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【開催報告】専門家を招きシンポジウムを開催

平成24年5月27日、麗澤大学経済総合研究センターシンポジウムが校舎かえで1503教室にて開催されました。
「シェールガスの新展開と国際関係」をメインテーマに、本学経済学部の真殿達教授による「シェールガスのインパクト」と題しての問題提起に続いて、「世界及びアジアのガス情勢と今後の課題」について日本エネルギー経済研究所常務理事の小山堅氏、「世界の天然ガス価格動向と日本の天然ガス調達計画」について大阪ガスゼネラルマネージャーの宮本彰氏、「シェールガスは世界の産業構造を変えるか」について日本経済新聞社編集委員の後藤康浩氏による講演が行われました。講演終了後のQ&Aセッションは、フロアーから様々な質疑が寄せられたほか、シェールガスに詳しい藤田和男東京大学名誉教授と経済産業省OBでエネルギー資源問題に詳しい東洋大学久留島守弘教授が講演と質疑に関してコメントを述べられ、大変活発な討論となりました。
シェールガスは頁岩(shale)層に存在する天然ガスのことで、水平掘りとフラクチャアリング技術の高度化によって頁岩層からガスを取り出すことができるようになったものです。従来のガス田と異なる地層から回収しているため非在来型天然ガス資源といわれています。「半世紀もすれば枯渇する」といわれていた天然ガスは、こうした技術開発により非在来型の資源を採掘することが可能になり、枯渇の心配が薄れてきました。
講師陣から、既存の国内のパイプライン網を利用し安価に(従来の1/10)でシェールガスを利用しているアメリカ、液化天然ガス(LNG)の世界最大の輸入国であるとともに海外のシェールガスに投資し始めた日本、エネルギーを圧倒的に石炭に依存してきた中国のシェールガスの潜在性、在来型天然ガスの輸出を拡大しようとするロシアの模様が紹介されました。
低価格が続くことが予想されるため、シェールガスはエネルギーを巡る国際関係や産業全般に多大な影響を及ぼす可能性があるのではないのか、という指摘は注目されます。既に、太陽光発電や風力発電など自然エネルギーが競争力を失い始めています。欧州では風力発電企業の経営悪化や太陽光発電パネルメーカーの倒産が目につきます。発電だけではなく自動車産業にも大きな変革をもたらす可能性が紹介されました。日本では「環境配慮の特殊車両」程度に見られている天然ガス車が一部の途上国ではガソリン車に比べ維持費が格段に安いことから広く利用されているという事実は、将来の自動車の動力源がどのように展開していくのかを暗示するのかもしれません。
シェールガスの本格化に伴い天然ガス価格が急落してきているにもかかわらず、世界1高価なLNGを買い続けている日本のエネルギー輸入の在り方を問う議論は中心的話題にはなりませんでしたが、今後の大きな課題になることを示唆したシンポジウムであったと思われます。

パネリストたち
パネリストたち
講演に聞き入る参加者
講演に聞き入る参加者
討論をするパネリスト
討論をするパネリスト