教職員
2022.11.02

【前編】課題がなければ、データ分析ができても意味がない。解決したい課題を見つけよう!

【前編】課題がなければ、データ分析ができても意味がない。解決したい課題を見つけよう!

麗澤大学でプログラミング、統計学、データサイエンスなどの授業を担当する新井先生。学生時代は「経済物理学」を専門とし、データ分析の手法の研究に取り組んだ後、民間の調査研究機関にてデータサイエンスの業務に携わられました。データ分析のスペシャリストである新井先生に、高校・大学時代のことや研究、これまでの仕事についてお話を伺います。

新井 優太
経済学部 経営学科 助教
栃木県出身。新潟大学理学部卒業。新潟大学大学院自然科学研究科数理物質科学専攻博士後期課程修了。博士(理学)。株式会社リクルート SUUMO リサーチセンターでの勤務を経て2021年9月から現職。専門分野はデータサイエンス。趣味は料理。
目次

    テストで9点。悔しさをバネに物理の面白さに目覚める

    • 私は子どもの頃は勉強が好きだったわけではなく、高校に入ってからも必要最低限の勉強しかしないような高校生だったのです。そして高校2年生の時、理科と数学が好きだったので理系コースに進みましたが、最初の物理のテストで100点満点中9点だったのですよ(笑)。まわりには100点の人もいたので、すごく悔しい思いをしました。そこから初めて物理の勉強に真剣に取り組んでみたら、「あれ、面白いな」と。『高校数学でわかるシュレディンガー方程式(著者:竹内 淳/出版社:ブルーバックス)』や『フェルマーの最終定理 (著者:サイモン・シン/出版社:新潮文庫)』などの物理・数学系の有名な本を何冊か読んで、ますます物理学に興味を持ち、将来は物理の道に進みたいと思うようになりました。

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    大学は物理学科に進み、力学や量子力学、統計力学、宇宙物理や相対性理論など、物理分野を一通り学びました。大学院に行きたかったので、そのための勉強をしつつ、友達とも遊んでと、ごく平凡な学生時代だったと思います。

    地震を予測できるか? 時系列データから将来を予測する分析手法を研究

    大学4年次生になって研究室を選ぶ時、せっかくなら最先端の世界を見てみたいと思い「経済物理学」の研究室を選びました。経済物理学は、技術の進歩によって大量のデータを扱えるようになったことを背景に生まれた研究分野で、物理学の手法を使って経済の膨大なデータを解析し、経済現象を解明しようとするものです。たとえば、物質を構成する原子・分子の動きをコンピューターで解析するように、株価や為替の動きを解析してその特性を見つけようとする研究や、経済学で唱えられている理論や仮説について、それが果たして本当なのかということを、実データを解析して実証するといった研究が行われています。実際にやってみると面白くて、研究室に入ってからはコンピューターと向き合いっぱなしの毎日でした。コンピューターと紙と鉛筆があれば何でもできて、好きなプログラミングを活かせるのも私には合っていました。

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    • 大学院に進んでから取り組んだのは、データ分析の手法の開発でした。具体的には、株価や為替レートのように、時間とともに変化する「時系列データ」から将来を予測する分析について、より精度の高い予測ができる手法を開発する研究です。博士課程に進んでからは、金融データだけでなく気象データも使って、地震データから地震を予測できないか? 海面気圧のデータからエルニーニョ現象を予測できないか? といった研究にも取り組みました。数式を追ってプログラミングを組み、正しい結果を得られるかを確認する。そんなことをひたすら繰り返していたのですが、それが私には、難しいパズルを解くみたいでとても面白かったのです。

    人生を大きく変えた特別研究員への道

    こうして博士課程まで進み、好きな研究に打ち込むことができたのは、独立行政法人日本学術振興会の特別研究員に採用されたおかげです。特別研究員は若手研究員を養成するための制度で、年間の研究費に加え、研究奨励金が毎月支給されます。つまり、お給料をもらいながら大学院に通えるようなもので、研究を続けたい立場からすればこんなにありがたいことはありません。

    大学院に入ってすぐにこの制度を知り、「特別研究員になって博士課程に進みたい!」と応募を決意しました。そこからは、実績づくりのために1年次のうちから学会発表や海外向けの論文発表をしたり、教授に何度もダメ出しされながら研究計画を作成したりと、全力で取り組みました。2年次の冬頃、審査に通った時の嬉しさは今も覚えているほどです。もし特別研究員になれなかったら、私の人生は大きく変わっていたでしょう。

    • 大学院時代には研究以外にも、仲間や先生方との楽しい思い出がたくさんあります。中でも忘れられないのがラーメンづくりです。新入生歓迎イベントは、毎年研究室ごとに新入生を料理でもてなすのが恒例で、最後の年は麺とスープからラーメンをつくろうと、研究室で毎日、仲間とラーメンの研究に励みました。それこそ実験と同じように、調味料の分量をきちんと量ってデータをとってと、皆真剣そのものでした。今思い出しても楽しかったなと思います。

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    数万件の家賃をどう設定する? 不動産会社の課題をデータで解決

    大学院卒業後は、株式会社リクルートの住まい領域の調査研究機関であるSUUMOリサーチセンターに入り、データサイエンティストとして住まいに関する調査研究に携わりました。そのひとつに、賃貸物件の家賃予測があります。

    高校生の皆さんも、これから一人暮らしをする時に部屋探しで使われるかもしれませんが、株式会社リクルートが運営する「SUUMO」という不動産情報サイトがあり、そこには全国の賃貸物件の情報が掲載されています。町の不動産会社だったら、掲載件数は多くても数百件ほどですが、たとえば独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)が管理するUR賃貸住宅は、全国に70万件以上あり、サイト掲載件数は数万件にのぼります。掲載する際は当然、家賃を決めなければなりませんが、不動産物件は個別性が強く、築年数や生活利便性、間取り、物件があるエリア、特有のニーズなど様々な要素を考慮しながら、1件1件設定しなければなりません。数万件となると大変な作業です。

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    • SUUMOにも家賃相場を掲載するサービスはありましたが(SUUMO 常磐線エリア家賃相場:外部サイトに移動)、大まかなものしかありませんでした。そこで私たちは、SUUMOが所有するデータを分析して適正な家賃を予測することで、不動産会社の方々のお役に立てるのではないかと研究を始めました。もちろん、いつも私たちが算出した家賃通りになるわけではなく、「もう少し家賃を下げても早く決めてもらいたい」「時間がかかっても、もう少し家賃を高くしたい」など、現場の方々の感覚で多少変わることもあると思います。しかし、目安があれば、効率よく判断することができると考えたためです。このようにビジネスの現場に身を置き、企業が実際に抱える課題の解決のためにデータ分析を活かせたことは、データ分析の専門家として、とても良い経験になりました。

    その後、研究活動を通して知り合った麗澤大学の清水千弘先生とのご縁がきっかけで、2021年9月から麗澤大学に着任することになりましたが、私が教育の現場に移ることを決めたのは、企業での経験を通して、あることを考えるようになったからです。

    ー後編では、「データ分析のスペシャリストとして学生に伝えていきたいこととは何か」を伺います!

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