本人学生の多くも、すでに台湾留学を経験した上で、さらに語学力をブラッシュアップするために本授業を履修しているからでしょう。

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    • 「留学経験がある学生は、当然実際に現地で言語を使った経験があるので、例えば、日常会話や文化的な背景についてはすでにある程度理解しています。留学経験者が多いからこそ、基礎的な中国語の復習だけでは物足りなく感じてしまうでしょう。だから敢えて、観光案内や災害時の対応などの実践的な内容を取り入れることが多いです。そうすることで、留学経験者の学生にとっても、新たな学びの場として有意義な授業になるように心がけています。」(邱先生)

    学んだ言語を試す場として、学生が積極的に対話を行います。講義形式では成し得ない、双方向型のアクティブラーニングがこの授業の特徴です。

    全員参加型だからこそ、学生一人ひとりの理解度に合わせた成長をサポートできる

    • ペアでの対話を終えると、情報収集した内容を発表するプレゼンテーションに挑みます。各々話し合って作成した観光案内文を、日本人学生は中国語で、ペアを組む留学生は日本語でそれぞれ紹介していきます。

      「浅草の"雷おこし"は、中国語で何と表現するとわかりやすいかな。」(邱先生)

      邱先生は一つひとつの発表を聞きながら、丁寧に通訳のフィードバックを行い、学生と意見交換をします。受講者全員が発表することで、学生一人ひとりの学習ペースや理解度を把握し、適切なサポートを行うことができるのです。個別のフィードバックを通じて、学生が自分の強みや改善点を明確にし、学習効果を最大化できるよう工夫されています。

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    • 今後も、台北の観光案内、浴衣と着物の説明、日本料理と台湾料理の紹介などテーマだけを決めて、それぞれについて自由に調査したりプレゼンテーションしたりする機会を提供することで、主体的な学びを促進していきたいと邱先生は仰っていました。

      授業の雰囲気は積極的で活気があり、学生同士のコミュニケーションがどんどん豊かになっていく姿を見ることが、先生自身の教育へのモチベーションにもなっているそうです。間違いや失敗を恐れずに発言することができる、安心感のある理想の授業に近づけていきたいですねと語る邱先生の眼差しは楽しげで、印象的なものでした。

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