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2015.11.10|最終更新日:2020.07.24|

【開催報告】「いま、中央銀行の使命を問う」元日本銀行国庫局長・島村髙嘉氏が講演

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平成27年度麗澤オープンカレッジ特別講演会(後援:千葉県教育委員会、柏・流山・松戸・我孫子・野田各市教育委員会および柏商工会議所)の後期第2回目が 11月7日(土)に開催となり、島村髙嘉氏(元中央大学教授、元日本銀行国庫局長)を迎え「いま、中央銀行の使命を問う-歴代日銀総裁に学ぶこと-」と題して講演を行いました。当日は島村先生の時折紹介されるこぼれ話に笑いも起こる和やかな雰囲気の中、220名の方々が会場を埋め、熱心に聴講されました。

まず島村先生から講演の前段として「現代は中央銀行にとって試練の時代といえる。リーマン・ショックから7年経ち、世界の中央銀行がこれまでにない舵取りが求められている。今中央銀行は何を問われているか、私たちは何を問うべきかを考えたい」と問題提起がされました。講演に先立ち、成相 修 麗澤オープンカレッジ長から島村先生の紹介がなされ、本日のテーマである「中央銀行の使命」はまさに金融・財政政策が世界的に不安定な今、改めて考える絶好の機会であると捉えられました。

IMG_9864続いて、日本経済と世界経済の現状および、中央銀行の基本的な役割を紹介されました。氏は、日本銀行・黒田総裁の任期はちょうど折り返し地点にいるが、先行き不安の世界情勢に金融政策が実体経済になかなか届きにくい状態だと解説。アメリカもシェール革命の奏功もあるが出口戦略で苦戦し、EUもギリシャの金融危機に足を引っ張られ、中国はチャイナショックという大きな問題を抱えている。こうした状況について「日・米・欧・中の4カ国はいずれも波乱含みで、まさに試練の年である」と言及されました。

 

世界各国の中央銀行の基本的な役割は、①物価の安定を図ることを通じて「国民経済の健全な発展に資すること」、②金融の円滑な確保を図り「信用秩序の維持に資すること」とし、経済活動がもたらすインフレ・デフレの波をいかに小さくして、穏やかな波にすることが挙げられています。

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その目的のため、いま、中央銀行について議論が起こっていることとして、「政策の独立性」「伝統的な政策と非伝統的政策」「グローバル時代における協調」を挙げられました。リーマン・ショック以前は、世界的に健全財政だったため伝統的なケインズが示した理論も通用したが、各国が赤字財政の現代ではこれまでにない対策が求められている。グローバル時代の現在では、自国の利益だけ考えた政策ではなく、世界経済が複雑に絡まりあっている中で、真の協調が求められていると解説があり、新聞等で知っているようで知らなかったことが多く、改めて気づかされる面白さを感じました。

最後に、黒田総裁の政策運営についてこれまでにない特異点に触れられ、「中央銀行は政府とつかず離れずの不即不離の関係を保ちつつ、『物価目標を2年で2%のリフレ政策』という期間にとらわれた政策ではなく、中長期的な視点で冷静に政府へ提案していくべきであろう。金融政策は判断を誤ると、経済混乱の主要な犯人にしてしまうため、政策への過信をしないことも重要である」とまとめられました。

日本銀行で長年ご活躍され、歴代総裁とも親交のある島村先生だからこそお話いただける内容だったと感じました。ご興味ある方はぜひ島村先生のご著書も一読いただくことをお勧めいたします。(「戦後歴代日銀総裁とその時代」)

次回、第3回目の特別講演会は、12月5日(土)に渡辺利夫氏(拓殖大学総長)をお招きして「戦後70年-何が問題なのか-」をテーマに開催します。詳細は麗澤オープンカレッジ(ROCK)のHPよりご確認ください。

http://rock.reitaku-u.ac.jp/news/detail/39/