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教育・研究
2025.12.04

【開催報告】柏レイソル山崎代表取締役社長による特別講義

 2025年12月2日(火)、麗澤流エンジニアB(担当:大澤義明教授・須永大介准教授)の授業において、株式会社日立柏レイソル代表取締役社長の山崎和伸氏をお迎えし、「スポーツテック(スポーツ×テクノロジー)の事例を学ぶ」をテーマに特別講義を実施しました。

 山崎氏は日立製作所で長く人事・総務・不動産領域の要職を務め、2023年より現職。工学分野出身ではない立場から見えてきた「技術の可能性」と「ビジネス視点の重要性」について、これまでのキャリアをたどりながら語ってくださいました。

 冒頭では、日立製作所でテクノロジーに触れた経験を紹介し、技術は単体ではなく、様々な要素を組み合わせることで新たな価値が生まれる、といった考え方を示しました。長年にわたるITの進化と社会の変化を振り返りつつ、技術が格差を広げる側面がある一方で、社会課題を解決する強力なツールにもなると強調しました。

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株式会社柏レイソル 山崎和伸代表取締役

 講義では、スポーツテック分野が急速に広がる現状を、国内外の事例も交えながら紹介しました。AR/VR、GPSによる動作解析、AIスカウティング、センシングデバイスを用いたケガ予防、さらにはブロックチェーン技術を活用した新しいスポーツ体験など、多様な技術がスポーツビジネスや観戦体験にどのように用いられているかが示されました。特に選手の走行距離や強度をリアルタイムで把握し、ケガの予兆を捉えるデータ活用は、プロクラブの現場が抱える課題とも深く関わるテーマとして学生の関心を集めていました。

 また、スタジアム外での観戦体験の進化にも触れ、VR観戦や位置データを活用した戦術可視化など、技術がスポーツ観戦を「場所の制約から解放する」可能性を示しました。一方で、「スタジアムでのライブ観戦の価値をどう維持するか」といった経営的な課題にも言及し、最新技術の利点とクラブ経営の現実の両面について語られました。

 講義の後半では、柏レイソルのクラブ経営や、Jリーグ全体で進むデジタル化の取り組みについて紹介がありました。Jリーグが共通データプラットフォームを整備することで、クラブ規模に関わらずデジタル活用を後押ししている現状を解説し、「地域クラブとしての価値をより高め、ファン層を広げていくことが今後の重要なテーマ」であると述べました。SNSフォロワーや観戦データの分析を通じた情報発信・ファン理解の深まりなど、テクノロジーがクラブ運営の基盤として重要度を増している点も印象的でした。

 質疑応答では、「VR観戦が広がったときの収益モデル」「メーカー勤務時代とプロサッカークラブ経営、それぞれのやりがい」「ブロックチェーンを活用した新しいスポーツ体験」など、多様な質問が寄せられました。山崎氏は学生に寄り添った言葉で一つひとつ丁寧に回答し、キャリアに関する質問には「入社はゴールではなく"キャリアのキックオフ"」といったメッセージを伝えました。また、新しい技術領域については「こうした発想は若い世代からこそ生まれる。ぜひ皆さんのアイデアも聞いてみたい」と述べ、学生の創造性に期待を寄せました。

 最後に須永准教授から、講義全体をふまえた総括が述べられました。ITの力を伸ばすことに加え、社会の中で技術を実装していくためには「投資とリターンを見極める感覚」や「複数の要素技術を組み合わせて全体像を描く構想力」が欠かせないとし、こうした総合的な視点を学生生活の中で培ってほしいと呼びかけ、特別講義は締めくくられました。

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                  特別講義の様子
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                山崎氏へ質問する学生