お知らせ
【開催報告】廣池学園創立90周年シンポジウム「日本語の明日を考える~共生社会の『ことば』を広げていくために~ 」を開催。
2024年4月に「日本語教育機関認定法」が施行され、日本語教育は新たな制度の下で大きな転換点を迎えました。この歴史的な変化の中で、日本語の可能性と社会的役割を多角的に考える場として、廣池学園創立90周年シンポジウム「日本語の明日を考える~共生社会の『ことば』を広げていくために~ 」が、2025年5月31日(土)、麗澤大学 校舎さつきにて開催されました。
本シンポジウムは、国家資格として新たに制度化された「登録日本語教員」制度の開始や、「認定日本語教育機関」制度の発足といった、日本語教育界における重要な制度改革を背景に企画されました。また、在留外国人の増加、災害時・行政現場における「やさしい日本語」の必要性、多文化共生社会における言語の役割など、現代日本社会における日本語教育の課題はますます複雑かつ多様化しています。
麗澤大学は今年度より国際学部と大学院の両方の課程において、文部科学省が正式に認定する「日本語教員養成機関および実践研修機関」として登録されました。今回のシンポジウムは、長年にわたり日本語教育と教員育成に取り組んできた麗澤大学国際学部が中心となり、教育・言語・社会の第一線で活躍する専門家を招いて開催したものです。
【当日のプログラム】
13:30 開会・趣旨説明:岩澤 知子氏 (麗澤大学教授)
13:40 基調講演:庵 功雄氏 (一橋大学教授)「多文化共生社会への課題と日本語に求められるもの」
14:25 政策講演:増田 麻美子氏 (文部科学省日本語教育課・日本語教育調査官)「日本語教育機関認定法の施行と今後の展望について」
15:10 パネル発表①:加藤 早苗氏(インターカルト日本語学校校長)「"日本語教育機関"の過去と現在、そして未来へ」
15:40 パネル発表②:大関 浩美氏(麗澤大学教授)「日本語の多様性と異文化理解ー『正しい日本語』の呪縛を超えて、『これからの日本語』のために」
16:10 パネル発表③:金 孝卿氏(麗澤大学教授)「日本語学習支援者の多様化とアイデンティティ形成を考えるー『子ども日本語支援すまいる』の活動を例に」
16:50 登壇者によるディスカッションおよび質疑応答
17:30 閉会/懇親会
当日は、学内外からの参加者に加え、オンライン視聴者を含む多くの方々にご参加いただきました。
基調講演や各発表では、専門的な知見と現場の実践を結びつけた、説得力ある内容が展開され、質疑応答やディスカッションでは活発な意見交換がなされました。
特に印象的だったのは、「日本語学習者と支援者の需要と供給のバランスが崩れている」「学習者の価値観の多様化と、それに応える教育の必要性」「日本語学習者の多様化に加え、日本語学習支援者も多様化」など、"量"と"質"の両面における支援のあり方が問われていた点です。
今回のシンポジウムは、日本語教育の現在地と未来像を、制度・実践・文化の観点から多角的に捉える機会となりました。
多様な価値観や背景を持った人たちとの共生が不可欠なこれからの日本社会において、「ことば」を通じて他者とつながる力こそが、真の共生社会の実現に必要不可欠である──そのような認識が会場全体に共有された一日となりました。
来場した方々からは
「『やさしい日本語』の大切さを痛感」
「『やさしい日本語』を日本全国で使用できるよう、小中学校で学ぶ機会があれば良いと思います」
「在留外国人が急増する日本社会において、私たちがどう日本語を使って、何ができるのかを、真剣に考えていく必要が迫ってきたと感じた」
「今後は日本語教育業界のみならず、日本社会全体に理解を広げていくことが重要だと実感しました」
などの感想をいただきました。
麗澤大学では今後も、日本語教育と共生社会に資する研究・実践を積極的に推進してまいります。
今回のシンポジウムの様子は後日、麗澤大学Youtubeチャンネルにて配信する予定です。
ぜひ、ご覧ください。
庵 功雄氏
増田 麻美子氏
加藤 早苗氏
大関 浩美氏
金 孝卿氏
岩澤 知子氏
ディスカッションの様子
徳永学長による閉会の挨拶