2025年4月から国際学科に新設される「国際社会・国際情報専攻(以下ISI専攻)」は、刻一刻と変化する国際情報の動向や世界各地の事情を理解した上で、どのように世界と関わるべきかを学ぶ場です。後編では、安全保障と情報を並行して学ぶ意義についてのより踏み込んだお話と、ISI専攻で学ぶ学生の将来像について伺いました。
安全保障と情報、2つに共通するものとは?
―「安全保障」と「情報」を並行して学ぶ意義について、より踏み込んで教えてください。
中園先生:私たちはこれから先もデジタル社会の中で生きていかなければならず、その中で多くの人は幸せに生きることを願っています。では、皆で幸せに生きるにはどうしたらよいのか? これからの時代に幸せになるためには、デジタル社会での生き方を考え直す必要があります。
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従来の「インターネットの世界は怖い」「危ないからやめましょう」という後ろ向きの考え方では、これからの時代には適応できません。確かに、時にはブレーキを踏むことも必要ですが、今世界的に注目されているのは「デジタル・シティズンシップ」という考え方です。これは、情報社会で前向きに善く生きていくために、どうやって上手にアクセルを踏むかを考えるというものです。国内でも総務省や文部科学省がその考え方を学びに活かしていこうという動きがあります。危険から目を背けて後退するのではなく、どうやってその危険を前
向きに避けたり乗り越えたりするか。進化し続けるICTを文房具のような身近な道具として使いこなせるよう、リテラシーを磨き続けることが今を生きる人々の幸せに通じると考えています。
櫻井先生:ISI専攻では、国家・社会を単位とする国際関係の働きを学ぶとともに、国際社会に生きる個々人の国際情報リテラシー能力を重視します。この両側面を学ぶことで、幸せな国際社会の実現に貢献でき、また自身の幸せを見つけるきっかけにもなるでしょう。ISI専攻は単なる学問の場ではなく、多くの人の幸せについて考える場でもあるのです。
どんな仕事に就いても活きるISI専攻の学び
―ISI専攻で学んだ学生には、どのようなことを期待しますか。
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櫻井先生:国際学部の卒業生は、企業や商社、メーカーの国際部門に就職するケースが多いです。ただ、本当に大切なのは就職することではなく、それ以前の人としての立ち振る舞いや考え方です。麗澤大学は倫理観や道徳の教育に力を入れていることに加え、国際学部には多くの外国人留学生がいるため、日頃から多様な価値観に触れることができます。ISI専攻の学びを通じて、異なる価値観を理解し、その違いを前提に行動できる力を持ってほしいと考えています。
中園先生:メディアや外交、安全保障の専門家という進路はイメージしやすいと思いますが、私はどんな仕事に就いても良いと思っています。多様性の時代の中で、どこに就職しても「皆違いを持った上でつながっている」ということを理解できる人材になってほしいと思います。相手の価値観を理解し、それを組織内でつなぐ存在になってほしいです。そして、多くの情報が飛び交う中で、何が正しいかを見極め、それを正しく伝える役割を果たしてもらいたいです。ISI専攻で学んだことはどんな職種でも役立ちますので、皆さんがつながりの中心となる力を持つことができると信じています。
阿部先生:日本の安全保障研究は、脅威の中核である軍事戦略をあまり深く研究せず、広範囲にわたる安全保障を扱ってきたため、中心が抜けた"ドーナツ"化してきました。だからこそ、ISI専攻では、エネルギーや経済、人間の安全保障など幅広い分野を学びつつも、日本で研究が進んでいない軍事戦略の核心部分にも深く触れ、本当の意味での安全保障を学ぶ場にします。将来に関しては、国の安全に直接寄与する海上保安庁や警察、防衛省・自衛隊などで活躍する道もありますし、メディア等で、ISI専攻で学んだ専門的知識を基に、政府の防衛政策を分析したり、中園先生の授業で学んだ情報の扱い方を活かして、企業で安全保障のリスクを分析するなど、多方面での活躍が期待できます。
異なる考えを理解し、自分の疑問を存分に追求してほしい
―それでは最後に、高校生の皆さんへメッセージをお願いします。
中園先生:私が皆さんに一番大事にしてほしいのは、クリティカルに考える力です。クリティカルとは、ものごとをただ否定するのではなく、立ち止まって「本当にそうかな?」と考えることを意味します。今は多様性が重視される時代であり、自分だけが正しいと思い込むと、他者を排除し、最悪の場合は争いを引き起こす可能性があります。異なる考えを理解し、違いを受け入れながら共生する世界を築くことが大切です。ものごとをクリティカルに捉えることで、より豊かで幸せな人生を歩むことができると思います。
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阿部先生:ISI専攻はこれから始まる新しいプログラムであり、特に軍事安全保障という、これまで日本の大学であまり扱われてこなかった分野にも挑戦します。この新しい挑戦を、学生たちと一緒に楽しみながら進めていきたいと思っています。私が以前勤めていた大学では、1回の授業で500人ほどを担当することもあり、一人ひとりの疑問に対応するのは困難でした。しかし、麗澤大学では少人数制の授業が行われており、学生一人ひとりと向き合いながら、疑問や関心を深く追究できる環境が整っています。皆さんには、自分自身の「なぜ」に存分に向き合い、楽しく学んでほしいです。海図を片手に、一生に航海に出て、世界をみましょう。
櫻井先生:私はISI専攻を通じて、他人・他国の考え方が理解できる人間になってほしいと思います。相手がどういう考えから、そのような結論に至ったのかを考えられる人になってほしいです。