卒業生の活躍
2022.09.28

【後編】データサイエンティストとして、健全な不動産市場をつくることに貢献したい

【後編】データサイエンティストとして、健全な不動産市場をつくることに貢献したい

麗澤大学でデータサイエンスと出会い、2022年6月現在、民間シンクタンクのデータサイエンティストとして、不動産投資市場調査研究の第一線で活躍する卒業生の川村康人さん。後編では、川村さんのお仕事についてお話を伺います。

川村 康人
三井住友トラスト基礎研究所 投資調査第2部 主任研究員
【国際経済学部 国際経済学科(現在の経済学部 経済学科)2009年3月卒業】
埼玉県出身。2010年3月に政策研究大学院大学修士号を取得。その後、株式会社住信基礎研究所(現・株式会社三井住友トラスト基礎研究所)に入社。2021年7月より現職。ラオス人の妻、娘の3人家族。家族が暮らす海外と日本とを往き来する生活を送る。「現役引退後は、一日の終わりにメコン川に沈む夕日を眺めながら、ビールを飲む暮らしをするのが夢。」
目次

    「不動産価格指数」 客観的なデータの提供によって、経済安定を目指す

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    • 麗澤大学卒業後は政策研究大学院大学で修士号を取得、その後不動産市場のリサーチやコンサルティングを行う株式会社三井住友トラスト基礎研究所に入社しました。研究所といっても白衣を着て実験するわけではなく、パソコンを使ってデータを分析し、レポートにまとめるのが主な仕事です。私は投資調査部に所属し、大規模賃貸マンションやオフィスビル、商業施設などの不動産投資市場について調査研究を行い、市場の将来予測をしたり、お客さまから調査依頼を受けてリサーチしたりしています。主な取引先は銀行や公的機関、不動産投資会社などです。

    2013年には、国土交通省からの委託事業を担当し「不動産価格指数」の運用システムを構築しました。不動産価格指数というのは、不動産がどのような価格水準で取引されているか、たとえば5年前と現在ではどちらが何パーセント高いのかを、リアルタイムで正確に把握するための統計データです。これがなぜ必要かというと、一番は、金融・経済危機を回避するためです。日本のバブルや、世界的な金融危機となったリーマンショックの例からもわかるように、不動産価格の変動は経済全体に大きな影響を与えることがあります。そこで、リーマンショック後、これからは主要国が統一された手法で不動産価格指数を作成・公開し、不動産価格の動きをモニタリングしていこうという機運が世界的に高まり、日本でも作成・公開されることになったのです。ちなみに、不動産価格指数の国際基準作成には、麗澤大学の清水千弘先生が関わっていますよ!

    2016年からは独自に、投資用不動産の価格動向がわかる「J-REIT不動産価格指数」を作成し、弊社HPで毎月レポートを公開しています。なぜなら、不動産投資家や融資を行う金融機関が、客観的なデータに基づいて冷静な判断ができるようになれば、不動産への過剰な投融資が抑えられ、バブルのような事態を回避できるかもしれないからです。「データサイエンティストとして、健全な不動産市場をつくることに貢献したい。」このような思いから取り組んでいるものです。

    レポートに対する反響をいただいた時や、メディアから専門家として解説を求められる時などは、自分が人の役に立っていると実感できて素直にとても嬉しく、大きなやりがいを感じます

    データサイエンティストとは? 時代の変化に応じて、常にアップデートすることが重要

    データサイエンティストの仕事は、皆が知らなかったことをデータから明らかにし、ビジネスや社会で活用できるようにすることです。そのためには、ただ、分析ができれば良いのではなく、お客さまの課題を整理することや説得力のあるプレゼンテーションをする能力も必要ですし、プログラミングや統計学の専門知識にとどまらず、経営や法律、社会制度、歴史に対する理解も求められます。

    • 一方、データサイエンティストのような専門家にならなければ、データサイエンスの知識はいらないかといえば、そのようなことはまったくありません。今や、データの活用はあらゆる分野に広まっているので、これからは誰でも、データサイエンスの基本的な知識は必要です。たとえば私たちのような専門家に分析を依頼するにも、どんなデータが必要で、どこに依頼をすれば良いのか、そこではどんな分析手法が使われているのかなど、基本的なことがわからなければ、正しく依頼することもできません。

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    私が麗澤大学で学んでいた頃は、「データサイエンス」と名がつく授業や学科、職業はありませんでしたが、当時学んだことは今も現役で役立っていますし、当時と比べれば扱うデータの質や分析手法は飛躍的に進化しているものの、やっていることに大きな違いはありません。今後新しい分析手法やプログラミング言語が登場し、10年後にはまた「データサイエンス」とは違う呼び方になっているかもしれませんが、データサイエンスそのものの本質と重要性は、これからも変わらないでしょう。基本となる知識があり、常に最新にアップデートしていくことができれば、時代がどう変化しても対応していけると考えています。

    自分の「好き」を信じて、目の前のことに一生懸命チャレンジしてみましょう!

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    • 大学で学ぶ醍醐味は、先生の研究成果を交えた授業を受けられることにあると思います。大学を選ぶ時は、どのような講義やコースがあるのか、どのような先生がいるのか、先生の経歴や出している書籍・論文など、すべては詳しくわからなくてもいいので、いろいろな視点から大学を見て判断することをおすすめします。
      私もそうでしたが、進路がなかなか決まらず、考えれば考えるほど不安になってしまう高校生もいると思います。ですが、自分の人生がどうなるか高校生でわかっていた人なんていないですし、むしろ、若いうちから将来を決めてしまうのは、人生を狭めることになってもったいないかもしれません。

    私自身、20年前の高校時代からは想像もつかない人生を歩んでいますが、良い人生を歩んでいるなと思えます。それは、いつも自分の好きなことや興味のあることを追求し、挑戦してきたからです。やってみて違ったら、いくらでも路線変更すれば良いのです。皆さんも将来のことで悩んだ時は、自分の「好き」という気持ちを信じて、目の前のことに一生懸命にチャレンジしてみてください。

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