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【開催報告】公開研究会 (株)電通 高橋 徹氏

経済社会総合研究センターでは、研究活動の一環として、学内外の講師を招いてセミナーや研究会を企画・開催をしております。

麗澤大学生涯教育プラザにて平成24年7月13日、(株)電通の高橋徹氏を講師に迎え、『日本のテレビCMに見る価値観の今昔比較』をテーマに研究会を開催しました。この研究会は、同センターの「共創空間開発」プロジェクト(代表 大場裕之)の一環として実施され、一般社会人と学生を含む61名が参加した。高橋氏による広告の奥深さを示唆する刺激的なプレゼンに触発され、白熱した3時間を超す研究会となりました。以下、当日の対話重視の講演(第1部)およびテレビCM問題に対し参加者全員で向き合う「共創空間」での学問力向上の実践内容(第2部)をご紹介いたします。

(第1部:対話重視の講演)
高橋氏は、テレビCMに入る前に、「広告とは何のために誰のためにあるのか」という本質的な問題を提起し、広告とは、様々な消費ニーズと企業・公共組織とをつなぐためにあることを会場の参加者とともに共有した。同氏は、「あなたが今、100万円を手に入れたら何に使いますか?」という問題を投げかけ、会場のヤング(学生たち)から「海外旅行、車を買いたい、震災とか世界中で困っている人に寄付してあげたい」などの意見が出ました。高橋氏はこの問いには、消費者の潜在的ニーズがあり、企業と広告とがかかわる5つのコミュニケーションがあることを特性要因図で紹介した。
このあと、時代を映す鏡と言われるテレビCMについて、1980年代後半のバブル期のテレビCMを実際にビデオでみながら、今日のテレビCMと何が異なるのか、問題提起された。会場からは、①昔の広告は過剰表現が多かったが、最近はひかえめ、抑え目が増えてきた、②いつからかサラ金の広告がすごく多くなった、③ソーシャル・コミュニケーションのニーズ・広告が昔はほとんど無かった、④昔ははなやかな芸能人、今はスポーツ選手が多い、などが指摘された。高橋氏は、昔(バブル期)と最近のCMとの違いの背後にある要因として、以下の点を示した。[メディア料金の高騰・CG技術の進歩・日本のグローバル化・デジタル技術の進歩・広告制作者の変化・音楽業界収益モデルの変化]

(第2部:「共創空間」での学問力向上の実践内容)
以上のようなテレビCMに関する知識をふまえて、高橋氏から、広告を複眼的、多面的に捉える2軸の「共創空間」のデモンストレーションが行われ、2つの問いを立てて(タテ軸とヨコ軸)共創しました。ひとつは、広告の伝達の仕方であり、広告は情報を「理性」的に伝達すべきか、あるいは「感性的」に印象づけるべきかという問いであり、もうひとつは、テレビ広告そのものを縮小すべきか、拡大すべきか、という問いだった。
タテ軸:「広告=理性」派(広告は情報を理性的に伝達すべきである) VS. 「広告=感性」派(広告は情報を感性的に伝達すべきである) ヨコ軸:「広告縮小」派(広告はもっと少ない方が良い)VS.「広告拡大」派(広告はもっと多くてもよい)
会場からの意見について挙手で確認すると、「感性重視・縮小」派が最も多かった。
デモンストレーションに引き続き、会場の参加者と広告に関し、特に関心の高い問いを探した結果、「テレビCMに(から)影響を受けているか否か」という問いを共有化でき、マグネットとボールを活用して共創することにした。その結果、「影響を受けている」派(CMをきっかけに関心が強まった、印象に強く残った)が「影響を受けていない」派よりもかなり多かった。
会場全体が熱気を帯びたが、高橋氏もその例外ではなかった。上記の広告影響問題に関するキャッチボール(参加者全員での対話・共創)から触発され、ブランドは大事かそれとも気にしないか、などという新たなる提案が飛び出した。この詳細は割愛するが、さらにヒートアップしたことは容易に想像されると思う。今回の研究会での総括として、広告に対して様々な価値観を持つ参加者が「共創空間」で向き合うことができた。また、異なる価値観に触れ、広告そのものの意義、および広告影響問題などを問うことで学問力が向上し、「共に生き、共感し、共有する」共創体験ができたことの意義は大きいことを痛感した。

以上

大場先生
大場先生
講義を聴く参加者
講義を聴く参加者
講師の高橋氏
講師の高橋氏
研究会の様子
研究会の様子
講義に熱が入る高橋氏
講義に熱が入る高橋氏