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教育・研究
2024.07.08

【開催報告】テキスタイルアーティスト Martin Churba氏による特別講義

 625()に国際学部 黒須里美教授が担当する「国際社会学」の授業にて、アルゼンチンからファッション業界に影響を与え続けてきたテキスタイルアーティスト Martin Churba氏を講師として迎え、特別講義「"Art, Life, and Gender" with Martin Churba」を開催しました。

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 Churba氏は、アートやファッションをメディアに、日本とアルゼンチンをつなぐ交流活動を2004年より行っているコンテンポラリー・アーティストです。テキスタイルを「第二の皮膚」と謳い、人が社会とのつながりや関わりを通じて様々に影響を与えあいながら形成されていく価値そのものについて、またその価値を本質的に理解することや共有することの大切さについて、作品を通じて投げかけています。

 「国際社会学」の授業は、ジェンダーや家族の変化を通じて、国際社会の多様性を理解し、グローバルな問題に対して柔軟な視点を養うことを目的に開講しています。「異なる文化や価値観をつなげて学ぶ」という本学国際学部の理念とも一致していることから、今回の特別講義が実現しました。

 授業は、今回の特別講義をコーディネートいただいた株式会社C's Creative 代表取締役 大坪様による逐次通訳で進められました。

 20年前、国外の新たなビジネス拠点を探す為、アルゼンチンからニューヨークに渡米したChurba氏。その際にのちに彼のブランドの代理店となる日本企業が経営するショールームを偶然発見し、日本との交流がスタートしました。

  •  特別授業の会場となった校舎「さつき」のiArena(大型実験室)には、日本の着物とアルゼンチンの民族衣装であるポンチョを組み合わせた「KIMONO PONCHO」や、ファッションも地球にとってサステナブルでないといけないという想いからゴミやリサイクル品を活用したアート作品「Humana」、「Reparo」など沢山のChurba氏の最新の作品が並べられました。作品に関する映像を視聴しながら、学生たちは近くで作品を鑑賞するだけではなく、実際に触れさせていただきながらChurba氏の作品への想いや情熱を感じとっていました。

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  • 作品鑑賞後には質疑応答・感想共有の時間が設けられ「全て自分で考えて、一からアート作品を作るのが難しそう」という学生からの感想に対しては「お腹がいっぱいでもデザートが食べたくなります。作品への情熱がほとばしると、そのような感覚になります。ゴミが豊かなアートになると気づいたときからずっとそのような感覚にいます」とアート制作への想いをお話いただきました。

     また、「これまで、一風変わった材料となったものはありますか?」と尋ねられた際には、「何でも面白いと思っています。『自分の為に欲しい物』は地球の為になるのかと考えた時、ゴミやリサイクル品でアート作品を作るという新しい価値に気が付きました」とお答えいただきました。

 

    • image.jpg「Reparo」に動きを与えることで、独特の動きや光の入り方を感じました
    • 〇IMG_1683.jpgゴミもアート作品となることで、価値が生まれることを体感しました
    • 〇IMG_1676.JPG日本とアルゼンチンの伝統を組み合わせた「KIMONO PONCHO」
    • 1000006944(1).jpg試着もさせていただき、アートを肌で感じました

 最後に、国際社会学の1つのテーマである家族の形についてお話いただきました。
 出身地であるアルゼンチンで2010年に同性婚が合法化されたことを機に、パートナーの男性との間に養子として男の子を迎えられたChurba氏。
 Churba氏とパートナーの方、お子様、そしてお子様のお母様という、お父様お2人にお母様お1人、そしてお子様という新しい家族の形を築かれています。

 地域コミュニティーがこの家族の形を受け入れ、温かく接してくれていたことで、このような家族の形を築くことができていると仰ります。

 それぞれの在り方で家族を作れるようになってほしいという願いをお話いただき、この特別講義は終了しました。

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参加学生の声

  • ・作品は、「他者とともに他者の中で生きる」という言葉が印象に残りました。芸術も他者がいないと成立せず、他者がいるからこそ、多種多様な芸術が意味を成すのだと思いました。 ゴミを集めて作品にするのはおもしろいと思いました。見方を変えれば、それはゴミにもなるし、芸術にもなるのだと思いました。

  • ・ありのまま自分の内から出るパッションが才能をも超え様々なアイデアを創出する鍵になるという言葉に深く共感しました。アートは難しいイメージがありましたが、目を外にだけ向けるのではなく内にも向けることでアートの表現に対して自分が感じた強いイメージが作り出されるのだと思いました。

  • ・passionが重要だと実感しました。ゴミに付加価値をつけて高価なものではなく豊かなものとしてとらえてもらうためには、作品に思いを込めることが何より重要だということを学びました。何にでもそうだと思いますが、この情熱こそが社会やものの在り方を決めるのに一番重要なことなのかなと感じました。

  • ・私の中にあった家族の概念とは全く異なるものであり、最初は正直混乱や困惑がありましたが、Churbaさんが笑顔でご家族の話しているのを聞いて、形にこだわるのは違うなと再認識しました。

  • ・自分達の権利のため「闘う」というのは「宣誓する」ことだと言っていたのを聞いて、ただ自分達の意見を貫こうとするのでなくて、周りを尊重しながらも自分たちの立場をはっきりさせて守っていこう、信じていこうということだと感じた。

  • ・ご自身もゲイということを長年、悩まれていて、親や周りに言えなかったと言っていましが、それだけ、現在は縛られた価値観の中で人間は生きているのだと感じました。全ての人が生きやすい世界が来るために、より多くの人にジェンダー問題について関心を持ってもらい、受け止めてもらいたいです。

関連リンク

Martin Churba氏の作品に関する動画は以下よりご覧ください。