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2016.03.19

【開催報告】「女性が輝く社会とは」 昭和女子大学・坂東眞理子氏が講演

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麗澤オープンカレッジ特別講演会(後援:千葉県教育委員会、柏・流山・松戸・我孫子・野田各市教育委員会および柏商工会議所)の平成27年後期第4回目が1月30日に開催され、昭和女子大学学長の坂東眞理子氏がテーマ「女性が輝く社会とは」と題して講演されました。当日は霙が混じるとても寒い気候でしたが、186名の方々が朝早くから来場し、熱心に聴講されました。

はじめに、平安時代の北政所(公卿の正室)と豊臣秀吉の側室・淀殿を挙げ、2人の女性像の比較から歴史によって求められる女性像が変化してきたことに触れられました。現政権の第二次安倍内閣では「女性の活躍」を謳い、国内外で注目を浴びていることから、日本女性の労働環境の歴史や現状を、国際比較をしながら整理し考える機会となりました。

男女の社会的な機会均等状況の指数を国際比較すると、日本は先進諸国では低評価である。これは日本において女性は健康で十分な教育は受けているが、その能力を発揮する場を与えられていないということが言えるのではないかと問題提起をされました。それを裏付けるように、スライド資料の表において、日本の女性の管理職比率は11.3%と非常に低く、同じアジアの韓国と比較すると数値的には並びます。しかし韓国は企業等のトップに女性が多いそうです。また、アメリカでは管理職における女性割合が43%でも差があると言われており、フィリピンは就業者の女性比率より管理職の女性割合の方が高い唯一の国であること等を示されました。国によって文化的思考が異なるためではありますが、「正義は社会によって異なる」と印象的な言葉で表現され、日本の現状を冷静にとらえる機会となりました。その後、その根底に流れている社会的思想を明治以前から現代に至るまで、具体的に示されました。

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その中でも印象的だったのは、欧米各国の社会通念の違いです。アメリカでは転職市場が確立されているため、業績主義の面もあり、ライフステージに沿った働き方を選ぶことが一般的である点、行政による保育サービスが日本のようにないため夫婦協働での保育が必須な点で、女性躍進が進んだのではないかとみられています。視点を欧州に移すと、フランスでは政党助成金を受けるための要件に女性候補者率がある点や、ノルウェーでは上場企業の取締役の女性比率が法律で義務化されている等の点です。

日本では法律や制度は整備されつつも、これまでの社会通念がまだ色濃く残っているため、女性や非正規社員への差別や会社に依存したキャリア設計、異質性を排除しやすい傾向にあること等、日本企業特有の影響が背景にあると解説いただきました。そのためこれからは職場改革が必要で、インセンティブから強制力を持った制度設計や採用年齢の制限禁止、同一労働、同一価値労働の徹底により年功賃金の改革などの現実を変える政策対応が急務であると、受講生に力強く語りかけました。

講演会の終盤の質疑応答では、受講生から「同一価値労働・同一賃金への道筋は?」「最近の若者は消極的な印象だがその背景は?」「賃金が出ない家事についてどう思うか?」などが挙がり、関心の高さを伺えました。坂東先生は家事について、「家事と言っても社会が支える必要がある『福祉的』なものと『日常的』なものに分けられる。これからは家庭マネジメント力が大事。夫婦が家庭にあるタスクをシェアし、協働することで、自らの老後や子・孫世代の未来が変わってくる」と希望を示され、講演会は今年度を締めくくるに相応しく、盛大な拍手と共に終了いたしました。

講演の最後に、成相 修オープンカレッジ長より会場の皆さまに挨拶されました。麗澤オープンカレッジが2006年に開校してから10年、当初からカレッジ長を務められた成相教授ですが、今期で交代となります。成相教授からは「まさに女性の活躍の象徴となる」と、来年度から新カレッジ長となる岩澤知子教授を紹介されました。

次回2016年度の特別講演会は総合テーマを「日本!!」とし、現役政治家の方から本学教授まで多様な顔ぶれとなります。特別講演会は日本の時事ニュースの読み解き方が短時間で効率よく理解できる機会です。WEBニュースがあふれている現代だからこそ、自分の好みや得意分野は知っているけれど・・・という方が大半ではないでしょうか。記録を取っている私もそうですが、講演の翌日からは時事ニュースが「知っている」から「分かる」面白さを体験する機会が増えると思います。手前味噌で恐縮ですが、これまで参加をしたことがない学生から働き盛りの世代の方にこそお勧めです。多くの方からのご応募お待ちしています!!