国際学部
2023.07.06

【前編】営利と社会貢献、どちらも大切。私たち「営利貢献家」が、企業の"営利貢献活動"をお手伝いします!

【前編】営利と社会貢献、どちらも大切。私たち「営利貢献家」が、企業の

麗澤大学の「自主企画ゼミナール」は、学生が、学びたいテーマにもとづいて自ら指導教員を選び、学習計画を立て、自主的に学びを進めていく独自のゼミナールです。毎年、多種多様なテーマの活動が行われており、その中から今回は、起業をテーマとして自主企画ゼミナールを立ち上げた「営利貢献家」のメンバーと指導教員の藤野先生へのインタビューを行いました。前編では、「営利貢献家」が生まれた経緯や大学祭での出店、ベトナム視察旅行についてお話を伺いました。

南雲 佑希
国際学部 グローバルビジネス学科 グローバルビジネス(GB)専攻 2020年入学
新潟県出身。自主企画ゼミナール「営利貢献家」立案者。Mrs. GREEN APPLEが好き。
※取材時、3年次生。
神田 佳澄
国際学部 グローバルビジネス学科 グローバルビジネス(GB)専攻 2020年入学
広島県出身。自主企画ゼミナール「営利貢献家」立案者。趣味は写真を撮ること、音楽を聴くこと。
※取材時、3年次生。
堀内 優
国際学部 グローバルビジネス学科 グローバルビジネス(GB)専攻 2020年入学
茨城県出身。趣味はラーメン屋めぐりと料理をすること。
※取材時、3年次生。
福島 五和
国際学部 グローバルビジネス学科 グローバルビジネス(GB)専攻 2020年入学
群馬県出身。実家で飼っている犬・猫と遊ぶのが癒しのひと時。
※取材時、3年次生。
藤野 真也
国際学部 グローバルビジネス学科 准教授
大分県出身。京都大学大学院経営管理教育部ファイナンス・会計プログラム修了。麗澤大学大学院経済研究科経済学・経営学専攻 博士課程修了。専門分野は企業倫理、コンプライアンス、コーポレートガバナンス。趣味は読書。
目次

    起業してみたい! 「営利貢献家」が生まれた経緯

    ―まず、「営利貢献家」とはどのような活動団体なのかを教えてください

    南雲:私たち「営利貢献家(えいりこうけんハウス)」は、「社会に貢献し存続するために利益を追求する」ことをコンセプトとして活動しています。「営利貢献」とは私たちが定義したもので、SDGsの達成に向けた活動としてビジネスモデルを作成・実行し、利益を生み出すだけではなく、同時に社会貢献も果たす活動を意味しています。

    • eirikoukenhouse1.jpg
    • 企業が存続するためには、利益を追求する営利活動と、社会の役に立とうとする社会貢献活動を両立することが大切だと私たちは考えていて、現在多くの企業がその姿勢を目指していると思います。しかし、実際は社会貢献をしていると謳っていても実態が伴っていなかったり、社会貢献に偏り、損失が利益を上回ってしまっていたりと、上手く両立できていない企業も少なくないようです。そこで、両方を実現する企業を私たちも立ち上げ、且つほかの企業の営利貢献活動も手助けしようと考えて生まれたのが「営利貢献家」です。2年次生から4年次生まで、学部を越えて計13名のメンバーがともに活動しています。

    ―この自主企画ゼミナールを立ち上げた経緯を教えてください

    南雲:麗澤大学の自主企画ゼミナールという枠組みを知り、「自分が学びたいことを追求できるのは面白そう、この機会を活用して起業を体験してみたい!」と思ったのが最初のきっかけです。というのも、授業でビジネスについて学ぶうちに、「会社をつくるには実際にどんなプロセスを踏むのだろう」「ビジネスの現場はどうなっているのだろう」と、ビジネスに対する興味がどんどん膨らんでいたからです。そこで、2年次生の時から授業でお世話になっている藤野先生に相談しました。

    • 藤野:南雲さんたちは私の研究室に来て、熱意を伝えてくれました。ただ、いきなり起業するのは当然ハードルが高く、また、もっと深く話を聞いてみると、「起業した経営者に会ってみたい」「海外のビジネスの現場を見てみたい」という2つことに強い思いがあるようでしたので、まずはそこから取り組んでみようと提案しました。

      南雲:メンバーと話し合い、企業や経営者の方にアプローチするのであれば、私たちも企業経営について何らかの貢献をしたいという話になりました。また、せっかくの機会なので、藤野先生の専門である企業倫理をテーマに、私たちがご提案できるものを考えたいと思いました。こうして生まれたのが、「営利貢献家」のアイデアです。

    • eirikoukenhouse2.jpg

    大学祭でビジネス体験。屋台を出店し、営利貢献活動を実践

    ―具体的には、どのような活動をしてきたのでしょうか?

    • eirikoukenhouse10.jpg
    • 神田:机上で考えた営利貢献活動を実践するために、今年の10月に行われた大学祭で屋台を出店しました。高校生の皆さんも文化祭などで出店したことがあるかもしれませんが、これも立派なビジネスです。まずは営利活動として、何を売って利益を出すかが重要です。そこで、どのようなメニューが良いか、いくらの金額なら購入できるかなどについて、学内でアンケートを実施しました。その結果をもとに、回転率や原価率なども考慮し、ミネストローネと揚げ物を販売することに決めました。

    一方、貢献活動としては「フェアトレード」の認知度向上に取り組むことにしました。ミネストローネにフェアトレードのパレスチナ産オリーブオイルを使用し、そのほかにフェアトレードについて解説する看板の設置や、チラシの配布を行いました。

    南雲:結果、お店は大盛況! ほかの団体の約2倍の売り上げを出すことができました。メニューの選定だけでなく、メンバーの得意分野を活かした人員配置でチームワークを発揮し、効率よく運営できたことも良かったと思います。皆で同じ方向を向いて、一緒に頑張るという、楽しい経験もできました。

    ※フェアトレード:「開発途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することにより、開発途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目指す『貿易のしくみ』をいいます」(出典:フェアトレードジャパンHP<外部サイトへ移動>

    海外のビジネス現場を見たい! スリランカのHirdaramani社に視察を依頼

    ―大学祭での体験は、その後の活動にどのように結びついていきましたか?

    神田:大学祭でのビジネス経験を踏まえながら、次は起業までのプロセスを一通り体験しました。会社設立に向けて、皆で議論してビジネスプランを考え、定款をつくり、組織体制も固めて、あとは登記するだけ、というところまで行いました。

    南雲:もうひとつ取り組んだのが「従業員幸福チェックシート」の作成です。これは、企業が現在営利貢献活動を実践できているかを知り、改善につなげるためのチェックシートです。

    チェックシートの作成にあたっては、企業の社会貢献活動を評価する「CSR評価」を参考にしました。CSR評価には人材活用や環境、財務などたくさんの項目がありますが、その中でも私たちは、新社会人として就職を控えている学生の立場から、従業員の「人権」と「幸福」に着目して項目を策定することにしました。この取り組みが、後のベトナム視察につながります。

    お手本となりそうな企業のCSRレポートを調べる中で、目にとまったのが、スリランカを拠点とする企業グループであるHirdaramani社でした。patagoniaなどの世界のトップ・アパレルブランドの最終製品を製造する一次下請企業ですが、patagoniaのフェアトレード活動を通じて、Hirdaramani社の「人権」と「幸福」に関する取り組みが素晴らしいことを知りました。

    そこで「ぜひ、この現場を実際に見てみたい!」と思い、メールで直接視察を依頼してみると、なんとベトナムにある子会社を紹介していただけることになったのです。そして2023年2月、私たち営利貢献家は、ベトナム視察に旅立ちました。

    ベトナムのアパレル工場を視察。「ここまで徹底しているのか...!」

    • 堀内:訪れたのは、ベトナムのドンナイ省にあるFashion Garments(FGL)社です。社員数1万人以上の、ベトナムトップクラスのアパレル企業であり、現地では十数名の経営陣が総出で私たちを出迎え、大いに歓待してくださいました。

      視察は2日間にわたり、その間に2つの工場を見学させていただきました。そこでは、patagoniaやNIKE、adidasなど、誰もが知る世界的なアパレルブランドの製品を、デザインから生地の開発、製造、梱包まで一貫して手がけているのです。服のタグによくある「Made in Vietnam」とはこういうことか! と実感しました。

    • eirikoukenhouse4.jpg

    南雲:驚いたのは、徹底した生産管理体制です。FGL社ではトヨタ生産方式を取り入れていて、工場内には「KAIZEN」の文字もありました。どの工程も機械化・デジタル化により合理化され、整理整頓が徹底されていたのも印象的でした。

    アパレル産業は環境負荷が大きいと聞きますが、FGL社はエネルギーや水の消費、廃棄物を最小限に抑えるなど、環境負荷を極力抑える取り組みもしていて、「ここまで徹底しているのか...!」と思うほどでした。

    • eirikoukenhouse21.jpg
    • 福島:人事管理においても、たとえば、工場の製造スタッフから経営陣にキャリアアップも可能というように、すべての従業員が平等にキャリアアップに挑戦できる体制が整っていました。

      また、視察中に花束を持っているスタッフを見かけたので、あれは何かと聞いてみたら、FGL社では、誕生日のスタッフや、仕事を頑張ったスタッフに花を贈る習慣があるのだと教えてくれました。社員一人ひとりを大切にする社風を感じました。FGL社は、私たちが作成した「従業員幸福チェックシート」にある、「従業員の仕事のやりがい」「能力開発」「ライフプラン」といった項目を、きちんと満たしていると感じました。

    南雲:私たちは授業で、アメリカでは元請け企業に対し、環境対策や人権対応などに関する厳しい法律が適用され、海外の下請け企業も、高い水準の取り組みが求められていることを学んでいました。それがどういうことかを、私たちはまさにFGL社で目の当たりにし、FGL社が世界のトップブランドから信頼を得ている理由がよくわかりました。

    堀内:日本の企業でも、このレベルを達成している企業は多くないかもしれません。ベトナム視察を通して、海外企業から学べることもたくさんあるのではないかと思いました。

    ※トヨタ生産方式:トヨタ自動車株式会社で採用されている生産管理システム。「ムダの徹底的排除の思想と、造り方の合理性を追い求め」、「『お客様にご注文いただいたクルマを、より早くお届けするために、最も短い時間で効率的に造る』ことを目的とし」た生産方式。(出典:TOYOTA HP<外部サイトへ移動>

    ―後編では、ビジネスリーダーを前にしたプレゼンテーションに関するお話と、1年間の活動を終えての感想を伺いました!

    SNSでこの記事をシェア