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2023.04.01|最終更新日:2023.04.28|

経済学部 新学部長就任のお知らせ

2023年4月1付で馬場 靖憲が本学経済学部長に就任いたしました。

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【教員プロフィール】馬場 靖憲(ばば やすのり)


麗澤大学特別教授、経済学部長。東京大学名誉教授。専門分野は「技術変化の経済学」。東京大学経済学部経済学科卒業後、国際基督教大学大学院行政学研究科修士課程 修了、英国サセックス大学大学院博士課程 修了。「平成25年度文部科学大臣表彰科学技術賞」受賞。著書に「デジタル価値創造」(NTT出版)、著書に「産学連携の実証研究」(東京大学出版会)がある。

学部長メッセージ

経済学を勉強して、君もあなたも、変身しよう!

40年前、キャロル・ギリガンという米国のエライ先生は、大切な奥さんの命を救うために高価な薬を盗むしかなくなった場合、夫はどうするのが良いか、13歳の子供に訊きました。男の子のジェイクは、薬で助かる命の価値はお金より尊くお金に替えることは出来ないとし、価値の高低を比べ数学的な理屈から盗みを正当化します。一方、女の子のエイミーは、薬を盗んだ夫が刑務所に送られるならば奥さんの病気は一層重くなると考え、答えを保留します。従来、アメリカでは、子供の成熟は、その行動における自律性の獲得、個人の権利主張のちから、抽象的な判断能力によって評価されました。そのため、普通だと、褒められるのはジェイクです。しかし、ギリガン先生は、エイミーの考え方には、人間関係へのその場に応じた気配り、他者への配慮があり、それも人間の成熟のためには重要としました。現在、ギリガン先生は、エイミーの「もうひとつの声で」語られてきたケアの倫理(ethic of care)―思いやりの道徳、配慮の倫理に光をあてた先覚者として世界中に認められています。他者への思いやりは市場での価値に乏しく競争社会ではマイナスに働くかもしれない。しかし、現在、社会が多様性(ダイバシティー)社会へと移行し、女性・障害者・高齢者を含んだ視点から互いにケアを与え合う時代になってきた。このことは皆さんも実感していると思います。

ここで質問です。皆さんは、ギリガン先生の設問に対して、ジェイクとエイミー、どちらの意見に賛成ですか?エイミーを選んだ皆さん、多分、圧倒的多数派に提案があります。

 

エイミー派への提案1:ジェイクの気持ちを想像して、経済学を勉強しよう。

経済学にでてくる主体、それは、消費者と生産者ですが、彼らはどういう人たちなのか。君たちが勉強する経済学では、社会における主体とは、自分が得る喜び(効用)や儲け(利潤)をハッキリ把握し、それを最大化する計算をし、その結果によって意思決定するのが前提です。ジェイクばかりの世界を想像して、そこで経済がどのように回っていくか、想像してみる。そこでは、皆が自立性を持って行動し、当然の権利を主張し、自分の利益のために抽象的な思考をフルに活用する。個々人がそのように振る舞って始めて、経済学の世界では需要と供給が等しくなり均衡価格によって資源配分が最適化されます。経済学を理解するためには、自分がもしジェイクならどう振る舞うかを想像して、教科書を読み演習問題を解くことが必要です。ジェイクになるだけで経済学の勉強が格段に進むので、是非、試してください。ひょっとして、人生、変わるかも!

 

エイミー派への提案2:エイミーの気持ちがわかるなら、気配りの力を使ってケアの時代の主役になろう。

現在、社会はITAIにより日々、進化しており、麗澤大学にも工学部※が出来ます。こんな時代を迎え、皆さんは何をすれば良いのでしょう。プログラマーであり、台湾のデジタル担当大臣のオードリー・タンによれば、現代のプログラミングは、誰かの手で8、9割まで書かれたプログラムを修正し完成させる作業になりました。デジタルに関する「スキル」の学習はもちろん必要です。しかし、プログラムによって何をどう実現したいのか、その姿をハッキリさせるのがもっと大事です。それを可能にする「素養」として、タンは、個々人の自発性とお互いの相互理解、そこで生まれる共好(Gung Ho)をあげます。コンピュータに出来ることはPCに任せる。皆さんは進んで社会参加し、見知らぬ同士交流し、社会にとってウレシイ価値を共同して作り出す。周りを大切にするケアの時代が求める仕事は、エイミーの気配りに向いた皆さんにぴったり。価値の源泉は、この仕事で社会や環境、経済に良い結果をもたらす、公共利益をもたらすと感じること。気配りの力を使ってケアの時代の主役になりましょう。

※現在、設置認可申請中

麗澤大学経済学部特別教授 馬場靖憲