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【実施報告】兼原信克特任教授による特別講義「戦後日本外交の歩み」を実施
2025年7月4日(金)、国際学部 阿部亮子准教授が担当する授業「Global Issues A」において、兼原信克特任教授を講師に迎えた特別講義が実施されました。

本授業は、現代の戦争や安全保障上の脅威について、軍事戦略や外交の視点から多角的に学ぶことを目的としています。今回の特別講義では、「戦後日本外交の歩み」をテーマに、第二次世界大戦終結後の日本外交の展開について、国際情勢の変化や当時の各国の戦略とあわせて解説がなされました。
兼原特任教授は、東京大学法学部をご卒業後、外務省に入省。北米局日米安全保障条約課長、総合政策局総務課長、国際法局長などの要職を歴任し、長年にわたり外交実務の最前線で活躍されてきました。その後、内閣官房副長官補(外政担当)を経て国家安全保障局次長を務められ、2025年4月より本学に特任教授として着任。これまでの知見と経験をもとに、学生たちへの教育・指導にあたられています。
講義の冒頭では、兼原特任教授が「外交とは何か」という根本的な問いに立ち返りつつ、外交を考えるうえで重要な三つの視点を示されました。まず挙げられたのは、国際社会における大国間のパワーバランスの変化が自国にどのような影響を及ぼすのかを的確に捉えることの重要性です。次に、自由貿易制度の確立を通じて世界の貿易・投資が拡大し、それが各国の経済成長と国益の増大につながってきたという視点が紹介され、持続可能な経済発展のためにも国際経済秩序を支える枠組みの維持が不可欠であることが強調されました。さらに、現代の日本外交においては、自由や民主主義、人権といった価値を軸とした「価値観外交」が重要性を増しており、自由主義的な国際秩序の成熟において日本が果たすべき役割についても言及されました。
その後の講義では、サンフランシスコ平和条約に始まり、旧日米安保条約、日ソ共同宣言、日米安保条約の改定、沖縄返還協定、日中共同声明、核不拡散条約、石油危機、アフガン戦争、新冷戦、天安門事件を経て、冷戦後における日米同盟の成熟に至るまで、戦後日本外交の大きな節目が網羅的に解説されました。これらの歴史的出来事について、当時の国際情勢と各国の戦略的背景をふまえながら語られる内容は、まさに外交の現場を知る兼原特任教授ならではの重みのあるものであり、学生たちは真剣な眼差しで耳を傾けていました。
講義の後半には質疑応答の時間が設けられ、学生からは「田中角栄元首相はなぜ日中国交正常化に踏み切ったのか」「外交官時代に印象に残っている出来事はあるか」「外交官という仕事とは」など多岐にわたる質問が寄せられました。一つひとつの問いに対して、兼原特任教授はご自身の実体験も交えながら丁寧に答えられ、学生たちは外交という仕事の奥深さと責任の重さを実感していました。
今回の特別講義は、日本と世界の関係を歴史と現在の両面から捉え直し、国際社会における日本の立ち位置や今後の在り方について深く考える貴重な機会となりました。