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【開催報告】7月22日開催公開研究会(株)日本アプライドリサーチ研究所主任研究員 露木かおり 氏

経済社会総合研究センターでは、研究活動の一環として、学内外の講師を招いてのセミナーや研究会を企画・開催をしております。
麗澤大学生涯教育プラザで平成23年7月22日、(株)日本アプライドリサーチ研究所主任研究員の露木かおり氏を講師に迎え、「外国人技能実習制度が日本中小企業、技能実習生にどのような影響を与えたか?-外国人技能実習制度の実態調査を踏まえて-」をテーマに研究会を開催しました。以下、当日の講演の内容をご紹介いたします。

露木氏によると、1960年代に日本企業の海外進出が活発になったことを踏まえて、外国人就労者に対する日本での技能研修の必要性が高まったという。現在に至るまでは特に、専門的・技術的分野における外国人の受け入れを積極的に行ってきている。これは多くの場合、日本の大企業に見受けられるケースであった。しかしながら、中小企業を中心とした外国人による単純労働力の受け入れに関しては、日本政府はこれまであまり積極的に向き合ってこなかった。ところが、少子高齢化が進行する現在の日本においては、単純労働に従事する若者が年々減少し、海外からの労働力に頼らないと経営が実質的に立ち行かないという深刻な現実に直面している。このような背景の中で、外国人技能実習制度が1993年にスタートした(2010年7月に制度改正)。

露木氏のヒアリング調査によると、この制度を活用して海外から人材を受け入れた中小企業の中には、外国人労働者に対して積極的に取り組んでいる成功事例があるという知見が得られた。日本で働く期限が3年と決められているため、その間に技能を磨いたり貯金を目的にするなど、モチベーションが高い労働者も多いという。そのため残業もいとわなかったり、また指導する側の日本人労働者が刺激を受けて、自主的に勉強をし直したりするケースも見られた。他には、社内に必要事項を外国語で表記したり、仕事を通して当人に日本文化を教えたりするなど、日本人労働者と外国人労働者の間に国際化が図られたり、互いのコミュニケーションが活発になったりした例もあったとのことである。
しかしながら、制度利用による外国人技能実習の全体的な状況については、まだまだ見えてこない部分も多いのが現実のようである。
参加者からは、同制度の目的と現実とにズレがあること、また就労期限の延長や外国人技能実習生が置かれている環境改善の必要性などが問題提起される一方、外国人技能実習生の受け入れの成功事例にもどんどんスポットを当ててこの分野の研究が進められていくべきであるとする積極的な意見も提起された。
 
今回は、さまざまな立場からテーマ(外国人技能実習制度問題)に対しての経験談や意見が飛び交い、まさに問題の本質に迫る「共創空間」が繰り広げられたひとときであった。

司会の大場裕之教授
司会の大場裕之教授
講師の露木氏
講師の露木氏
熱弁を振るう露木氏
熱弁を振るう露木氏
熱心に聴講する聴講者
熱心に聴講する聴講者