経済社会総合研究センター インフォメーション

1月22日富士通総研 柯隆氏を講師に研究会【開催報告】

1月22日(金)16:30から1時間半にわたり富士通総研主任研究員の柯隆氏を講師に迎え、「2010年の中国の展望と新たな日中関係」と題し公開研究会を開催しました。教員、学生、一般を含む30名ほどの研究会となりました。
現在の日本の不況の中、同じアジアの中国はどうなのか。聴講した参加者は熱心に聞き入りました。

今回の主なポイントは以下のとおり
○2009年の中国経済はV字回復を示し、前年比8.7%成長となった。IMFなどの当初の見込みの5%を大きく上回った。2010年も10%程度の成長を実現できる見通しである。
○名目GDPで2010年に中国は日本を抜いて、米国に次ぐ世界第二位となる。しかし為替レートの動きにも依るが、一人当たりGDPでは、日本の10分の1程度である。
○人民元の国際化は、中国に隣接する国境貿易では元建て取引が増えているが、国内の金融自由化、金利の自由化が進められないために、人民元の切り上げや弾力的な動きは期待できない。金利規制の中で、国有大銀行が多くの利ざやを得て、利潤を得ている現状を打破できない限り、金利の自由化や為替の弾力化は難しい。
○2年間にわたって4兆円にも上る財政からの刺激策は、拙速すぎると無駄な投資を増やす虞もある。また、財政赤字がGDPの3%程度に上昇する。
○GDPの成長率以上に重要なことは、雇用の確保である。この5年間を見ると、成長しても雇用の伸びが少ない。大学卒業生が年間610万人いる現状では、10%成長しても520万人程度の雇用しか生まれない。サービス産業をいかに増やすかが課題である。サービス産業の労働生産性は低い。省ごとの規制がその原因である。物流、金融、情報といった産業を振興させることが課題である。
○内需振興のためには、労働分配率を引き上げることが必要。2008年のそれは43%と著しく低い。しかも、社会の多様化が進んでいる。いわゆる中間層(富裕層)は全人口の1割程度である。しかも、こうした階層の親が国家の幹部、国有企業の幹部であったりすると、社会階層が固定化する虞もある。
○2012年が重要な年になる。胡主席の交代、万博特需の失速、一人当たりGDPが3000から4000ドル程度に達することが、民主主義改革を不可避にさせる可能性が出る。アジアの国の経験を踏まえて、ソフトランディングの道を探るべきであろう。

成相教授の挨拶
成相教授の挨拶
講師の柯隆氏
講師の柯隆氏
会場の様子
会場の様子