お知らせ

イベント
2016.03.08|最終更新日:2020.08.05|

【開催報告】「戦後70年 -何が問題なのか-」拓殖大学総長・渡辺 利夫氏が講演

IMG_0119

麗澤オープンカレッジ特別講演会(後援:千葉県教育委員会、柏・流山・松戸・我孫子・野田各市教育委員会および柏商工会議所)の平成27年後期第3回目が12月5日に開催され、拓殖大学総長の渡辺利夫氏を迎え、「戦後70年 -何が問題なのか-」と題して講演いただきました。年末も差し迫る師走でしたが、202名の方々が朝早くから来場し、熱心に聴講されました。

渡辺先生は以前、本学の非常勤講師としてご活躍いただいていたこともあり、中山学長やROCKカレッジ長の成相教授とは旧知の仲。そのため和やかなムードのなか、「本日は『日本人・日本』について考える機会としたい」と成相カレッジ長の挨拶で会が始まりました。

今年は戦後70年という節目の年で、ジャーナリズム・マスコミ企画が多く出されたが、「その多くが日中韓間での『戦後70年の歴史問題』が放置されているという内容が多かった」と渡辺先生は疑問視されました。安倍首相の談話も発表されましたが冒頭で『内なるオピニオンリーダー』とする岡崎久彦氏(元外交官)の遺稿に触れ、そこに記された日本の歴史問題に関する3つの問題提起を紹介されました。

■岡崎久彦氏 3つの問題提起

3つの問題とは、1.「戦後の歴史問題は、経年にも関わらず急速に鮮明さが表れてきている異質性」 2.「軍事占領下であった7年間は、日本社会における指導的立場の人が人格形成する多感な青年期が重なる影響」 3.「過去の問題を歴史問題として復活させたのは日本人自身」の3点でした。いずれも思わず固唾を飲んでしまいそうな表現ですが、ひとつひとつ丁寧に展開されました。

渡辺先生のご出身地は山梨県甲府。戦時下では米軍の攻撃にも合い、体には火傷の痕も残っているそうです。人間というものは、記憶は時と共に薄くなっていく傾向が一般的です。しかし戦後70年を経た歴史問題が、今なお鮮明に取り上げられているのは、「政治的意図」が根底にあるのではないか、と訴えられました。氏は「歴史問題として『従軍慰安婦・靖国参拝・歴史認識問題』の3点を中国・韓国が日本に強く迫るようになったのは1980年代で、当時は日本国内では問題にされていなかった。その後、日本人自身が問題をつくり、中国・韓国に輸出し、問題化され、アメリカを巻き込む大きな問題にまで成長した」と解説されました。

IMG_0090

ではなぜそのような流れになったのか。「戦後軍事占領下にあった7年間」に繋がります。この間日本に対して戦争の敗戦や後悔の念を徹底的に植えつけ、西側陣営に転換させるための様々な政策が図られました。その頃影響を受けた幼かった子どもたちが発言力を持つ青年時代が80年代に当たります。当時社会はマルクス経済学が主流。左翼的な考え方を刷り込まれた学生たちが官僚になり、日本を形作る政策を立案していくようになった、と渡辺先生は続けました。そして教科書問題が勃発。歴史教科書の表現を国が書き換えさせたという誤報や、宮沢談話として日本は「歴史についてアジア諸国へ配慮をすること」と示されるなどしました。「中学生という人格形成時期に日本の歴史をネガティブに教える内容につながり、自己や自国を否定的に捉えてしまう肯定的な自我が芽生えられる環境ではなかった」と3つの問題提起の根幹をなす確信を触れられました。

氏は「靖国問題や慰安婦問題は、中国・韓国の指導者ならば使いやすい『カード』で、自国の愛国心を育て他国を敵視するという方針は、世界の中では当たり前のことである。むしろ問わなければいけないことは日本人自身の反日思想である」と会場に投げかけました。

慰安婦問題に関して「公権力を使って強制的に慰安婦を連行した事実はない。にも関わらず偽証記事が世界を駆け巡ってしまったことが非常に残念でならない」と訴えられました。「慰安婦問題については昨年報道されたとおり、朝日新聞社による記事の偽証が明らかにされており、問題は解決されたかに見えた。しかしその後の第三者委員会でも、日本の国際的威信を貶めた罪にまで言及しないなど検証に問題があるのではないか」と問いかけられました。

■記者クラブでの反論

このような世界的ジャーナリズムの動きに待ったをかけるべく、渡辺先生他研究者有志が集い、外国人記者クラブにて以下の通り会見を開きました。

1)米研究者の声明文は、一国の歴史をこれほど非難するに値するデータがあるはずである。真実は事実にのみ宿る。私たちの主張は様々なデータを検証され立証されている。

IMG_0100

2)今回の声明文に関する一連の動きは、国家による歴史解釈の傲慢さを感じた。

会見後、アメリカの主力メディア3紙は全く取り扱われませんでした。しかし氏は「これは歴史戦だと捉えられている」と強調されました。「日本人は自己肯定し事実に基づいた"真実の歴史"を、日本人自身が発信していくべきではないか。そうしていかなければ、将来日本を担う子供たちの日本人としての自己肯定感が揺らいできてしまうのではないか」と投げかけられ締めくくりました。

講演を通じて、日本のこれからを担う若い世代に自己肯定感を育ませたいお気持ちと、研究者としてのあり方を示していただきました。特別講演会の受講生は、渡辺先生と同年代が多いことから、終戦直後からリアルタイムに体感してきた方がどのように感じられたのか、気持ちがこもった盛大な拍手と共に、会は幕を閉じました。