お知らせ

教育・研究
2026.06.05

【開催報告】石橋佐枝子准教授をお招きし、特別講義「対話実践でひらく障害と現代社会」を実施しました

2026年5月28日(木)、グローバル・スタディーズ入門A「グローバル化社会と公共圏〜現代文明批評理論〜」の授業において、札幌市立大学看護学部の石橋佐枝子准教授をお招きし、特別講義「対話実践でひらく障害と現代社会」を実施しました。

本授業では、グローバル化社会における公共圏や現代社会の課題について学ぶ一環として、「障害」「生きづらさ」「配慮」「支援」をテーマに、講義とグループ対話を組み合わせた学びを行いました。

石橋先生は、病院や中学校で心理士として勤務された後、看護師を志して名古屋市立大学看護学部看護学科に入学され,野村直樹教授主催のナラティブ研究会(現オープンダイアローグ研究会)に参加。卒業後は、看護師,看護学部の教員へ。2017年にはフィンランドでオープンダイアローグおよび未来語りのダイアローグを視察されました。2024年には福井大学大学院医学系研究科統合先進医学専攻を修了し、博士(医学)を取得。2025年より札幌市立大学看護学部准教授として、神経発達症の支援に関する研究などに取り組まれています。

当日の講義は、まず対話のルールを共有することから始まりました。「話したくないことは話さなくてよい」「他の人の話を否定・評価しない」「結論を急がない」「話した内容を、他の場で個人が特定される形で話さない」といった約束を確認したうえで、学生たちは6名程度のグループに分かれ、安心して考えを言葉にできる環境の中で対話を重ねました。

前半では、「『障害』と聞いて思い浮かぶものは?」「生きづらさはどこから生まれる?」「『配慮』は誰のため、何のためにあるもの?」といった問いを通して、障害や配慮に対する自分自身の前提を見つめ直しました。

講義では、障害を「個人の中にあるもの」として捉える個人モデルと、障害を「個人と環境のあいだに生まれるもの」として捉える社会モデル・関係モデルが紹介されました。たとえば、車椅子を使用する人が2階の教室に行けない場合、その困難は本人の身体だけにあるのではなく、エレベーターの有無、教室配置、時間割、周囲の理解など、環境や制度にも関わっています。

石橋先生は、生きづらさを本人の特性だけに閉じ込めて考えるのではなく、環境、制度、周囲の期待、コミュニケーション、役割や関係性との「あいだ」に生まれるものとして捉える視点の重要性を示されました。

また、「配慮」については、特定の誰かを優遇することではなく、その人がその場に参加できる条件を整えることとして説明されました。公平とは「全員に同じものを与えること」ではなく、「それぞれが参加できる状態をつくること」であり、ある人のための環境整備が、結果的に多くの人にとって参加しやすい場をつくることにもつながります。

後半では、「『障害のある人を支援する』という考え方には、どのような可能性と限界があるか?」「大学や地域の中で参加を妨げているものは何か?それはどこから生まれるのか?」という問いをもとに、学生たちは大学生活や地域社会の中にある参加のしにくさについて考えました。

講義の中では、社会的処方への関心も紹介されました。地域のボランティアグループなどの場において、「支援される側」と見なされていた人が、別の場面では誰かを支えたり、場に貢献したりすることがあります。そこでは、「支援する人/支援される人」という関係が固定されるのではなく、人がある場面では支えられ、別の場面では誰かを支えるという相互性が生まれます。

今回の特別講義を通して、学生たちは「支援」から「参加」へ、そして「一方向の関係」から「相互性のある関係」へと視点を広げる機会を得ました。大学や地域社会の中で、誰もが参加しやすい場をどのようにつくっていくのか。今後も授業を通じて、現代社会における公共性と共生のあり方について考えを深めていきます。

  •   石橋准教授による講義の様子

  •   「生きづらさはどこから生まれるのか」という問いをめぐって、学生と
      対話する石橋准教授

  •   一方的な講義ではなく、学生間の対話を重視した授業デザイン

  •   講義終了後に石橋准教授と記念撮影。対話の場を支えるという意味の
      花田ゼミ恒例ポーズ

参加学生の声

「障害と聞くと、最初は身体的な障害を思い浮かべていました。しかし、講義や対話を通して、発達障害や精神的な困難など、外からは見えにくい障害も身近にあるのだと気づきました。相手を診断名だけで見るのではなく、その人が何に困っているのかを知ろうとする姿勢が大切だと思いました。」

「大学や地域で参加を妨げているものは、物理的な段差や制度だけではないと感じました。すでにできあがったグループの雰囲気、周囲の視線、声のかけ方、内輪だけで完結している空気も、人を参加しにくくさせる壁になるのだと思いました。」

「「誰でも来てください」と言われても、その場の雰囲気によっては、実際には入りにくいことがあります。歓迎しているつもりでも、受け取る側には「自分はここにいてよいのか」という不安が生まれることがある。参加しやすい場をつくるには、言葉だけでなく、雰囲気や関係性も大切なのだと感じました。」

「生きづらさは、社会がつくる「普通」の基準から生まれることがあると感じました。その基準に少しでも合わないと、自分は違う、参加してはいけないのではないかと思ってしまう。だからこそ、誰にとっての「普通」なのかを問い直すことが大切だと思いました。」

参加した修学サポート相談室職員の声

「「支援する人と支援されている人はいつも固定されているのか」という問いが一番印象に残りました。必ずしもサポートとは一方向でなく、その人にとって可能性を広げるためにあることや誰かの自己満足的なものではないことを改めて感じました。学生さんと多角的に「障がい」について考えることができ、非常に学び高い経験でした。 」

「日常的に障害や支援に携わっていますが、改めて言葉にする機会、認識を引き締める機会はそう定期的に与えられるものではありません。今回学生の意見も伺い、再度多角的な視点と自身の課題を意識することができました。特に自立性を促すことと支援することのバランスを見誤らないようにしたいものだと感じました。貴重な機会をどうもありがとうございました。」

「今回の授業に参加し、講義と対話が組み合わさっていることで学生と接していく上での理解がより深まりました。学生さんと合理的配慮について対話する際、生きづらさの「あいだ」にあるものを意識して行うようにしたいと思います。」

公式LINE オープンキャンパス AIに質問