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2018.07.17|最終更新日:2020.08.05|

【開催報告】「第2回 知の発信会」を開催
~ 中小企業の地域社会に対するCSR活動が業績に貢献する過程 ~

 2018712日(木)16:4017:40に、経済学部主催の「知の発信会」が開催されました。第2回は、 横田理宇助教が「中小企業の地域社会に対するCSR活動が業績に貢献する過程-ソーシャル・キャピタルの視点に基づく事例研究-」と題し、研究報告を行いました。

以下、横田助教からの報告です。

本報告では、大企業を中心に分析されてきた従来のCSR研究の枠組みでは,業績に繋がらない慈善事業やコストとして捉えられてきた中小企業の地域社会に対するCSR活動について、ソーシャル・キャピタル理論(以下SCT)の枠組みから捉え直すことで業績に繋がる過程を検討しました。

 これまでCSRに関する先行研究の多くでは、CSR活動が業績に貢献する過程について、ステークホルダー理論(以下ST)による説明がなされ、CSR活動は企業を取り巻くステークホルダーに対するシグナリングの効果を持ち企業の評価向上に繋がるため業績に貢献すると考えられてきました。しかし,この枠組から中小企業のCSR活動を捉えた場合、製品が直接消費者の目に触れることやブランドイメージを持つことが少なく、また、CSRに関する情報発信が得意でない中小企業では、シグナリングの効果が想定しにくいため、業績に貢献する過程が見えにくいのが現状です。そして、中小企業の地域社会に対するCSR活動は、特にその意義が捉えにくく、慈善活動として認識されてきました。これに対して,中小企業のCSR活動は、地域社会における信頼関係の構築やネットワークを通じた情報交換・協調行動などソーシャル・キャピタルに関係する要素を多く含むことから、SCTの枠組みからの議論の必要性が指摘されています。

 そこで本研究では、STとSCTそれぞれの視点からCSRが業績に繋がる過程を整理し、STの限界を示すとともに、中小企業の地域社会に対するCSR活動が業績に貢献する過程を、SCTの枠組みから捉え直すことによって説明することを試みました。具体的には、群馬県高崎市近隣で活動する中小企業10社に対する定性的事例調査を行ったところ、中小企業の地域社会に対するCSR活動は、地域におけるソーシャル・キャピタルの蓄積を通じて,1)取引費用の低減によるネットワークの拡大,2)経営に関する新たな知識の獲得,3)地域における企業認知度の向上,4)自社にない知識や技術・ノウハウを補う手段としての協業の4つのルートから事業機会の拡大に繋がり,結果として業績に貢献している可能性があることが明らかとなりました。これらの発見は、CSR研究におけるCSTの視点の有用性を示すものであり、本研究の貢献です。また、CSRはコストであると考えがちな中小企業経営者に対して、CSRが業績に貢献している可能性を示したことは実践への示唆となりました。

研究発表中の横田助教

質疑応答では、参加者からの質問が相次ぎ、報告者、参加者を交えた活発な意見交換が行われました。

次回のスケジュールは下記の通りです。多くの方のご参加をお待ちしております。

日時:20181011日(木)16時頃~(教授会終了後)

会場:かえで2階・第二会議室(教員控室のとなり)

報告者:寺本 佳苗 准教授

題目:社会的課題に関わる制度の生成と影響に関する研究-紛争鉱物問題の解決に向けた同種異種組織の集合の動き-