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教育・研究
2025.07.17

【開催報告】Global Seminar Series No.4:麗澤大学創立90周年記念特別講演"Gaze Behavior in Human Interaction: From Perception to Communication Across Individuals and Cultures" (人と人をつなぐ視線行動:知覚からコミュニケーションへ ―個人差・文化差を越えて)

 2025年7月15日(火)、Global Seminar Series No.4として、麗澤大学創立90周年記念特別講演「"Gaze Behavior in Human Interaction: From Perception to Communication Across Individuals and Cultures"(人と人をつなぐ視線行動:知覚からコミュニケーションへ―個人差・文化差を越えて)」を開催しました。

 本講演では、視線行動を専門に研究しているRoy Hessels氏(ユトレヒト大学 准教授)をお迎えし、視線追跡(eye-tracking)を用いた対人コミュニケーション研究の最前線について、2部構成の講義が行われました。

 第1部は入門編として、眼球運動の「なぜ」に焦点を当て、視線計測のテクノロジーやその研究応用例について、Hessels氏が自身の研究事例を交えながら丁寧に紹介してくださいました。

 「見る」という行為に潜む認知的・社会的な意味や、二者間の視線を同時に分析する「dual eye-tracking」の手法が、対人関係の科学的理解にどのように貢献しているかをわかりやすく解説いただきました。遠隔視線追跡装置(アイトラッカー)の紹介とデモンストレーションも行われ、参加者は実際に視線の可視化を体験することで、その技術への理解を深めていました。

 続く第2部では、さらに専門的な内容に踏み込み、実際の実験設計や結果、得られた知見について詳しい解説がありました。なかでも、オランダ人と日本人の視線行動の違いを比較した研究が紹介され、文化によって非言語的コミュニケーションのあり方が異なることが示されました。また、麗澤大学工学部の鈴木高宏教授は、視線行動の計測をドライビングシミュレータの中で用いた複数の研究事例として、逆走対策や自動運転車の導入における道路表示や看板の視認性に関する実験や、認知症ドライバーの運転実験などの事例を紹介し、交通安全研究などで重要な役割を果たしていることを報告しました。

 講義の終盤には、学生たちとHessels氏との間で、自由なテーマでのやりとりが交わされる場面も見られました。研究内容にとどまらず、「最近は相手の名前を呼ぶとき、"Mr."を使わないって本当?」「英語には"こそあど言葉"がないって知ってた?」「日本人はなぜ笑うときに口元を手で隠すの?」といった異文化や言語習慣に関する素朴な疑問が飛び交いました。Hessels氏は、学生たちの問いかけに耳を傾けつつ、ご自身からも問いを投げかけるなど、双方向の対話を通じて、視線行動研究の奥深さと、人間理解の広がりについて語ってくださいました。

 本講義は、グローバルな学術交流を推進する麗澤大学の取り組みの一環として実施されたものであり、「視線」という身近なテーマを通じて、異分野・異文化をつなぐ知的対話の場となりました。

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