国際学部
2021/06/08

【大学の授業シリーズ】 【前編】国際学部だからこそ「日本」を、そして「事実」を知ることが大事 ~Japan Studies in English II"から学ぶ~

【大学の授業シリーズ】 【前編】国際学部だからこそ「日本」を、そして「事実」を知ることが大事 ~Japan Studies in English II
Jason Morgan
国際学部 国際学科 准教授
アメリカ合衆国ルイジアナ州出身。ウイスコンシン大学大学院歴史学科博士課程修了、博士号取得。来日10年目。犬と温泉が大好き。今はベランダで野菜を育てる家庭菜園にも夢中です。
目次

    今回は国際学部 国際学科の授業である"Japan Studies in English II"に潜入し、その授業を担当するモーガン先生から様々なお話を伺います。

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    • コロナウイルス感染拡大防止の観点からたくさんの大学でZoomを活用した「オンライン授業」が実施されてきました。そしてそのオンライン授業は、学び方の1つとして定着しつつあります。本授業も2020年はオンラインで実施※されました。オンライン授業とは一旦どんなものなのでしょうか。
      2020年度は原則、全ての授業をオンラインで実施しましたが、2021年度は第1学期の授業を原則対面にて実施しており、本授業も対面で実施しています。

    ラーメンは和食?アメリカ人の先生と英語で「日本とは何か?」を考える

    「皆さんは、アメリカで食べられている回転寿司は『和食』だと思いますか?今日の授業では、『和食』とは何かを考えていきます。では最初に質問です。 皆さんが好きな和食は何ですか?教えてください」オンライン上でモーガン先生が英語で問いかけると、学生はチャット機能を使い、思いのままに、様々な和食を回答していきます。

    • 本来であれば授業中、声を出して発言するところですが、オンライン上ではチャット機能をフル活用しての発言。まさにニューノーマルな授業形態です。
      この"Japan Studies in English II"の授業には、国際学部国際学科の1年次生、約20名が受講し、そのうち半数が中国、韓国、マレーシア、ベトナムからの留学生です。
      「好きな和食は何か?」という問いの答えのひとつに「ラーメン」がありました。すると先生は、「ラーメン?ラーメンは和食ではなく、中国の料理ではありませんか?このように、皆さんが大好きで『和食』だと思っている料理にも、実はメイド・イン・ジャパンではないもの(和食ではないもの)がたくさんあるのです。

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    では次の質問です。そもそも、『和食』とは何だと思いますか?皆さんの考えを聞かせてください」モーガン先生は学生への問いかけを続けます。学生は「食べる人に喜んでほしいという気持ちがあるのが和食ではないか」などと各々自分の考える意見をチャット内にコメントします。

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    • "Japan Studies in English II"の授業は基本的に英語で進めていますが、その内容は「日本とは何か?」を考えるものです。取り上げるテーマは『和食』以外にも『アイヌと沖縄は日本か?』や『アニメ・鬼滅の刃について』などジャンルも多岐にわたります。日本の歴史、文化、政治、宗教、芸術と、できるだけ多くの様々な側面から日本を見ることにより、日本がどういう国なのかを探っていきます。
      そもそも、国際学部の学生はなぜ、日本について学ぶ必要はあるのでしょうか?日本人なのだから日本のことはもう知っているのでは?と思う人もいらっしゃるかもしれませんね。

    「正しい日本」を世界へ伝える人になるための授業

    • 麗澤大学に来て初めての授業で、学生に「三島由紀夫や谷崎潤一郎など日本の文豪について知っている?」と学生に聞いてみたところ、知っている学生はほとんどいませんでした。日本の歴史についても知識があやふやなところがあり、私は「もしかすると日本の学生は、実は日本のことをあまり理解していないのかもしれない」と思ったのをよく覚えています。国際学部には、卒業後に世界を舞台に活躍することを目指す学生が多くいますが、母国である日本のことをきちんと理解せず 、先に世界に目を向けてしまうのは、非常に危ういと思います。

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    世界には、皆さんが思っている以上に日本への理解が深く、日本に友好的な人たちがいます。その一方で、日本に対する誤解や偏見を持っている人もたくさんいるのです。日本人である皆さんが日本の歴史や文化をきちんと理解しないまま海外へ行き、誤解や偏見にもとづいたバッシングを受けたらどうでしょう?きちんと反論できますか?

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    • 知らないことで、もしかしたら皆さん自身が母国である日本に偏見を持ってしまうことになりかねません。世界と向き合っていくためには、世界を知ることはもちろん大切なことですが、正しい日本を知ることも重要です。自分のベースをしっかりと築いてから世界に出発できるよう、この授業では、改めて日本について理解すると共に、「これは本当だろうか?」と疑問に思った時、自分で調べる術を学んでいきます。そして日本に対して誤解や偏見を持っている人がいたら、きちんと正しいことを説明できるよう、日本に対する学びを深めます。

    「事実を知る」と「世界が変わる」

    • 授業を通して学生に伝えたいのは、「事実を知ることの大切さ」です。2020年、アメリカで人種差別問題に関連した数々の暴動が起きたことをご存じかと思います。アメリカ人の中には、アメリカはもう終わりだ、だから破壊や略奪、放火をするんだ――そう主張する人たちもいます。しかし、彼らが言う「アメリカはもう終わり」ということは事実でしょうか?確かに白人と黒人の間に悲惨な過去があったことは事実ですが、白人と黒人が歩み寄ろうと努力し、良い絆を築いてきたことも事実ではないでしょうか。アメリカ社会で能力を発揮し、活躍する黒人が多くいること、これも「事実」です。

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    事実を偏りなく平等に調べれば、アメリカが決してもう終わりなどというほど、悪いことばかりではないことがわかるはずです。この事実を世界中の人が知っていれば、あの痛ましい事件は起きなかったかもしれません。このように、人々が劇的なフェイクヒストリーに溺れ、誤った行動に走った結果が、2020年の一連の暴動なのだと私は考えています。事実を知らないということは、とても危険なことです。世界中で起こる争いや対立を解決し、私たちが幸せになるためには、思いこみをなくし、フェイクに惑わされず、事実を知らなければならないのです。

    世界で起こる問題に対して「事実」を見つける。授業ではその特訓します

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    • 私たちは、普段から思いこみや憶測、偽の情報(フェイクニュース)に踊らされがちです。でもそれでは本質や事実にたどり着くことは出来ません。重要なのは、「事実」をもとに考えることです。私は学生にいつも、こう伝えています。「ファクト(事実)を調べましょう!それには、できるだけ多くの文献や資料を集め、問題を右から左から、斜めから、あらゆる側面から照らして調べること。決して情報を鵜呑みにせず、先生(私)の言うことにも、疑問を持ってみてください」と。学生には「事実の掴み方」を練習してほしいと思っています。

    その役割を担うのが大学での学びです。そこで、私の授業では、その特訓のために、常に私はソクラテスの役割を果たそうとしています。ソクラテスは古代ギリシアの哲学者で、全ての事物に対して疑問を提示し、誰彼かまわずしつこく質問しては、相手の答えの不備や間違いを指摘するので、煙たがられていました。しかし、「事実」を知るためにはそのような特訓が必要です。ここで犠牲になるのは私でしょう。

    • 私も煙たがられるのを覚悟の上で(笑)、学生の発言に対し「こんな風にも考えられませんか?」「こんな見方もありますよ」「それは正しいですか?」と反論したり、別の見解を示したり、学生が視野を広げ、考えをさらに深めるように促します。あるいは「彼はこう言っていますが、あなたは、皆さんはどう考えますか?」と、他の学生に意見を求めます。授業に参加している学生たちの中には留学生も多く、とても多国籍の環境ですから、それはもう、びっくりするくらい多様な意見が出てきます。授業中に繰り広げられる様々な意見を聞くことが、自分自身の思いこみをなくし、物事を多面的に見る良いトレーニングになるのです。

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    学生には、これらの授業を通し、事実をもとに、世界の様々な問題について考えられるようになってほしい。このような考え方ができる人が増えていけば、様々な誤解は解け、世界は今よりももっと平和になるでしょう。平和のカギは、「ファクト」なのです。

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