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教育・研究
2025.12.04

【開催報告】海上自衛隊 幹部学校 後瀉桂太郎 1等海佐による特別講義

 2025年12月3日(水)、国際学部の授業「基礎ゼミC-b」(担当:阿部亮子 准教授)において、海上自衛隊幹部学校 防衛戦略教育研究部 主任研究開発官の後瀉 桂太郎 1等海佐による特別講義「米中の海洋軍事戦略」が実施され、国際学部日本学・コミュニケーション(JIC)専攻と、国際社会・国際情報(ISI)専攻の1年生が受講しました。

 講義の前半では、中国のシーパワー発展の歴史的経緯と、現在の海洋軍事戦略について解説がありました。中国の海洋戦略が「近代化以前」「対米領域拒否」「領域拒否+制海」という三段階で進化してきたこと、加えて、インド洋と太平洋を結ぶマラッカ海峡が中国にとって戦略的な弱点となっている「マラッカ・ディレンマ」の重要性が示されました。

 また、「台湾有事」をめぐる多層的なシナリオについても紹介されました。台湾周辺で想定されるミサイル・空爆による攻撃、海上封鎖、サイバー攻撃、さらには大規模な上陸作戦など、多様な展開の可能性があることが説明されました。中国にも甚大な人的損耗が見込まれるため、大規模地上侵攻シナリオが成功する公算は非常に低い。ただし、仮に全面侵攻になった場合には、西太平洋全体に広がる戦いになり、日本のエネルギーの備蓄等に深刻な影響が及ぶだろうという見解が示されました。米中が軍事的に拮抗するとされる「2027年問題」についても、軍事力の推移と地域安全保障への影響という観点から整理され、学生は熱心に耳を傾けていました。

 講義の終盤では、米国の対中戦略や、今後の地域情勢の見通しについても解説がありました。遠距離海上封鎖、海洋拒否、エアシー・バトルといった米国の戦略オプションや、A2/AD(接近阻止・領域拒否)戦略への対応策としての「インサイド-アウト戦略」などが紹介され、現代の安全保障環境が非常に複雑であることが改めて理解できる内容でした。

 後瀉氏の専門的な視点から語られる海洋戦略の実像は、学生にとって、国際情勢を多角的に捉える貴重な機会となりました。「基礎ゼミC-b」では、今回の特別講義やこれまでの学びを踏まえて、今後履修生が自らの考えをまとめ、日本の防衛費増加の是非につい討論を進めていく予定です。

 授業終了後には、ISI専攻の学生に、日本と米国の造船業界の現状と展望、分業体制について、国際政治を大学院で学んだ経験、進路の決め方について、自分が関心のある業界で働くのがいいだろうとアドバイスを頂きました。

 麗澤大学では、国際学部 国際社会・国際情報(ISI)専攻で、安全保障に関する学びを提供しています。自衛官、警察官、海上保安官など、国や地域の安全を支え、社会に貢献できる人物の育成を目指しています。

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